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奇才家三女の政略結婚  作者: 鳴木 空
1章 ある屋敷にて
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10 午後の清掃


 昼食を食べ終え私たちは3階に向った。まずは空き部屋から清掃を開始したが、カーテンが付いた窓以外何もなく、数十分で完了した。


 その後私の部屋へ移ったが、私も荷物が多いようではないのでゴミ取りや朝外し取り替えずにいたシーツの装着や窓拭きなどさして苦労もなく終わった。


 しかし、問題は公爵様の部屋だった。


「相変わらず、書類と本だらけで何処()手を付けて良いのか分かりませんね」

「ひとまずいつも通り、ベットメイクと書類のない場所だけを掃除しましょう」


 『書類のない場所』と言っているがそのような場所、ベットとソファ、そして床ぐらいである。


 机には大量の書類が壁をつくり、部屋の隅には本や置物、剣や鎧が無造作に置かれていた。クローゼットの中には社交界で着たのであろう数々の服が収納されており、中には私も薄っすら記憶にあるものもある。


「毎回旦那様の部屋に時間がかかるんですよ!なにせ私共はこの書類に許可なく触ることが出来ませんから」

「旦那様は、掃除はいいと断っていたけど、みんなが無理言って、できることをしているそうです」


 まあ、この状況を見ると放って置くわけにもいくまい。しかし本当に紙だらけだ。きっと科目ごとに分類はされているのだろうが事情を知らないこちらの身は何がどうなっているのか全く分からない。


 ひとまず、書類に当たらないように慎重になりながらベットメイクと掃除を終える。ゆっくり動きながらの作業は中々に集中力を要して結構疲れた。


「ディーカさんにはいずれ旦那様にガツンと言ってもらおうと思っていたので早く知ってもらえて助かりましたっ!」

「ぜひ、一声かけて頂けると幸いです」

「いや、顔を合わせて2日目の人間に『ガツン』はちょっと失礼が過ぎるのでは‥‥」


 私が公爵様にお小言‥‥!?


 いやいや、ないない、むりむり


 私が公爵様に言われることがあってもその逆はあるわけ無い。第一、私が文句を言うのではなく、文官を雇うなり育てるなりすれば仕事量が減りここまで彼の負担が集中することもないのではないのだろうか。


 こんな無能が国をも認める有能な人物に指図するなどおこがましい。


「そうでしょうか、ディーカさんなら大丈夫だと思いますが‥‥」

「アリーもそうだったけどマリアも公爵様の私の対応を誤解しているんじゃない?今回我々は互いの家の益のために出会ったのであって、決して甘い関係ではないのよ。『旦那様』に説明は受けてないの?」

「婚約者が来るため用意をしろと言われたくらいですね。あまり詳しいことは教えられていません。ダルクさんなど執務を担当している者は詳しく知っていると思いますが」


「第一、旦那様は屋敷では食事か睡眠か執務しかしている姿を見ていないので、今回婚約者という個人的なお話は初めてに等しいのではいでしょうか?」

「食事か睡眠か執務‥‥‥?」


 ありえない。そんなの職務のために生きているようなものではないか。


 趣味はどうした!趣味は!!


 私の家族を見習ってほしい。(私も見習いたいが)お父様は数学の研究がしたいから領地経営やその他業務を1カ月に1度やり、その後は部屋に引きこもってるような人だ。

 家の主人として生き方が違いすぎる。


「‥‥‥公爵様は忙しいお方なんですね。でしたらこのくらいの散らかりは見て見ぬふりをしてあげた方が良さそうです。皆さんもあまり彼のことを悪くいうのはどうかと思いますよ」

「‥‥確かにそうですね。少し心の声が漏れすぎてしまったようです。以降気を付けます」



 うん、もうディーカじゃなくてフレデリカに戻ってる気がするがこれも見て見ぬふりをしよう。


 雑談は程々にして、私たちは庭園に向った。初夏といえど日焼け対策は怠らない。4人でクリームを塗り、外に出る。


 実は私はあまり庭仕事をしたことが無い。芸術に造詣が深いエルミアお姉様とお母様が立体効果やら視覚効果、色彩研究、死角の研究と称して弄り回していたので手を出せなかったのだ。


 そのため、庭の手入れは任せて落ち葉拾いを行っていく。無駄に広い敷地の4分の1は庭園らしいため落ち葉拾い1つだけでも一苦労だ。黙々と片付けていたらあっという間に夕暮れが近づいていた。


 腰が痛い‥‥‥


「ディーカさん。そろそろ、切り上げないと夕食に間に合いません。お部屋に戻り着替えましょう」

「そうだね、臨時使用人も退勤しましょうか。マリア、アン、タナリア。今日は色々教えてくれてありがとう。私がこの屋敷にいる限り、これから支えてくれると嬉しいな」


 私はできる限りの誠意と礼を彼女たちに捧げる


「もちろんです。これからよろしくお願いしますっ!」

「フレデリカ様、不思議だけど優しいです。私も頑張って支えます」

「わざわざそのようにお願いしなくとも、私共がこの屋敷の使用人である限り、お支えするのは当然の事です」



 良かった、公爵様からはあまり歓迎されていないが少なくとも彼女達は歓迎してくれた。この調子で他の子たちとも仲良くなれたらいいな。



 部屋に戻り、使用人服から部屋用ドレスに着替える。食堂を入ったら食事はもう出来上がっていたので美味しく頂く。できれば皆で食べたかったが仕方がない。

 

 流石に昨日よりは少なく丁度よい量だった。きっと、昨日の私の残り具合から調節してくれたのだろう。


 

 食後は案の定眠気到来。あれだけ動いたのだから仕方がないといえばそうだが、私は赤ちゃんですか!?実家ではもう少し動けていたのに‥‥


 こっくりこっくり入浴を済ませ、全身マッサージコースで一時意識を飛ばすという昨日と同じ結末をたどり、ベットで気絶するように眠りに落ちた。




『気絶するように』ではなく正確には『気絶』していますね。実はフレデリカ、普通は布団に入ってもぐるぐる色々考え事してしばらく眠れない人なので

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