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奇才家三女の政略結婚  作者: 鳴木 空
1章 ある屋敷にて
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1 はあ、めんどくさい

趣味として始めてみようと思います


最近家にお迎えされた警戒心激強猫✕飼い猫を可愛がりたいけど遠くから見守る飼い主

 はぁ、めんどくさい。もうとてもめんどくさい。


これから私に待ち受けている試練とも困難とも幸運ともいえるものを想像して心の中でため息をつく。


 この日のために整えられた私の若葉色の髪は編み込みハーフアップをあーでもないこーでもないとお母様に結われて、ルビーの瞳を持つ二重の眼や顔には厚化粧とまではいかないが化粧がされた。


 また、目の前にいるお母様及び姉弟は口々に別れの言葉を述べている。


「相手方には失礼のないようにしてね〜。大切なのは行動と楽しむ勇気よ〜」

「頑張ってこい。ただ、ドレスの制作だけは絶対に私が持つ。いいか、絶対もぎ取ってこいよ」

「いい壁か庭があったら連絡してね、描くから」


 各々本当に滅茶苦茶な言葉だ。娘の嫁入りだっていうのに、お母様は暴力解決を勧めるし、3番目の兄様は二言目には服、服、服。1個上の姉さまだってもはや絵を描くことにしか言及していない。



 私、ヴェーガル伯爵家が三女フレデリカは今回お父様である当主ベルエルの失態による財政難尻拭いのため、ムニリア公爵家に嫁ぐことになった。

 


 つまり、簡単に言えば支度金目的に売られたのである。



 ちなみに元凶のお父様は部屋に引きこもっている。いつものことだ。


 ムニリア公爵家とはお祖父様の代に、少し交流があったそうだが今は全くと言っていいほど関わりのない家だ。


 では、どうして伯爵家がはるか上の爵位を持った公爵家に嫁げるのかというと我々が「ヴェーガル家」別名「奇才家」と呼ばれているのが理由だ。



 我が家は基本、1人1つ突出した能力を持って生まれる。数学や魔法構築といった頭脳系から剣術、武術といった肉体派、美術服飾の芸術分野まで様々である。


 この能力を生かし、代々我々は国に貢献を果たしてきた。何なら爵位を上げることも造作もないため、伯爵家といえど通常の伯爵家とは異なる位置づけにいる。


 

 では、私の奇才は何なのか?



 そう、無いのである。



 しなやかな身体能力も先を見通す演算能力も人を魅了する表現もない。


 まあ、家族は仲が悪いわけではないのでこれを理由に虐げられたりされたことは無い。

 


 ただ、財政難に陥った我が家から花婿を出し、支度金をもらうには一体今何処に旅出ているのか分からない長女でも、隙あれば絵の具を取り出し絵を描く次女でも不相応だ。

 

 行動も人格も一癖二癖ありすぎる。


 その分姉たちに比べたら、後始末担当の私は我が家で一番まともに過ごせている。

 

 家事全般から外壁修理、武術は嗜み程度だが時間稼ぎ程度はできる。礼儀作法はお母様に叩き込まれたので人並み程度にはあるし、夜会、茶会にも出てるので社交界関係も問題はない。


 

 はぁ、まさかこれが裏目に出るなんて。



 家にさえいれば奇才がなくとも何も言われることはないし、求められることもない


 できれば、一生家で過ごしたかった。外の世界は複雑で疲れる。

 

 まあ、けど決まってしまったには仕方がない。あと数時間で私は知らない他人のために尽くし奇才がなくともどうにか過ごしていかなければならない。



 能力目当てであろう家にいつまで保つかは分からない。


 しかし、最低限の公爵夫人業務はこなしてくるとしましょうか。


 大丈夫、私にもなんとか出来る。


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