第八十話 『ストライカー暴走!?』
「「「か、かわいい……ぷっ、あははは」」」
「よう、にいちゃん、良く似合ってるな ぶっ……がはははは」
ち、ちくしょぉぉぉぉ!!!
みんなに笑われたっ……
その中でも、アマーリエさんは我慢してくれていたのだが……
「そんな……クスクス……笑ったら……クスッ……悪いですわ……ふふ」
「ああもう、我慢しないで笑ってくださいっ! 我慢される方が心にきますっ!」
と、センスで口元を隠しつつ、控えめに笑っていた。
その中でヒュリエは目を輝かせていた。
「フィル、フィル! なにそれ! なにそれ! いいなっ! わたしも欲しいっ!」
こんな感じだ。
「フィルさんは獣人になりたいのですか?」
「そ、そんなわけではないですよっ!」
「そうでしたか。ですが、中々に厄介ですよ。その耳は、わたしも耳かきに困るんですよね」
と、ラサラさんはガチ心配してくれた。
「「「あ~お腹痛い」」」
「フィルさま……その申し訳……ぶふぅ……」
「チスタ……我慢しなくてもいいから……」
……まぁ、ここまで笑ってもらえたら本望ですよ。うっ……
――しばらくして。
はぁぁぁ。
ストライカーにる通信する前に凄く疲れた……
さて、ちょっと連絡とってみるか。
たしか、耳に触ればスイッチが入るのだったかな。
「………」
なんで、そこをスイッチにするかな……
――脳内での会話
オレは耳を軽く触れてスイッチを入れる。
すると、脳内にストライカーの声が響く。
『問:フィルですか?』
『ああ、オレだ』
『……詐欺ですか?』
『ちがうっ! この通信はオレしかしないだろうっ!』
『分かってますよ。ウェットに富んだお茶目な冗談ですよ』
『……おまえなぁ……まぁ、いい、今どこだ? 見つかってないか?』
『ええ、現在、訓練エリアの南西部に待機中です』
『ならいい……しかし……脳に直接くるの、やっぱ違和感あるな』
『そうですね。耳から入る情報とは異質なものになりますしね』
『たしかに。あ、始まるらしい。じゃあ、くれぐれも気をつけろよ』
「了――誰だと思っているのですか。ご心配なく』
『………』
……なんか、少しテンションがおかしい気がする。
不安しかない……まぁ、いい。
それよりも兄さんの演習を見ないとな。
軽く頬をしかめながらも、オレはグリムヘッドの元へ向かう。
演習が始まった。
広大な演習場に設置されたターゲット用のローダー。
手には長い槍のように上に掲げられた的を持ち移動しはじめた。
それが、遠くからゆっくりと移動を開始する。
それに合わせて、グリムヘッドも機体を動かしながら補足、照準、そして砲撃。
命中。
だが、まだ動きはぎこちない。
その時だった。
砲撃で弾かれた的の一つが、風に乗ってフィールドの端まで転がっていく。
そこに、ぽつんと立っていたストライカー。
じっとその的を見ていた。
『……ターゲットの動きに対する反応速度……興味深いです……』
「え? ちょ、まっ、お前……!? 何言ってんのっ!?」
なんとストライカー!
自らターゲットを手に取り――動き出した!
「誰だあれっ!? あんな動き、どこの兵が操縦してるんだ!?」
「自走してるローダーか!?」
兄が操縦する『1/12(ワン・トゥエルブ)』も動きが止まる。
「……フィル様。あれってもしかして?」
チスタが「キョトン」とした顔でオレに訪ねてくる。
「あはは。何してんのストライカー」
姉さんは面白そうに笑う。
「なにあれ? なにあれ?」
ヒュリエは「わくわく」した様子でウキウキしていた。
その傍らで、アマーリエ様も興味深そうに観察している。
「………」
何やってんだっ!? あいつ!!
オレは突然のストライカーの行動に慌ててしまう。
だが、オレの心配を他所にストライカーはさらに芸術的な動きを見せる。
機体が滑るように移動し、ジグザグに動くっ!
時にはカーブを描きながら移動。
そして、回転。
まるでコマのように回りながらターゲットを掲げている。
オレはその光景に思わず吹き出した。
「ぶはっ……ほんとにっ! な、なにやってんだよ、あいつっ!」
あわてて通信を開く。
『ストライカー!? 何やってんだ!?』
『フィル様、現在はデータ収集中です。動きながらの砲撃への反応、ならびに――』
くるりっ!
リニア駆動が唸りを上げ、機体が音もなく滑走――
次の瞬間、軸を中心にスピン!
地面を削るようにして、ターゲットを掲げながら華麗に一回転。
周囲からどよめきが起こる。
「な、なんだあの機体!?」
「……動きが尋常じゃない……!?」
さらにストライカーは、軽やかにジャンプし、伸身二回宙返りを披露。
――そしてそのまま着地して、くるりと90度ターン。
タイミングよく、そこへ放たれた砲撃が的を貫いた。
直撃。命中。訓練終了。
「おおおおおおっ!?」
「な、なんだ今の……すげぇ……」
拍手が起こる中、ストライカーが他のローダーと共に倉庫の方へと戻っていく。
『任務完了しました。では、いつものように、倉庫でお待ちしております』
「いや、なんで倉庫に戻るんだよ!? てか、いつものようにってなんだよっ! 今日が初めてだろうがっ!」
オレは、ストライカーの行動に振り回されるのだった……




