第13話(第二部)「継続支援B型(ワーク・サポートB)と『低すぎる賃金』の壁」
『永久の安寧』を『地域生活支援センター・光明』として再建した後、悠斗たちの事業所は王国で絶大な影響力を持つに至った。しかし、悠斗の心には新たな課題が燻っていた。
光明センターに移行した利用者の中には、一般就労(A型や通常雇用)が難しく、支援を受けながら地道な作業を続けるしかない人々が多数存在した。
「彼らが、生きがいと社会参加の喜びを得るための場所が必要だ」
悠斗は、新たに『就労継続支援B型・光の工房』を立ち上げることを決めた。
『光の工房』の設立メンバーとなったのは、元々隔離されていた利用者たちだ。彼らは、王都で大量に発生する魔物素材の『簡易加工』や、魔法具の『単純な組み立て』といった作業を担っていた。
しかし、一週間後。悠斗は、工房のメンバーたちの間で活気が失われていることに気づいた。
「どうした、みんな。作業効率が落ちているぞ。光明センターで立ち直った、あの時の熱意はどこへ行った?」
メンバーを代表して、元・聖騎士団の従者だった利用者の一人が、遠慮がちに口を開いた。
「悠斗様……作業は、苦ではありません。むしろ、人から必要とされることが嬉しい。ですが……」
「だが、何だ?」
「一週間の作業で、私が得た『工賃(賃金)』が、これだけです」
彼が差し出したのは、銀貨たった一枚だった。これは、街のパン一個にも満たない金額だ。
【対象:就労継続支援B型】 【問題点:工賃の低さ(市場価値との乖離)】 【原因:単純作業の市場価格の限界、作業効率の低迷】 【利用者の状態:意欲喪失、自己肯定感の低下】
悠斗は愕然とした。
「これは……現実にあった問題そのものだ」
前世の記憶が蘇る。作業所での工賃が、最低賃金に遥かに及ばず、利用者の経済的な自立を阻んでいた、あの悪しき構造だ。
「このままでは、彼らは結局、『ただ時間を使うだけの作業』をしていると感じ、自己肯定感を失う。これは、支援ではない」
悠斗は立ち上がり、黒板に『工賃革命計画』と大きく書き出した。
その夜、悠悠自適の会議室。悠斗は、ガルド、リーファ、ジン、ドレッドに工賃問題を説明した。
「我々は、工賃を市場価値に見合うレベルまで引き上げる。そのためには、『単純作業』を『高付加価値な商品』に変える必要がある」
「高付加価値、ですか?」リーファが問うた。
「ああ。ジン、君の【同行援護】で、工房メンバーの『作業環境と動線』を解析してほしい。工賃が低い最大の原因は、非効率な作業工程にある」
「承知した。俺の目で見れば、無駄な動きや、力の伝達ロスは全て座標として見える」ジンは即座に工房へ向かった。
次に、悠斗はドレッドに声をかけた。
「ドレッド、君の『圧倒的な魔力』を使う。工房メンバーは魔物素材の『簡易加工』をしている。君の魔力で、その素材に『特殊な微細な加工』を施してほしい」
「私の魔力で、加工を……? 破壊ではなく?」ドレッドは戸惑った。
「そうだ。例えば、魔物の骨を研磨する際、君の微細な魔力を注入することで、『魔法の通り道』を事前に作っておく。そうすれば、後の工程の魔法具師は手間が省け、商品の価値が十倍になる」
これは、『支援(魔力注入)』を『商品の付加価値』に直結させる、チート的な発想だった。
そして、ガルドとリーファには、『作業指導員』としての役割を与えた。
「ガルドは、【身体介護】の知識で、作業中の『正しい姿勢と力の使い方』を指導し、作業効率を上げる。リーファは、【行動援護】で、作業に集中できるよう、『情緒の安定化』を随時行う」
悠斗は拳を握った。
「就労継続支援B型は、ただの『暇つぶしの場』ではない。これは、『工賃を稼ぎ、自己を肯定する誇りの場』だ。俺たちの支援で、この低すぎる工賃の壁を、必ずぶち破る!」
悠斗の、現実の福祉問題に真っ向から挑む新たな挑戦が始まった。
どもー、作者です!第二部開幕、いかがでしたか?
今回は、現実の福祉制度のデリケートな問題点である「就労継続支援B型の工賃の低さ」を異世界に持ち込んでみました。悠斗くん、ブラック施設長を倒したと思ったら、今度は『資本主義の壁』に直面です(笑)。
でも、悠斗くんはめげません!
ジン(同行援護): 作業効率化のコンサルティング
ドレッド(魔力チート): 商品への特殊付加価値注入
という、それぞれの「障害特性(チート能力)」を活かして、工賃を無理やり引き上げようとするのが、この物語の醍醐味です。支援は、経済をも動かす!
次回は、ドレッドの魔力注入が功を奏し、工房の製品が一気に王都の市場で高値で取引されるようになる展開を予定しています。
感想、評価、よろしくお願いします!また次話で!




