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第12話 「最終監査(グランド・オーディット)と制度の上書き」

管理者室。冷酷な笑みを浮かべるクラヤミと、それを冷静に見据える悠斗が対峙していた。屈強な警備兵が、悠斗を取り囲んでいる。


「無駄なことをしたね、悠斗くん。君が握っている証拠など、この王国の貴族の権力と私の『福祉帝国』の前に塵芥だ。証拠はここで焼き捨て、君たちを『支援妨害罪』で逮捕させてもらう」


クラヤミは魔法の杖を構えた。警備兵が一斉に悠斗に襲いかかろうとする。


「待て」悠斗は、たった一言で警備兵の動きを止めた。


「クラヤミ施設長。あなたの『安楽介護』が、前世と同じく利用者を絶望させていることは確認した。そして、この施設の支援記録と、実際の利用者の状態が、完全に乖離していることも」


悠斗は記録した魔法具を高く掲げた。


「これは、『制度詐欺』の動かぬ証拠だ。だが、俺が本当に破壊したいのは、あなたの『悪意』ではない。あなたの『制度システム』そのものだ」


その瞬間、悠斗の身体から、かつてないほどの輝きが放たれた。


「【障害福祉サービス:神級ゴッド・ケア】――最終監査グランド・オーディット!」


このスキルは、単なる監査ではない。悠斗の脳内で展開される、『完璧な支援制度の青写真』が、現実の制度に強制的に『上書き編集オーバーライト』される現象だ。


「馬鹿な……! そんな非効率な魔法があるはずが――!」クラヤミが悲鳴を上げる。


ドレッドが動いた。隠れていた扉の陰から、凝縮した魔力を一気に解放する。その魔力は、施設全体の魔法的な警備システムやロック機構を乗っ取り、悠斗のスキル発動を最大限に補助した。


「リーファ、ガルド! 今だ! 隔離室の利用者たちを解放しろ!」悠斗が叫ぶ。


ドレッドの魔力補助により、悠斗の【神級】スキルが施設全体に浸透した。


隔離室の扉を固く閉ざしていた魔法的なロックが、音を立てて外れる。


<システム上書き:『隔離と拘束』を『地域交流と自立訓練』に編集します> <支援計画:『投薬による鎮静』を『個別的行動変容支援』に編集します> <経営方針:『利益の最大化』を『利用者のQOL(生活の質)の最大化』に編集します>


施設のシステムは、悠斗の完璧な『個別支援計画』のロジックに一瞬で書き換えられた。施設の職員たちの思考回路すら、一瞬だけ「利用者様の幸せを最優先する」という正しい介護の倫理観で満たされる。


隔離されていた利用者たちは、静寂の中でゆっくりと目を開けた。彼らの身体を締め付けていた拘束具が緩み、部屋に清浄な空気が流れ込む。


ガルドとリーファは、解放された利用者たちの部屋に飛び込み、優しく声をかけた。


「大丈夫です。もう終わりだ。あなたは自由だ」


リーファの【行動援護】が、利用者たちの長年の絶望の感情を優しく包み込み、ゆっくりと解放へと導いていく。


「な、なんだこれは……! 私の施設が……私のルールが、崩壊していく!?」


クラヤミは、制御を失った杖を握りしめ、パニックに陥った。彼の『効率主義』という名の管理システムは、悠斗の『人間主義』という名の制度編集によって、根幹から破壊されたのだ。


「あなたの施設は、今、『真の支援機関』へと生まれ変わった」


悠斗は、クラヤミの目の前で、記録済みの証拠を王都に直結する公文書に書き換え、自動で王城へ送信する魔法を発動させた。


「王国の制度も、あなたという『悪意のある管理者』を排除するよう、上書きした。あなたはもう、この世界で福祉に携わることはできない」


クラヤミは力なく崩れ落ちた。彼の転生した人生は、前世と同じ相手によって、同じく「制度」の力で終わったのだった。


数日後。


『永久の安寧』は、王国の主導のもと、悠斗が監修する『地域生活支援センター・光明こうみょう』として再出発した。隔離されていた利用者たちは、悠悠自適のメンバーが考案した個別支援計画に基づき、穏やかな自立訓練を開始した。


そして、街には新たな噂が広まっていた。


「悠斗の支援事業所は、障害を持つ者を最強の英雄にする。そして、その支援は、この世界の古い制度すら変える力を持っている」


悠斗は、『悠悠自適』の仲間たちと、新しく支援が必要になった利用者たちに囲まれていた。


「俺たちの戦いは、まだ始まったばかりだ。この世界の全ての『不適合者』が、自分の望む生活を送れるように、制度と環境を、全て編集していくぞ!」


悠斗の、元ブラック施設の介護福祉士による異世界改革は、今、本格的な幕を開けたのだった。


(第一部完)



どもー、作者です!ついにやりました、クライマックス!


悠斗くんの【神級】スキルの真骨頂、『制度の強制上書き(オーバーライト)』はいかがでしたか? ブラック施設長クラヤミの悪意ある『管理システム』を、ドレッドの魔力補助のもと、『完璧な支援制度』で一瞬にして破壊する! これこそが、悠斗くんの最大のチート能力です。


これで、悠斗くんは王国の制度の一部を掌握し、彼の支援事業所『悠悠自適』は、単なる冒険者パーティではなく、異世界の福祉制度そのものを担う巨大な組織へと進化を遂げました。


ガルド、リーファ、ジン、ドレッド、それぞれのスキルが監査と解放に役立つという、チームワークの集大成を見せられたのもよかったです!


さて、これにて「ブラック施設長との因縁決着&グループホーム設立アーク」は完結です。


第二部では、王国の福祉制度改革に乗り出した悠斗たちが、さらに広がる世界の闇(貧困層、奴隷制度、戦争の後遺症など)に、『新たな支援スキル(例えば、地域移行支援や生活保護制度など)』をぶつけていく展開を考えています。


感想、評価、そして読んでいただき、本当にありがとうございました!

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