第11話 「支援監査(ケア・オーディット)と安寧の嘘」
王都での会議から数日後。悠斗はグループホーム『悠悠自適』のリビングで、メンバーに作戦を説明していた。
「クラヤミの施設『永久の安寧』の闇を暴く。正面から挑んでも、王国の制度に守られているあいつには勝てない。だから、我々は『支援監査』を実行する」
悠斗は地図を広げた。
「ジン、君の【同行援護】で得た『聴覚マッピング』能力で、施設の警備ルートと全ての部屋の見取り図を完璧に把握してほしい。潜入ルートは君が作る」
「承知した。音と風の流れは、壁があっても俺の『目』には見える」ジンは静かに答えた。
「リーファ、ガルド、そしてドレッド。君たち三人は、施設内部に潜入し、『利用者の状態』と『施設の記録』の矛盾を突き止める」
リーファは緊張した表情で言った。
「私が、あの隔離された利用者たちの感情を読み取るのですね。恐らく、絶望に満ちているでしょう」
「その通りだ。リーファの【行動援護】は、感情の波長を捉える。彼らの『抑圧された叫び』を記録してくれ」
悠斗はガルドに視線を向けた。
「ガルド、君は元A級冒険者の顔で施設の警備に見つかり、『見学』と称して入る。君の役割は、『身体介護のプロ』として、劣悪な環境によって利用者の身体機能がどれだけ低下しているかを記録することだ」
「承知した。俺の専門だ。不適切なポジショニングや拘束の痕跡は見逃さない」ガルドは力強く頷いた。
そして、ドレッド。
「ドレッド、君には最終の『隠蔽支援』を頼む。君の圧倒的な魔力を『負の魔力』として施設全体に薄く広げ、我々の『魔力反応』を全てかき消してほしい」
ドレッドは感激したように頭を下げた。
「わ、私にそんな大役が……! 誰かを守るために魔力を使えるなんて、光栄です、悠斗!」
その夜。
ジンが用意した、警備の交代時間と連動した完璧な潜入ルートを使い、三人は『永久の安寧』の裏口から侵入した。
施設内は、表向きは豪華絢爛だが、奥に進むほど静寂と無機質な空気が支配していた。そして、隔離された利用者の部屋の扉は、外側から厳重にロックされている。
リーファが、隔離室に近づいた瞬間、全身を悪寒が襲った。
「……っ! ひどい。絶望、恐怖、そして『諦め』の感情が波のように押し寄せてくる……! まるで生きたまま魂を抜かれたようだ」
リーファは目を閉じ、【行動援護】スキルで利用者の感情の記録を始めた。記録されるのは、「食事の際に、誰も自分のことを認識してくれない」ことへの深い悲しみや、「誰も助けに来ない」という絶望だった。
その間、ガルドは隔離室の窓から内部を観察していた。
「これはひどい……。床ずれの跡がある。体位交換が適切に行われていない。そして、彼らが装着している拘束具は、『安楽のため』ではなく、『管理の手間を減らすため』だ」
ガルドは、【身体介護】の視点から、施設が行っている支援が「偽り」であることを確信した。
一方、悠斗は施設の管理者室に侵入し、記録書類を漁っていた。狙いは『個別支援計画書』だ。
「あった……。これがクラヤミの掲げる『安楽介護計画』」
悠斗が計画書を読み込むと、彼の【個別支援計画:神級】スキルが、書類の裏に隠された『真の目的』を解析し始めた。
【計画書:表層データ】
目標:利用者様の苦痛の緩和 支援内容:静かな環境の提供、投薬による鎮静
【計画書:裏層データ(クラヤミの真の目的)】
真の目標:利用者からの不満の排除、人的コストの最小化 真の支援内容:精神的な抑圧、コミュニケーションの断絶、外部との接触遮断
悠斗は、書類と、リーファとガルドが記録した『利用者の実際の状態』を照合させた。
「見つけたぞ……! 決定的な矛盾だ」
クラヤミの書類には「日中の歩行訓練」が義務付けられているにもかかわらず、ガルドの報告では「利用者は長期間、ベッドに臥位のまま」だった。
書類上の「支援費」を、実際には「提供していない」――これは、王国に対する巨額の詐欺だ。
悠斗は、すべての証拠を魔法具に記録させた。
その瞬間、部屋の扉が開き、クラヤミが現れた。
「さすがだ、悠斗くん。君の行動力は変わらない。だが、遅い!」
クラヤミの周囲には、屈強な警備兵が控えていた。
「この部屋は、利用者の静養のために、魔法による『防音結界』が張られている。君たちがここで何をしても、誰も気づきはしない」クラヤミは冷笑した。
「そうか。では、ここで決着をつけよう」
悠斗は落ち着いていた。彼の背後で、扉の陰に隠れていたドレッドが、静かに巨大な魔力を凝縮させ始めた。
「クラヤミ施設長。あなたの『安楽介護』の時代は終わる。我々『悠悠自適』が、この世界の福祉制度を、根本から『上書き編集』する!」
悠斗とクラヤミ。二人の間で、激しい火花が散った。
どもー、作者です!来ました、潜入監査回!
今回は、悠斗たちの『支援スキル』が、魔物との戦闘ではなく、ブラック施設の闇を暴くための最強の武器として機能する展開を描けて、大満足です!
ジン: 聴覚による警備ルートマッピング(潜入ルート確保)
ガルド: 身体介護の専門知識による虐待の証拠発見
リーファ: 行動援護による利用者の「感情の記録」
悠斗: 個別支援計画による「制度詐欺の証拠」の発見
そして、最後の切り札、ドレッドの隠密・魔力凝縮!熱いですね!
次回は、いよいよ悠斗とクラヤミの直接対決!ドレッドの魔力を使って、悠斗がどのような「制度の編集」を行うのか、ご期待ください!
また次話でお会いしましょう!感想ください!




