第16話 「共同受注(ジョイント・オーダー)と流通網の掌握」
市民の支持を得たことで、ゼニゲバ商会による行政指導は一時的に退けられた。しかし、悠斗の課題はまだ残っていた。
「ゼニゲバは、製品の製造自体を止められなくても、流通を止められる」
悠斗は、王都の商業地図を見ながら言った。王都の物流の約8割は、ゼニゲバ商会の流通網に依存していた。工房で最高品質の製品を作っても、市場の隅々まで届けられなければ、工賃は維持できない。
「我々は、ゼニゲバの『流通の支配』に対抗しなければならない」
悠斗は新たな計画を始動させた。
『次期目標:共同受注と地域流通の確立』
翌日、悠斗は王都中の、ゼニゲバ商会による圧力で苦しんでいる零細工房や中小商会の代表者たちを集めた。
「皆さま、我々『光の工房』の製品が高値で取引されているのは、ドレッドさんの特殊加工があるからです。しかし、私たちだけでは、ゼニゲバ商会の巨大な流通網には勝てません」
悠斗は、彼らに「共同受注」を提案した。
「我々の工房で、高品質な『半加工品(ドレッドの魔力注入済み素材)』を製造します。そして、それを皆さまの工房に卸す。皆さまは、最終加工と販売を行うだけで、通常よりも遥かに高い利益を得ることができます」
零細工房の代表者たちはざわついた。彼らは、仕入れ価格が高騰し、ゼニゲバから不当に買い叩かれて苦しんでいた。
「しかし、我々がそんなに大きな利益を得たら、ゼニゲバが黙っていません」ある鍛冶屋の親方が不安げに言った。
「そのための『共同受注』です」悠斗は、黒板に【共同受注支援】スキルで作り上げた、緻密な契約スキームを書き出した。
「皆さまが、一丸となって『光の工房』の製品を仕入れ、『統一ブランド』として販売すれば、ゼニゲバの一商会が個別に圧力をかけることは難しくなります。我々は、ゼニゲバの流通網に頼らない、『地域密着型流通ネットワーク』を構築するのです」
さらに、悠斗はガルドに指示を出した。
「ガルド、あなたの元冒険者としての顔で、『僻地や辺境の村への直接輸送』ルートを開拓してほしい。ゼニゲバの支配が及ばない、新たな販路を確保する」
ガルドは力強く頷いた。
「承知した。俺の冒険者時代の仲間たちが、そのネットワークを構築できる」
そして、ジンは重要な役割を担った。
「ジン、あなたの【同行援護】で、共同受注に参加した全ての工房の『在庫状況とニーズ』を正確に把握し、最適な配送計画を立ててくれ。物流の『非効率な隙』をなくす」
ジンは目を閉じ、空間座標を読み取るように言った。
「任せろ。全ての物流の音を、俺が監視する」
悠斗の「共同受注ネットワーク」は、瞬く間に王都の零細工房を巻き込み、巨大な経済的な渦となった。
高品質な半加工品を安定的に供給された工房は利益を増やし、市民も安価で高品質な魔法具を手に入れられるようになった。
ゼニゲバ商会は、自分たちの流通網の外で、巨大な経済圏が成長していることに気づき、激怒した。
「馬鹿な! あの福祉屋めが、零細工房を束ね、流通を裏側から乗っ取っただと!?」
ゼニゲバは、悠斗が単なる福祉事業の代表ではなく、自らの利益を脅かす『市場の破壊者』であることを初めて悟った。
悠斗は、オフィスから窓の外を見下ろした。共同受注で賑わう零細工房の活気が、街全体に満ちている。
「ゼニゲバ。あなたの『独占』は、人々の生活の質を低下させる。俺たちの『共同受注』は、利用者の工賃だけでなく、この街全体の経済の『自立支援』なんだ」
悠斗の、福祉を通じた異世界経済革命は、次なる段階へと進んだのだった。
どもー、作者です!今回は、『共同受注と流通網の再構築』という、ちょっと経済学的な回でした!
就労継続支援が市場で成功するためには、高品質な製品だけでなく、「販路」と「経済的な仲間」が不可欠です。悠斗くんは、零細工房を束ねるという手段で、ゼニゲバの独占流通に真っ向から挑みました。
ガルド: 冒険者ネットワークで新規販路開拓
ジン: 聴覚マッピングで物流を最適化
という、チームメンバーの特性が、ビジネス戦略に活かされるのが最高に気持ちいいですね!福祉事業が、街の零細企業を救うという展開も、悠斗の「制度の再構築」の思想に合致しています。
次回は、ゼニゲバ商会が、『政治的な圧力』や『直接的な妨害』といった、より露骨な手段で反撃してくるでしょう。悠斗たちがどのように、その妨害を『支援』の力で乗り越えるのか、お楽しみに!
感想やご意見、お待ちしてます!また次話で!




