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第八十七話 『マスク・ド・ティーガー:聖戦詩を奏で』

 音の地獄がようやく収束し、耳鳴りだけが残った。


 倉庫の外壁は歪み、壁面の一部が崩れ落ちている。


「くそっ……ストライカー、倉庫のダメージは!?」


「外装に損傷が見られ被害は大きいですが、構造的には問題ありません」


 それでも、土龍たちは容赦なく迫ってくる。

 すでに残りは八体。だが――そのうちの三体が、倉庫の目前まで近づいていた。


「ストライカー、前に出るぞ!」


「了解です!」


 そのときだった。


 ――バシュッ!


 土龍の足元に何かが絡みついた。

 見ると、ワイヤーのようなロープがその足を絡め取り――


「引けっ!」


 ――ガキィンッ!


 二台のローダーが、ロープを引っ張りあげる形で協力し、一体の土龍を強引に引き倒した!


「今だ、兄さん!」


 ――ドゴォン!


 上空から降り注いだ火球が、転倒した土龍を粉砕する。


「よしっ、次っ!」


 すぐさま別のローダーがワンドを突き出す。

 その先端から青白いエネルギーが放たれ――


 ――ビシュウッ!


 土龍の前足が一瞬で凍りつく!


「よっしゃ、凍ったぞ!」


 別のローダーが駆け寄り、さらに別の脚を凍結。

 動きの止まった土龍へ、またも兄の砲撃が直撃!


 ――ドガアアァンッ!


 爆裂とともに、三体目の土龍も崩れ落ちる。


「やるな、ローダー部隊……!」


 一方、ストライカーは別方向に分散した個体を狩っていた。


 超高周波マチェットが唸りを上げ、次々に土龍を切り裂いていく。


 一撃で足を、次に胴を、最後に頭部へ――

 わずか数秒で三体を撃破。


 残る個体も、砲撃とローダーたちの連携で減らしていき、ついには――


「……やったか……?」


 地を這う土龍は、もういない。

 硝煙と黒煙が漂う中、静寂が戻る。


「これで全部、か……?」


 周りを見渡し、動く魔獣がいないのを確認する。


 兄さんとも連絡を取る。

 すると、周囲に動くものは見当たらないと報告を受けた。

 他のローダーも同じ感想を抱いていた。


 だが、その中の一台が、魔獣が――

 倉庫の中へ入っていったのを「見た」というのだ。


 そのとき、ヒュリエから連絡が入った!

 一際、余裕のない連絡がその焦りを如実に表していた。


「フィルっ! これ、どう使えばいいのっ!?」


 と、焦るヒュリエが叫ぶ。


「今、どういう状況なんだっ!?」


「そんなの後よっ! 今教えて、早くっ! じゃないと……みんなが――!」


 ヒュリエの切迫した声に、オレは――迷わず能力の開放方法を伝えた。


 ――倉庫内で。


「ラサラッ! 大丈夫!? 少し待っててっ!」


「え……ええ、お嬢様。なんとか踏ん張ります」


 ラサラは自分の何倍もある「ディノベイダー」に対して、素早く剣戟を繰り出し応戦している。


 魔獣は、素早く動き回るラサラに翻弄されていた。

 尻尾を振り回し、噛みつこうと顔を突き出すが――一度も当たらない。


 狭い倉庫内の動きづらさに、魔獣は苛立ちを隠せない。

 そして、火球を放とうとする。

 だが、それを見てとったラサラ。

 軽業師のごとき一撃が、顔面を正確に狙う。

 その攻撃を嫌がり、火球を放てなくなった。


 そんな中でヒュリエはフィルと交信を試していたのだった。


 チスタは、魔獣の襲撃で傷ついた者たちの治療にあたっていた。

 何人かは、入ってきた衝撃で飛んできた破片に当たり怪我をしたり、先ほどの共振で天井から落ちてきた破片で怪我を負っていた。


 そして、アマーリエはその補助を。

 手の空いた整備士たちも協力し、比較的安全な場所を確保して手当をしていた。


 何度もラサラは攻撃をしかける。

 だが、これといって決定打にかけていた。

 魔獣もそれを感じ、低い嘶きを「グルル……」と唸ったあと、ヒュリエを見つけた。


 そして――ヒュンッ!


「……えっ──」


 視界が一瞬、白く染まる。


 ――ドカァンッ!!


 鈍い音と共に、ヒュリエの身体が壁へと叩きつけられた。

 その場の全員が、声すら出せなかった。


「ヒュリエさまぁぁぁ!!」


「「「………っ!!」」」


 ラサラはその光景に叫び、他の人たちは一瞬の事に言葉を失った。


「………ヒュリエ………ヒュリエ、ヒュリエ、ヒュリ……エ……」


 アマーリエはその光景に崩れ落ち、呆然とする。


 静かに流れる時の中――


 怒りに打ち震えるラサラの叫びが、倉庫を震わせた――


「……よくも……ッ! よくもぉおおおおおおっ!!!」


 ラサラは胸元のペンダント――


 スナネコ族の守護神を象ったそれを、血に染まるほど強く握りしめた。


 そして、悪鬼のように歪んだ顔で、彼女は聖戦詩(バトル・リリック)を詠唱する――


「我の行く手を阻む者、一切合切の区別なく、灰燼と化し破砕するっ! 我が神『マスク・ド・ティーガー』に勝利を捧げるためっ! 今より、修羅畜生にならんっ! 獣神滅道(ゲッタールイン)!!」


 と、ペンダントを握り締めた手のひらから指に滴る血を手のひらを広げ指先から滴った血を、左頬から右頬へ――まるで戦の神へ捧げる“印”のように、顔に一文字の血化粧を刻んだっ!

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