第10話 「因縁の再会(リユニオン)と異世界の施設長」
悠悠自適での生活は安泰だったが、悠斗は異世界の「不適合者」に対する根源的な差別制度に疑問を抱き始めていた。特に、ギルドの裏側にある、病や呪いで引退した元冒険者が送られる「隔離療養院」の実態だ。
「ガルド、あの療養院について詳しく知りたい。なぜ、あそこに送られた者は二度と戻ってこない?」
「あそこは……表向きは『手厚いケア』を謳っているが、実際は『処理施設』だと噂されている。高額な利用料を徴収されるだけで、支援は一切ない」ガルドは顔を歪めた。
その時、一通の豪華な封書が届いた。差出人は「王国福祉協会」。
「な、なんだこれは……」
封書を開くと、内容は『悠悠自適』の事業内容があまりに優れているため、正式に王都の制度に取り込む。つきましては、王都の「模範的な支援施設」との合同会議に参加せよ、というものだった。
その模範的な施設の代表者の名を見て、悠斗の体が凍り付いた。
『代表:シュヴァルツ・クラヤミ(Schwarz Kurayami)』
悠斗の脳内で、前世の記憶が警鐘を鳴らす。
「クラヤミ……? まさか……」
王都の格式高い会議室。そこに現れたのは、前世の悠斗を過労死させたブラック施設の施設長、その人だった。ただし、身なりは豪華な法衣を纏い、威圧的なオーラを放っている。
「おお、これが噂の『悠悠自適』の若き代表、悠斗くんかね」
「……シュヴァルツ・クラヤミ。いや、クラヤミ施設長」悠斗の声が低く響いた。
転生した施設長は、優越感に満ちた笑みを浮かべる。
「ほう、随分と懐かしい呼び方をする。そうか、君も運良くこの世界に来たのか。だが、私は今やこの王都で『福祉の神官』として崇められている。君の時のように、愚かな失敗は繰り返さない」
クラヤミが経営する施設の名は『永久の安寧』。表向きは最高の支援を提供すると謳い、王国の福祉制度を牛耳っていた。
「私の施設は、『安楽介護』をモットーとしている。重度の障害者は静かに『隔離』し、一切の『自立訓練』は行わない。なぜなら、彼らに訓練を施すのは、非効率だからだ!」
クラヤミは、悠斗のトラウマを呼び起こすように冷酷に言い放った。
「君の『支援事業所』は、利用者個人の能力に頼りすぎる。危険で、非効率だ。私の『安楽介護』こそが、この異世界で最も効率的な『管理システム』なのだよ!」
悠斗は静かに拳を握りしめた。彼の視界に、クラヤミの施設の真の姿が映し出される。
【対象:施設『永久の安寧』】 【経営理念:職員の都合、利益の最大化】 【制度設計:強制隔離】 【利用者状態:絶望、心身機能低下(LVMAX)】
クラヤミがこの異世界でやっていることは、前世のブラック施設経営を、王国の制度の傘の下で大規模化したものだった。
「やはり、あなたは変わっていない」悠斗は冷たく言った。
「前世で、あなたの『非効率な管理』によって、利用者の方々が希望を失い、俺たちが過労死した。この世界でも、あなたの『効率主義』が、人々の生きる権利を奪っている」
悠斗は、自身の【障害福祉サービス:神級】スキルを会議室全体に展開させた。
「俺のスキルは、前世で達成できなかった『完璧な支援の実現』のためにある。あなたの『安楽介護(管理)』は、俺の『共同生活援助(自立)』が必ず打ち破る」
クラヤミは一瞬たじろいだが、すぐに嘲笑した。
「ほざけ。この世界の制度は、私と王国の貴族が握っている。君のちっぽけな『支援事業所』など、私の巨大な『福祉帝国』の前では、すぐに潰えるだろう」
悠斗とクラヤミ。因縁の二人は、異世界で「福祉」の定義を巡る、壮絶な戦いを開始したのだった。
どもー、作者です!来ましたよ、因縁の再会!
悠斗の因縁の相手、元ブラック施設長(現:福祉の神官クラヤミ)を転生させちゃいました!これはもう、物語が動くしかないでしょう。
悠斗のスキルが『完璧な支援制度』の具現化なら、クラヤミのシステムは『効率的な利用者管理』の極致。二人は異世界で、「福祉とは何か?」という根源的なテーマで対立します。熱い!
次回は、クラヤミの運営する「安楽介護」施設の実態を、悠悠自適のメンバーが『モニタリング(潜入調査)』し、悠斗が【制度監査】のようなスキルでその闇を暴く展開になりそうです。
この対立、どう決着がつくのか、お楽しみに!また次話で会いましょう!




