閑話 「福祉の壁はギャグで壊せ!――リーファの爆発とドレッドの趣味」
悠斗による「共同受注ネットワーク」の成功は、ゼニゲバ商会を追い詰めていた。しかし、ユーモアを忘れかけた事業所内の空気は、少しばかり重くなっていた。
「みんな、最近顔が硬いぞ。福祉事業は、まず『支援者が笑うこと』が基本だ。笑顔は最強の環境改善ツールだぞ」悠斗は、会計をしながら言った。
その時、工房の方から、「ドォォン!」という爆発音と共に、小さなキノコ雲が上がった。
「あーあ、またやっちまいましたか、リーファ」
工房の裏。リーファが顔を煤だらけにして立ち尽くしていた。彼女の周りには、焦げた魔法の素材が散乱している。
「ごめんなさい! 悠斗が『新商品の開発』を命じたから、ちょっと高性能な結合魔法を試したら、魔力制御が暴走して……」
リーファは、制御の訓練を積んだはずなのに、新しい課題(開発)に取り組むと、つい感情が高ぶって魔力が暴走しそうになるのだ。
悠斗は、リーファの頭にこびりついた煤を払いながら言った。
「リーファ、君の才能は『繊細さ』にある。高性能な結合魔法は、ガルドに任せておけばいい」
「ですが、ガルドの【身体介護】は魔法の才能ではないでしょう?」リーファが不満げに言う。
「いや、ガルドの『正確な体幹』と『完璧な力の伝達』は、魔法の『精密な触媒』として使える。ガルド、やってみろ」
ガルドは、リーファが焦がした素材を手に取り、腰を据えた。彼は【身体介護】スキルを発動させ、まるで熟練の職人のように、体幹と指先の微細なブレを完全に抑え込んだ。
「ふん! 支援は、物理の極致だ!」
ガルドが魔力を込めると、彼の体が微動だにしない『最高の安定台』となり、リーファが失敗した結合魔法は、見事に成功した。
「すごい! ガルド、あなたの体幹が、私より繊細な制御を実現している!」リーファは感嘆した。
「だろ? 人間、腹筋と体幹が安定すれば、人生だいたい安定するんだよ」ガルドが胸を張った。
その夜。悠悠自適のリビングで、ドレッドが大きな布を広げていた。
「悠斗様、今日は『就労継続支援B型』で得た工賃で、新しい趣味を見つけました!」ドレッドが嬉しそうに言った。
「ほう、魔王候補の趣味とは何だ?」悠斗が興味を持つ。
ドレッドが広げたのは、巨大な布に、極彩色で『可愛らしいウサギの刺繍』が施されたものだった。
「これ、私が作りました! 『破壊衝動の代わりに、色彩と針先に集中する』訓練です! 掃除だけではもったいないと、リーファが【行動援護】で教えてくれました!」
「……ドレッドさん、あなたの破壊的な魔力で刺繍を?」悠斗は目を見開いた。
「はい! 細すぎる刺繍糸が、私の魔力で『切れずに、最強の強度』を持つんです! このウサギの刺繍は、普通の剣では切れません!」ドレッドは誇らしげだ。
リーファが補足した。
「彼が魔力を刺繍に注入することで、それは『世界最強の防弾チョッキ(ウサギの絵付き)』になるんです。悠斗、これも立派な『高付加価値製品』ですよ!」
悠斗は、そのあまりにアンバランスな作品に、思わず腹を抱えて笑い出した。
「ハハハ! ドレッドさん! それはいい! 『魔王が作る、世界最強の癒やしグッズ』だ! 次の販路開拓の目玉は、それに決まりだ!」
事業所内に、久々に明るい笑い声が響き渡った。
「そうだ、これだよ。困難な課題に直面したら、まず笑い飛ばす。それが、俺たちの支援事業所のやり方だ」
悠斗は、ドレッドが作った刺繍のウサギを見つめ、新たな販路開拓のアイデアを閃かせた。
どもー、作者です!お待たせしました、ユーモア回!
やっぱり、真面目な話ばかりじゃ疲れますよね!今回は、「身体介護の体幹は魔法制御の触媒になる」というガルドの謎理論と、「破壊魔力の結晶であるウサギの刺繍」というドレッドの趣味という、ギャグ要素を盛り込んでみました!
魔王候補が最強の防弾ウサギを作るという、この世界の理不尽さが、この物語の魅力だと思ってます(笑)。
そして、悠斗くんが笑いを取り戻したところで、次回は、この『最強の防弾ウサギ』を武器に、ゼニゲバ商会の流通網をさらに破壊する『新たな販路開拓(ターゲットは王国の軍隊)』に挑みます!
感想と☆評価、ぜひお願いします!また次話で!




