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「つらくて長い戦いだった。仲間も大勢、犠牲になったわ。コマンダー安らぎも」
「コマンダー安らぎ、生きてたの!? てか、今度は死んだの!?」
「ギャラクシーレンズ豆の謎を解いた私たちは、ついに宇宙シンジケートを壊滅させた」
「ギャラクシーレンズ豆…」
「コスモメン本部に帰った私は、大統領選に立候補したわ」
「だ、大統領!? 何で!?」
「平和を実現するのは綺麗事じゃ済まないの! 権力が必要だって気付いたのよ!」
亜美の両眉が吊り上がる。
「そ、そうか…」
「コスモメンとしての知名度で、私はぶっちぎり当選したわ。そこにデロンデロン帝国が宣戦布告してきたの」
「デロンデロン帝国…」
「ええ。私は自ら大艦隊を率いて戦った。ホンジョロホンジョロの戦い、ヘンジョモヘンジョモの戦い、そしてギョガモンテンモリショーボギョガモンテンモリショーボの決戦」
「ギョガモンテンモリ…何だって?」
「そして、デロンデロン帝国を倒したの!」
「おめでとう! それで、おれは?」
「でも、喜びも束の間。ダイナミック・ノヴァに全ては呑み込まれてしまった」
亜美の表情が曇る。
「ダイナミック・ノヴァ!?」
「複数の次元の大爆発よ。肉体を失った私は」
「肉体を!? 失った!?」
「高位のエネルギー生命体、アーンアーンに救けられたの」
「アーン…アーン?」
「ええ。そして善のメンバーとして、悪の思念オーンオーンと戦った」
「オーンオーン…」
「1万年が過ぎたわ」
「500年、越えてない!?」
「高位エネルギー生命体に時間の概念は通用しないのよ!」
「は、はい!」
怒られた。
「ある戦いで私は、エネルギーの大半を失ってしまった。アーンアーンの仲間たちは私を守るため、元の姿で過去に転生させてくれたのよ」
「おお! だから、今も見た目が変わらないんだな! それで、おれは!? アーンアーンの時も背中に括りつけてたのか!?」
「何言ってるのよ、失礼ね! アーンアーンに背中はないわ! あなたは、その辺に浮いてたのよ!」
また怒られた。
「私はあなたを背中に括りつけた状態で、地球のこの洞窟に転生した」
「良かった、背中に戻れた!」
「そして、それと同時にあなたも何故か元に戻ったのよ」
「やったー!」
真悟はバンザイした。
「そう。やっと、あなたを元に戻せたわ」
亜美が涙ぐむ。
経緯はともかく、こうしてまた2人が逢えたのだから、よしとするべきだろう。
「ありがとう、亜美! 済まなかったな」
真悟は妻を抱き寄せた。
「あなた!」
亜美に抱き締め返された瞬間。
(あれ?)
真悟は違和感を覚えた。
(これは…亜美じゃない!?)
慌てて、身を離そうとするが、彼女は真悟を放さない。
「クケケケ!」
亜美が笑った。
彼女の両腕が、あり得ない力で、真悟を拘束する。
「うおお! だ、誰だ!?」
「ゲヘヘへ! 500年溜まった、お前のエネルギーを食ってやる!」
亜美のふりをしていたものが、大きく口を開け、真悟の頭を丸呑みしようとした、その時。
銃声が響いた。
ニセ亜美が、バタッと倒れる。
「あなた!」
洞窟の奥から、見覚えのないブロンド美女が走ってきた。
彼女の右手に、大きな銃が握られている。
「え!?」
戸惑う真悟に、美女が抱きついた。
(おお! この抱き心地は!)
姿形は変わっても、それはまぎれもなく妻だった。
「亜美!」
「そう! あなたの妻、亜美よ!」
涙を零し、ブロンドの亜美が真悟の頬にキスする。
「これは、いったい!?」
「私が眠っているうちに、パロロンウェシュレムが」
「パロロンウェシュレム?」
「その怪物よ」
ブロンド亜美が、ニセ亜美を指した。
「こいつはエネルギーを食べる魔物なの。狙った相手に作り話をして、その隙に襲いかかるのよ。危ないところだったわ」
「そ、そうなのか…あの長い話は嘘…」
正直、ホッとした。
「あなたが元に戻って良かった!」
亜美が再び、頬にキスしてくる。
妻とは分かっていても、顔がハリウッド女優みたいなので、何やら恥ずかしい。
「どうして、そんな姿に?」
「そうね。驚くわよね」
ハリウッド亜美が頷く。
「あなたが除湿剤で干物になってしまってから、私がどうしていたか話すわね。長くなるけど」
「な、長くなるのか…」
真悟は覚悟した。
聞かないわけにはいかないのだ。
「コマンダー安らぎと合流した私は」
「そっちの話にもコマンダー安らぎ、出てくるの!?」
おわり
最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)
大感謝でございます\(^o^)/