第1話「生活援助(ケア・サポート)は世界を救う」
「……あ、目が覚めた」
悠斗は、硬い藁の上で体を起こした。 視界に入ったのは、石造りの天井と、煤けたランプ。
(俺、確か、夜勤明けで書類整理中に倒れて……ああ、過労死ってやつか)
状況を理解するより早く、恒例行事のように目の前に半透明のウィンドウが現れる。
【ようこそ、異世界『アースガルディア』へ】 【称号:元・ブラック施設勤務の介護福祉士】 【固有スキル:障害福祉サービス:神級】
「うわ、本当に異世界転生かよ。しかもスキルが……介護?」
異世界の森や迷宮じゃなくて、どうやら俺が転生したのは、街外れにある薄暗い「不適合者の集会場」という名の隔離施設だった。
ガチャリと扉が開く。入ってきたのは、顔に大きな傷跡のある大男だ。
腰には大剣を下げているが、その足は重そうに引きずられている。
「おい、新入り。お前も『不適合』だというが、何が問題なんだ?」
悠斗は男の足元に視線を向けた。
通常のステータスとは別に、彼の足には細かく状態が表示されている。
【対象:大剣士ガルド(元A級冒険者)】
【状態:左下肢機能障害(LV3)】
【原因:呪いの瘴気による神経麻痺】
【現状:筋力(STR)半減、移動速度(AGI)90%ダウン】
「なるほど、原因不明の神経麻痺ね。医療でも治せないと」
「なんだと? 貴様、まるで知っているような口ぶりだな」
悠斗はにっこり笑った。施設で培った、どんな理不尽にも耐えうる笑顔だ。
「俺は専門家です。その問題、俺に『支援』させてください」
悠斗はガルドの硬直した左足に触れた。
スキル【身体介護】が自動で発動する。
触れた部位から、まるで高密度のエネルギーが注入されるような感覚。
現実の介護技術である
「適切なポジショニング」
「関節可動域訓練(ROM)」
といった知識が、異世界の法則を書き換えていく。
「な、なんだこの感覚は……温かい……痛みが引いていく!?」
ウィンドウが点滅する。
【スキル:身体介護発動】
【効果:患部への適切なポジショニングを実施】 【効果:神経伝達の『バリアフリー化』達成】
【状態:左下肢機能障害(LV3)→(LV1)へ軽減】
【ガルドの筋力(STR)+20%、移動速度(AGI)+50%(一時的)】
ガルドは驚愕の表情で、自分の足を見下ろした。 これまで引きずっていた足が、まるで羽が生えたように軽い。
「信じられん……聖女の治癒魔法より確実だ……! お前、一体何者だ!?」
「俺ですか? 俺はただの生活援助員です」
悠斗はガルドに、適切な歩行姿勢と、杖を使う場合の動線について詳しくレクチャーした。
ガルドは目を輝かせながら、それを聞いていた。
「俺のスキルは、傷を治す魔法じゃない。『能力を引き出す支援』だ。あんたの残された力を最大限に活かす方法を知ってる」
悠斗は確信した。
この異世界で「不適合者」と呼ばれている人々は、単に「適切な支援」を受けていないだけなのだと。
「よし」
悠斗は拳を握った。
「俺はここで最強の支援事業所を立ち上げる。杖を握れない騎士、薬が効かない呪術師、社会に馴染めない全ての人々を、俺が『支援』して、この世界をぶっ壊してやる」
悠斗の目に、かつてのブラック施設では見ることのなかった、希望の炎が宿った。
はいどうもー、作者です。 ここまでお付き合いいただき感謝感激雨あられ、的なやつです。
いやー、今回はテーマがテーマなだけに、どこまでチートに振り切っていいか迷いました。でも結局、「介護スキルが最強の支援魔法」って設定にしたら、なんだか気持ちよくなっちゃいましたね。
主人公の悠斗くん、ブラック施設で死んだ甲斐があったってもんですよ。まさか過労死の果てに得たのが【生活援助】スキルっていうのも、皮肉が効いてて個人的には気に入ってます。異世界でも結局、支援してるっていう。天職かな?
大剣士ガルドの足、あっさり治しちゃいましたが、あれは多分、単なる物理治療じゃなくて、悠斗の「適切なポジショニング」が異世界の法則を無理やりねじ曲げた結果ってことで一つお願いします。異世界なんだから、その辺はノリで。
今後、ヒロインのリーファちゃんとか、他の「不適合者」たちも、悠斗の支援でどんどん強くなっていく予定です。 「訪問介護」で単体強化、「居宅介護」で生活基盤安定、「自立訓練」で新スキル獲得、みたいな感じで、現実に存在する福祉制度をチートシステムとして使っていくのが楽しいです。
まあ、正直、続きを書くかどうかは、読んでくれた皆さんの感想と、僕のその日の気分次第かな! もし「この制度をスキルにして!」とかリクエストがあれば、コメント欄で投げてみてください。反応するかも。
では、また福祉の世界……じゃなくて、異世界で会いましょう!




