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第八十六話 『ディノベイダー・シンパシー』

 ――ジャッキン!


 ストライカーは誘導レーザーを収納し、太腿部のホルダーから超高周波マチェットを引き抜く。

 右手にその刃を携え、超伝導移動で地を裂くように疾走した。


 続けて、左側のユニットから小型レーザー小銃を取り出す。

 標的に狙いを定め、先手を打つように牽制射撃を放つ。


 ――ババババシュン!


 レーザーが土龍の体表を灼き、黒煙を上げる。

 焼け焦げた肉が弾け、動きが鈍ったその隙を――ストライカーは逃さなかった。


 ――ザシュッ!


 まるで豆腐を切るような滑らかさで、マチェットの刃が胴体を裂いた。

 土龍は抵抗も虚しく、そのまま膝から崩れ落ちる。


「よしっ!」


 オレは颯爽と倒したことにガッツポーズを取った。


 かなり、すんなり倒せたな。

 これなら簡単に片付く――そう思ったが……


「……まだ、十四体もいるのか……」


 その数に、思わず気が重くなる。


 そのとき、ストライカーの警告が響いた!


「高エネルギー反応を感知! 回避行動を開始します!」


「……っ!」


 警告とほぼ同時に――


 ――ドドーンッ!


 先頭を走っていた土龍の頭上に、直径一メートルの火球が降下。

 直撃とともに爆裂し、土龍は黒焦げとなって息絶えた。


 爆風に対し、オレたちはショック体制を取ってやり過ごす。


「なんだっ!?」


 衝撃の中、ストライカーが冷静に答える。


「……アルトメイア様の砲撃ですね」


 その声を皮切りに、二発、三発と怒涛の砲撃音が連続する。


 ――ドンッ! ドドーンッ!


 兄の1/12(ワン・トゥエルブ)からの火球の爆風が次々に土龍を吹き飛ばす。


 それでも、数を減らしてなお――奴らの突進は止まらなかった。


 こちらにも四匹が向かってきた。


 ストライカーを囲むように配置し、火球を一斉に吐き出す。

 そのうちの一匹は、牙を剥きながら突進してきた。


 ストライカーはエアスラスターを小刻みに噴射し、火球を滑るように回避。

 突っ込んでくる土龍をS字にすり抜けると、その反動で下がった首元に――


 ――ザンッ!


 マチェットを叩きつけ、首を斬り落とす!


 ――ズルリッ。


 嫌な音とともに、首が胴体と別れを告げ、地面に転がった。


 それを確認したストライカーは速度を上げ、くるくると旋回しながら残る土龍を切り裂いていく。


 一瞬で手足を落とし、首に止めを刺し、四匹の包囲を突破――

 そのまま、残る土龍へと猛進した!


 しかし、ヤツらも突進はやめず、火球の砲撃が続く中突進する。


 その中でも何匹かは砲撃の餌食になり倒れていく。


 順調に数を減らし、ついには十体を切った。


 だか、数を減らす中かでヤツらもバカじゃない。

 集団だった陣形は砲撃に巻き込まれないよう分散していた。


 そのため、先ほどのように簡単には当たらなくなった。

 そのまま膠着している中、オレたちも少しずつだが数を減らしていく。


 だが、分散したため効率は悪くなる。


 二匹ほどたおした時には、もう既に倉庫近くまで近づかれていた。


 残りは八体!


 倉庫前では兄・アルトメイアの砲撃が続いていた。


 だが、敵との距離が縮まりつつあった。

 そろそろ近接戦も視野に入れてくる頃だ。


 そして――


 土龍も火球を吐き出し反撃していた。

 その先頭の一頭が吐き出すのをやめた。


 リーダーらしきその土龍が今度は口を開ける。


 すると、倉庫に向かって咆哮を上げ出すっ!


「ぐあぁ……」


 オレはその雄叫びの音量に耳を塞ぎ、声を漏らす。


「こ、これは……」


「これは……雄叫びというよりは高出力の音波に近いですね」


 ストライカーは冷静に分析する。


「ですが、この程度なら大したことはないです。あの土龍は何を考えているのでしょうか?」


「知るかよ……ケダモノの思考なんて、分かるわけが……っ!」


 高音域の振動が鼓膜を揺らし、不快感に思わず顔を歪める。


 だが、それだけではなかった。


 その先頭の土龍の雄叫びを皮切りに、他の土龍たちも次々と咆哮を上げ出した!


 ――ゴオオオオ……オォォン……オオン……オオン……!


 低く唸るような音が、地鳴りのように重なり合っていく。


「ぐあぁ……」


 さらに、音がひどくなりオレはうずくまる。


「これは……共鳴ですかっ!」


「どういうことだ? うう……」


「フィルは音叉を知っていますか?」


「い、一応は。名前だけな……」


 オレは耳を塞ぎながら、ストライカーの問いに答える。


「音叉は、同じ周波数を持つ物体同士が共鳴する原理を利用した装置です。たとえば、一方を振動させると、隣の音叉も振動し始める。これは、「共鳴」と呼ばれる現象です」


「それが……今の咆哮と関係あるのか……?」


「あります。今の土龍たちの咆哮、単なる威嚇ではありません。周波数を合わせ、互いの鳴き声を「共鳴」させているのです」


「共鳴して……それで、何が起きるんだ……?」


 そのとき――胸の奥が「ズン……ズン……!」と低く震える。

 骨を内側から叩かれるような感覚が広がっていく。


「これが問題です。共鳴によって音圧が増幅されれば、生体だけでなく構造物や機械にも――破壊的な影響を与える可能性があります」


「っ……つまり、それって――!」


「はい。これは、ただの咆哮ではありません。“攻撃”です。音響兵器の一種とみなすべきでしょう」


 ストライカーの声が、かすかに硬くなった。


「このまま共鳴が続けば……倉庫の構造材や、我々の内部機構にも悪影響が出ます。これは少々、危険です」


 その共鳴の音圧は地面を揺らすほどだった。


 ――グワワワワァァ……グオン……ゴォォ……!


 まるで地獄の鐘の音。あらゆるものが震え、崩れ、歪み出す。

 咆哮の声が収まった頃には、倉庫の建物は歪むほどに崩されていた……

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