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第九話 『変わった友人』

「いてて……」


「今日はいい動きだったぞ。フィル。何かあったのか?」


「いえ、特には……でも、最近調子がいいですよ。兄上の動きも前と比べると良くなってますね。わたしなんか、足元にも及びませんよ。ははは」


「あ、ああ……そうだな。それはフィルのおかげかもしれんな。だが、オレが褒めたことに慢心せず、これからも励めよっ! 今日はここまでだっ!」


「はいっ! 分かっています、兄様! ご指導ありがとうございました!」


「え……ああ」


 オレは、そう言うと足早にストライカーの元に走り出すのだった。


「アルトメイア様? どうかなさいましたか?」


 チスタは小さい体ながらも、アルトメイアの側仕えとして上着などを持ち、手渡そうとしたときに問いかける。


「ん……あ、いや、フィルのようすが……なんでもない! いくぞ」


「ま、待ってください。アルトメイア様」


 アルトメイアはチスタを置いていくほどの速さで自室へと戻るのだった。


 ――いつものフィルの稽古場 with ストライカー。


「むむむ……だぁぁぁ! ああ……あっ!」


 オレはストライカーのコックピットで悶えていた。


「はぁぁぁ……むっずいな……」


「操縦適正:E判定。要努力」


「わかってるよっ! この操縦、難しくないか?」


「要努力を求める」


「だから、わかってるってば!」


「了解――」


 このストライカーの操作方法は、なんというか……


 某ロボット対戦ゲームのツインスティックに近い。


 ストライカーの移動方法は、歩く、走る、そして惑星の磁場を利用した超伝導駆動によるダッシュ。ペダルを踏めば瞬時に加速できる仕組みだ。


 スティックを前に倒せば前進、横へ倒せば横移動、斜めに倒せば斜め移動。


 右ステックを前に左ステックを後ろに同時に倒すと左旋回、当然逆にすれば右旋回が出来る。


 そして右と左をそれぞれ同時に外側、すなわち「開く」と言えばいいのだろうか? そうするとジャンプが出来る。


 超低温でなければ発生しないはずの超伝導だが、ストライカーの素材には常温でも発生させることができる特殊なものが使われているらしい。


 地上での超伝導移動はエアスラスターによって実現されており、ペダルを踏むことで瞬時に加速することが可能となる。


 とりあえず、今はヘルメットをかぶり、シミュレーター内で操作を試している段階だ。


 直感的に動かせると思っていたが、実際にやってみると中々に難しい……


 そして、オレはE判定を受けたというわけだ。


 まぁ、四六時中練習できるわけではないし、仕方ないと言えば仕方ない。


 しかも、まだ始めて三日目だし……慣れるまでには時間がかかるよな?


 ……たぶん。


「なぁ、これ、ただ動かすだけじゃなく、武器なんかを使ったりするんだよな?」


「肯定。武器の使用は時期尚早」


「わかってるよっ!」


 はぁぁぁ……これは慣れるまで時間がかかりそうだなぁ。


 でも、なんというか……ゲームみたいで楽しいっ!


 結構好きだったしな。


 懐かしいな。


 ダッシュ斬りとか。


 ロマンだよな~


 前ビ避けてからのダッシュ斬り!


 痺れるな!


「………」


 いかんいかん!


 他にもやる事があるし、思い出はここまでだ。


「そうだ! 誰にも見られていないか?」


「肯定。数人を目撃。怪しまれる素振りなし」


 そう、さすがにこれは誰にも知られるわけにはいかない……


 見つかりでもしたら、大問題に発展する可能性が高い。


 そして、オレが問い詰めらることになるだろう……


 ま、問い詰められてもワケが分からないものだから、何も言えないのだが……


 この何も言えないと言うのがいけない。


 見方によっては隠し事をしていると、思われひどい仕打ちを受ける可能性が高くなる。


 よって、ダレにも知られるわけにはいかない!


 搭乗者の登録はオレだしな……


 そんなところで、ストライカーにどこか隠れれそうな場所をと思ったのだが。


「問題無。光学迷彩起動」


「お、おおお! 消えたっ! しかも、なんか背景も見える! なんだこれっ! 凄すぎないか……」


 と、言うことだった。


「オマエの性能すごいな。オレが前世の時代では間違いなくオーバースペックだよ」


「当然。そのような古代文明時代と一緒にしないで下さい」


「………」


 そらそうだな。

 ストライカーは五万年後の世界の兵器だ、

 そら、古代文明になるだろうな……


「さて、ほかの稽古もはじめるか」


 オレは、そう言いながら剣の稽古を始めようとした時にストライカーが話しかけてきた。


「ヘルメットを被ってください」


「えっ? 今日の操縦の練習は終わりだぞ。今からは剣の……」


「ですので、ヘルメットを被って下さい」


 う~ん……まぁ、被ってみるか。


 ――カポッ。


 すると、ヘルメットの画像が切り替わり、なんとも迷彩服を着込んだ軍人? が表示された。


 そして、難易度を聞いてくる。


「なんだこれ?」


「体術シミュレーター起動します。難易度を選択して下さい」


 シミュレーター? 体術?


「ちょ、ちょっと説明を……」


 ストライカーが言うには対人シミュレーターとして、プログラムがインストールされてるらしい。


 そこで、難易度の設定がありE~SSSまであると言うことだ。


「難易度を設定して下さい」


「わ、わかったよ……じゃ、じゃあEでっ!」


「了――シミュレーター難易度Eアクティベート。combat!」


 え、あ……


「わぁぁぁ! ちょ、ちょっと待ってえぇぇ!!」


 オレは目の前の軍人がナイフを持ち襲いかかってくる妙にリアルな光景に焦る!


「こわい、こわい、こわい! 待って、待って」


 たぶん、傍から見たオレは随分と間抜けな動きをしているのだろう……と思わる。


 だって……リアルすぎて、こわいんだよっ!


 焦るって! これは!


「おおお! こ、こうかっ! で、次はこうっ!」


 周りから見ると、一人で踊ってる感じなのだろうか?


 だが、オレは必死で敵の攻撃を捌いていた!


 そして……


「や、やったっ! 勝ったどぉぉぉ!」


「コングラッチェレーション! お見事です。では、難易度の設定を……」


「まて! ちょっと、休ませて! いきなりすぎて、気持ちの整理がつかないよっ!」


「了――待機モード移行」


「はぁぁぁ……ホッとする……でも、これすごいな。なぁ、これ魔術とかの攻撃とかはない?」


「魔術? 検索中……RPGや指輪物語などに出てくる架空の攻撃方法。現存する世界には存在の確認無し。検索終了――該当なし」


「だろうなっ! ある方がびっくりするよ」


「検索……実弾を想定したシミュレーターを確認。飛び道具を想定したシミュレーターを確認。実行しますか?」


「……いや、いい……音速に近い速度で飛んでくる、あんな小さな物をよけれる気がしない……」


「了解――代替案の提示:光速のエネルギー波が……」


「余計に無理だから! もういいから……」


「了解――」


「でも、そのシミュレーターいいな。これから、ちょくちょくと使わせてもらうよ」


「本機の機能が有効であるならば、随時実行可能」


「ああ、そうさせてもらう。さて、そろそろ夕飯だ。屋敷に戻らないとな。また来るよ。じゃあな。ストライカー」


「指示終了。システム待機状態に移行」


 どうせ、一人で食べる味気のない夕飯だ。


 けど……なんだろうな。


 今日は、それほど寂しくない気がする。


 だって、オレにはストライカーがいる。


 ただの機械かもしれない。


 でも、それでもいい。


 それだけで、少しだけ、オレは強くなれる気がした。

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