第2話「行動援護(アクト・アシスト)と呪われた天才」
「支援事業所、だと……?」
悠斗の宣言に、大剣士ガルドは驚きを隠せない。 この薄暗い隔離施設で、希望を持とうとする者がいなかったからだ。
「ああ。ここを拠点にして、この街の『不適合者』全員を支援する。あんたが最初のメンバーだ、ガルド」
「た、だが俺はまだ足が……」
「安心してくれ。週に一度、【身体介護】で筋力訓練と可動域維持をする。
そして、あんたには『生活支援員』として、施設の維持管理をお願いしたい」
悠斗は畳み掛けるように、ガルドの不安と役割を同時に解消していく。
「支援されるだけじゃなく、支援する側にも回る。それが俺の言う『自立訓練』だ。あんたの経験と統率力は必要不可欠だ」
「……ふっ、いいだろう。この足でも役に立てるなら、喜んで力を貸そう」
ガルドが剣士としての顔つきに戻ったのを確認し、悠斗は施設の奥まった一室へと向かった。
そこには、部屋の隅で膝を抱え、薄いローブを被った少女が震えていた。
彼女こそ、次なる支援対象であり、この街で最も恐れられている呪術師リーファだ。
【対象:呪術師リーファ(若年天才)】
【状態:感情失調症(自己デバフ)】
【原因:魔力暴走による自傷呪い】
【脅威度:A(不測の魔力暴走)】
リーファは魔力が暴走すると、周囲の全てを傷つける「自傷呪い」を発動させてしまうため、誰も近づけず、彼女自身も心を閉ざしている。
「……来ないで」
悠斗が近づくと、リーファはうめくように声を絞り出した。
彼女の周りの空気が、微かに紫色の瘴気を帯び始める。
「大丈夫だよ、リーファ。俺は君を傷つけない。君の『行動』を支援しに来たんだ」
悠斗は優しく、だが一歩も引かずに近づいた。
「君の魔力は素晴らしい。でも、それが暴走するのは、君が『感情』をコントロールする方法を知らないからだ」
悠斗は、施設で学んだ「行動援護」の理論を異世界で実践する。
【スキル:行動援護発動】
【機能:情緒の安定化アプローチ開始】
【機能:ポジティブな行動への動機付け】
悠斗は、敢えて彼女の手の届く範囲の床に座り込んだ。
そして、自分が持っていた【生活援助】スキルの副産物として生成された、清潔な布で彼女の顔を優しく拭う。
「君が怖いのは、自分の力を制御できず、誰かを傷つけることだろう? なら、その魔力を『誰かを助ける力』に変えればいい」
「でも……私、触れると呪っちゃう……」
リーファの感情が激しく揺れ、部屋の隅の石壁がバチッという音と共に砕けた。
「怖いな。よし、じゃあこの訓練をしよう。名付けて『アンガーコントロール訓練(代替行動支援)』だ」
悠斗は懐から、適当な木の枝を取り出した。
「もし魔力が溢れそうになったら、これを折ることに集中してくれ。力は、誰かを傷つけるためじゃなく、この枝に注ぎ込むんだ」
悠斗は、リーファの心に寄り添い、感情の起伏を「別の行動」へと誘導する。
これは、異世界における「自傷行為への代替行動」の提示だった。
リーファは半信半疑で、その枝を受け取った。魔力の暴走が収まり、瘴気が霧散していく。
【情緒の安定化:成功】
【リーファの状態:感情失調症(自己デバフ)→(一時的に安定)】
リーファは悠斗を見上げた。
その瞳には、恐怖ではなく、初めて「理解者」に出会えた安堵が浮かんでいた。
「……あ、なた……なんで、私を怖がらないの?」
「俺は、利用者の潜在能力を引き出すのが仕事だからな。君の凄いところしか見てないよ」
悠斗は立ち上がり、彼女に向かって手を差し出した。
「さあ、リーファ。君には『天才呪術師』として、俺たちの支援事業所の『警備兼魔術顧問』になってもらう。君の力は、人々を守るために使うんだ」
リーファは、迷いながらもその手を取った。彼女の全身から発せられる魔力が、今度は制御され、温かい光となって輝き始めた。
こうして、元・大剣士のガルド(身体介護)と、元・呪術師のリーファ(行動援護)という、異世界最強の支援パーティの核がここに誕生したのだった。
どもー、作者です。2話も読んでくれてサンクス!
今回、ヒロインのリーファちゃんが登場しましたね。魔力暴走する天才呪術師っていう、これまた王道な設定です。
でも、悠斗くんの対応、どうでした? 感情が暴走しそうな子に「別のことに集中する」って木の枝を渡すあたり、ガチの行動援護すぎて笑いました。
異世界なのにやってることがめちゃくちゃリアルな支援技術っていうね。
これがチートスキルなわけです。
これで大剣士ガルド(身体)と呪術師リーファ(行動)が揃いました。
まさに最強の支援事業所、立ち上げ準備完了です。あと、リーファちゃんが「呪っちゃう」ってビクビクしてるの、可愛すぎません? ああいう子が全力で守ってくれるようになる展開、好きなんですよ。
さて、次は資金調達(=制度設計)に挑みます。異世界で戦うより、ギルドマスターを言いくるめて金を引っ張ってくる方が、元介護職の悠斗には向いてるっていうね。
また次話でお会いしましょう!多分。




