第14話 「魔力工賃(マジック・ペイ)と市場の破壊者」
就労継続支援B型『光の工房』に、緊張感が満ちていた。悠斗が掲げた「工賃革命計画」の成否は、この工房のメンバーの未来を左右する。
ジンは工房の隅に座り、目を閉じたまま、作業台を囲むメンバーたちの動きを聴覚で追っていた。
「ストップ。元従者さん。あなたの魔物骨を研磨する際の腕の振り、角度が3度外れている。力の伝達効率が12%低下している」
ジンは【同行援護】を駆使して、メンバー一人ひとりの非効率な動きを瞬時に見抜き、的確な指導を行う。
ガルドは、各メンバーの背後に立ち、【身体介護】の知識で正しい姿勢を矯正する。
「その体勢では腰に負担がかかる。もう少し骨盤を立てろ。そうだ、その方が力がブレずに研磨できる」
作業効率は飛躍的に向上したが、肝心なのはドレッドの工程だ。
ドレッドは、工房の奥で、恐るべき集中力で魔力注入を行っていた。彼はもはや【自立訓練】の一環として、巨大な魔力を「破壊」ではなく「微細な制御」に使うことを学んでいた。
「魔力を、糸のように細く、骨の繊維に沿って流し込む……。リーファ、私、ちゃんとできていますか?」ドレッドが不安げに問うた。
リーファはドレッドの隣で穏やかに座り、【行動援護】で彼の感情の波を安定させていた。
「完璧です、ドレッド。あなたの魔力は、愛情深く、優しく素材を包み込んでいる。破壊の衝動は一切ありません。そのまま、集中を続けて」
ドレッドの魔力によって「特殊加工」された魔物骨は、外見上は変わらないが、内部に緻密な「魔法の通り道(魔力回路の初期プロトタイプ)」が形成されていた。
完成した製品を持って、悠斗はギルドに登録されている最高の魔法具師、エルダーの元を訪れた。
「これは、光の工房で加工された魔物骨です。ぜひ、鑑定をお願いしたい」
エルダーは、半信半疑で骨を受け取った。一見、ただの研磨された骨だ。彼は魔法を込めて鑑定を開始した。
一瞬にして、エルダーの顔色が変わった。
「な、なんだこれは……! この骨の内部は、まるで生まれた時から、微細な魔法回路が組み込まれているかのようだ……!?」
彼は驚愕に目を見開いた。
「通常、魔法具を作る際、この回路を彫り込む作業に全工程の8割の時間を費やす。しかし、この骨を使えば、その工程が一瞬で終わる……」
「これが、我々が提供する『支援製品』の付加価値です」悠斗は淡々と言った。
「私たちの工房のメンバーは、単なる『単純作業員』ではない。彼らは、ドレッドの魔力注入と、ジンとガルドの効率的な指導により生まれた、世界で唯一の『魔法回路基礎形成の専門職集団』です」
エルダーは興奮に震えた。この素材があれば、魔法具の生産量が飛躍的に伸び、莫大な利益を生む。
「買い取らせてもらおう! この素材の価格は、通常の五十倍だ! すぐに契約を結びたい!」
その日の夕方。『光の工房』には歓喜の声が響き渡った。
「すごい! これが私の今週の工賃ですか!?」
元従者だった利用者が、両手に抱えきれないほどの銀貨を数えて、涙を流した。
工賃は、パン一個どころか、一般市民の平均的な日給に匹敵する額に跳ね上がっていた。
「悠斗様……私たちは、本当に、人の役に立つ仕事ができたのですね……!」
悠斗は満足そうに微笑んだ。
「そうだ。君たちの障害や特性は、誰かに頼る理由ではない。それは、世界に一つしかない『付加価値』を生み出すための、最高の『個性』だ」
【就労継続支援B型】の工賃の低さという壁は、悠斗の【神級】支援スキルと、ドレッドの『魔力チート』を組み合わせることで、見事に打ち破られた。
しかし、その成功は、すぐに王都の市場を独占していた巨大商会の目にも留まることになる。
「馬鹿な。あんな低級の作業所が、なぜ市場の価格を破壊するような製品を作れるのだ……!?」
巨大商会の総帥が、怒りに顔を歪ませた。彼の名は、ゼニゲバ・マネーロン。金儲けのためなら、支援制度すら利用する、新たな敵だった。
どもー、作者です!工賃革命、大成功でしたね!
「就労継続支援B型」の工賃問題を、魔力チートで解決するという展開、痺れました!結局、悠斗くんの支援は、「訓練」を「高付加価値化」することで、市場のルールそのものを変えてしまう。まさに制度の上書きです!
ドレッドが魔王候補の力で掃除と魔力注入という、地味だけど世界を変える仕事をするのが、最高にエモいですよね。
しかし、この成功は新たな敵を生みました。市場の利益を独占するゼニゲバ商会の登場です!
次回は、この商会が『光の工房』の事業を妨害するために、異世界の「悪しき行政指導」や「圧力」を使ってくる展開になるかと思います。悠斗くんが、今度は『行政の闇』に立ち向かう番です!
感想と評価、ぜひお願いします!また次話で!




