第八十一話 『人気者……?』
――ぶしゅぅぅぅ。
ローダーたちが次々と倉庫に戻ってくる。
その中にストライカーがいた……
こいつぅ……何しれっと一緒にいるんだよ……
「なんか、このローダー変わっているな」
「こんな機体、うちにあったか?」
と、整備の人たちが不思議そうな顔をしていた。
ほらみろっ! みんな、怪訝そうな表情を浮かべてるじゃないかっ!
……ほんと、なにやってんだよぉぉ。
はぁぁぁ……
そんな中、休憩を取ろうとグリムヘッドから降りていた兄が口を開く。
「こ、これは……試験中の試作機を、帝国の研究機関から預かっているものだ。だから、みんな――内密にな」
ナイスっ! 兄さん!
オレは、即興の嘘で納得させる兄さんに感服したのだった。
その兄が、オレに耳打ちをする。
(その場凌ぎの思いつきの嘘だが、大丈夫だろうか?)
(それで大丈夫ですよ。ありがとうございます、兄さん)
(おまえの今までの苦労に比べれば大したことはない。だが……的とはいえ、相手にすると凄いな、ストライカーは。まるで、勝てる気がしないよ。はは)
兄さんは少し凹んだ様子を見受けられた。
たしかに、あいつの動きは変態的だからなぁ……
一応、オレはフォローを入れておく。
(兄さんはまだ乗ってから、それほどたってないじゃないですか? ……それに、最後はちゃんと的に当てたんですし、大したものですよ)
(……そうか? そうだと……いいな)
兄さんは小さく笑った。
その笑顔が、少しだけ悔しそうで、少しだけ嬉しそうで――
オレは、やっぱり兄さんがすごいと思った。
オレと兄さんがそんな会話をしていると、ストライカーの周りに人が集まってきた。
「おめぇさん。すげぇな。一体どうやったら、あんな動きできるんだ?」
「なぁ、降りてきて話そうぜ」
「がはは、なんともすんげぇ、動きしてたぜぇ。てぇ~したもんだ。なぁ、こっち来て一杯やらないか?」
と、はやし立てていた。
「そういや、おめぇさん。名前なんてぇ~んだ?」
……余計なことを言わないでくれと、オレは願っていた。
「やぁ、ストライカー。キミほんとすごいね。ボク、見とれちゃったよ」
と、ケーニッヒねぇさんが、余計なことを話した……
「なぁ、嬢ちゃん? こいつ、ストライカーっていうのかい?」
「うん。わたしの友達のストライカー。そうだよね? ストライカー?」
何も喋るな……何も喋るな……
オレは願いを込めて祈ったっ!
「ええ、わたしはストライカー」
オレの願いは砕け散った……
さらに追い打ちをかけるかのようにストライカーが話し出す。
「正式には第四十二星……」
オレは慌てて通信を開いた。
(おおいっ! そこまでだっ!! それ以上はまずいって……)
オレは正式名称を言い出したストライカーを止めた。
(なぜでしょうか? きっと気づかれませんよ。このローダーとわたしはよく似てますし、大丈夫ですよ)
「………」
(おまえな……)
(フィルは心配性ですね」
(おまえが能天気なんだよ……なんか、変わったな、おまえ……前はもっと無機質だった気がする)
(そうでしょうか? ……ですが、変わったと思われるのなら、それはフィルたちと関わり、より人間的になっていったのかもしれません。それは、わたしにとって――とても、嬉しいことです。……ありがとうございます、フィル)
突然のストライカーの感謝にオレは気恥ずかしくなった。
(……ま、まぁ、皆にばれなければいい……その……ボロだけはだすなよ)
そんなストライカーにオレは妥協したのだった。
(……ちょろい……)
(なんかいったかっ!?)
(いえ、なにも。ほんと感謝していますよ。フィル。ニッコリ)
「うっ………」
まぁ、いい。
みんな、ストライカーを訝してはない。
なら、なんとかなるだろう?
なるかな……?
「なぁ、おめぇさん、降りてこねぇのかい?」
「わたしは機密なので、ご容赦ください」
「ふぅ……なら、仕方ないな。まぁ、いいさ。けど、あんたの操縦いかしてたぜ! がっはは」
「ほんとほんと、がっはは」
ねぇさん、馴染みすぎだろ……がはは
あれ? 伝染った?
「ねぇ、フィル。フィル? この子の知り合いなの? わたし乗ってみたいっ! 頼んでくれないかな?」
「………」
勘弁してくれ……
「いや、今はダメだ……機密だしな……すまない」
「ええっ! 乗りたい、乗りたい、乗りたいぃぃぃ!」
ああ……もう……収拾がつかなくなってきた。
アマーリエさんもほんと興味津々で近づいて見ているし……
「フィル様……大丈夫なのですか?」
チスタが心配して小声で話しかけてくる。
「……大丈夫じゃない……けど、もう、どうにもならない……」
「……ですよね。心中お察しします」
はぁぁぁ……たく……
でも、まぁ、いい……なんだかんだでなんとか打ち解けている。
ストライカーもオレたちばかりじゃ、世界が狭いだろうしな。
「……ふっ……なる様になれだ」
オレは、もう吹っ切ることにした。
そんな時っ!
ストライカーから、エマージェンシーの通信が来るのだった!




