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第七十九話 『可愛いは正義……じゃねぇ!』

 ――屋敷から2時間ほど馬車に揺られ到着した場所は広大な平野だった。


 地平線の果てまで草原が続く。

 ところどころに風にそよぐ背の高い草が揺れていた。

 空は雲ひとつなく晴れ渡る。

 そこから射す日差しが平原を静かに照らしていた。


 そこを改良、保全して演習場にしている。

 近場には民家もなく……

 いや、建築を禁止しているのだろう。

 あるものといえば、休憩所と整備倉庫と備蓄倉庫くらいだ。


 その警備も厳重で兵士が監視していた。

 何台かのローダーを兵器として改造されたものも設置されていた。


 たしかに、整備用で動かせるなら兵器にも転用は出来るよな?


 物々しい雰囲気の中、整備士の人たちは先に到着していた兄のグリムヘッドの動作確認なだと始めていた。


 見た目兄の『グリムヘッド 1/12(ワン・トゥエルブ)』は中、遠距離戦がメインじゃないかと思える。


 期待の背中のバックアップにワンドが備え付けられ、それは可動可能で、そのままカノン砲のような形態になり焼夷弾のような火球が発射される。


 そして、腕にも小型の砲手が備え付けられており、それは近距離戦用の緊急砲撃が出来るようだ。

 土というよりは鉄鉱石のようなものが散弾、つまりはショットガンのように広範囲に攻撃できる。

 そのどちらも、魔力砲撃なのだが、瞬時に砲撃出来るようにデフォルトで設定されている。

 

 だが、操縦者の意識により、貫通弾や氷撃や炎弾、水撃などに変化することが出来る。


 あと、腰には小型の剣が備えられており剣戟も可能。

 むしろ、ワンドの長さを生かした、杖術のような戦闘も出来なくはないらしい。


 だが、今回はその砲術の訓練だ。

 動きながらの砲撃。

 狙いを定めてからの砲撃。

 近距離での武器の扱い方。


 その感覚を養う。

 それが、今日の課題だ。


 それが終われば、一通り通し、何度か繰り返して苦手な部分と得意な部分を分ける。

 その後に、苦手な部分を補強しつつ得意な部分の精度を上げる。

 大方の流れはこんな感じだ。


「まぁ、計画はあくまでも計画だし、スムーズにいくかどうかは分からないってところかな。それより……」


 ほんとにアイツは大丈夫なのか?


 オレは気になり、ストライカーに連絡を取ろうとする。

 あらかじめ、別々の移動になるために連絡を取れるように小型の連絡装置。

 

 それを渡されていたのだが――


「……おい……なんで、その装置の形がこれなんだ……?」


「問:なにがいけないのですか?」


「いや……聞く限りでは高性能だよ。ほんと……脳波を読み取り、骨伝導で会話が出来る。むしろ、声を出さずに脳内でもやり取りできるのは、さすがだと思うよ。うん……けどな……」


「……? なにが問題なのでしょうか?」


「問題しかないっ! なんで猫耳型のカチューシャなんだっ! これっ!?」


「可愛いじゃないですか?」


「おまえ……それ、本気言っているのか?」


「広範囲に脳波を読み取るために、そのような形になりました。お気に召しませんか?」


「……お気に召さないことはないが……男のオレがこんなのを付けて衆人環視の中を歩くのを想像しろよ。どう思うよ」


「……可愛い?」


「………」


 ダメだ……話が通じない……


「わたしも……本当はおかしいとは思うのですが。あの頃、星間戦争の最中に絶滅してしまった“ネコ”の映像を見た兵士たちが、『可愛い……』と唯一の癒しにしていたそうです。せめて雰囲気だけでもと、このようなデザインに……申し訳ございません」


 ――ハァァ……


 まぁ……ストライカーが悪わけじゃないないのだが……

 こんなの作るくらいなら、ナノテクノロジーで体内埋め込み型作れよな……


 ――ゴクリ。


「……これ、ほんとに付けるのか? オレは……」


 付けることに対する抵抗感がすごい……

 むしろ、オレ自身がパリピ人間ならよかった……


 それなら、洒落で通るだろうし、むしろ喜んで付けそうだ。


 けど……いざとなると、オレの中の何かを捨てないといけない気がしてならない。


 くっそぉぉぉ……


 オレは、意を決して猫型カチューシャを装備するのだった。


 ――カポッ


 くぅぅぅぅ……屈辱だっ!


 出来れば、誰も気づかないでく……


「……フィル? 何それ?」


「ひぃあぁあ!」


 姉さんに見つかってしまった……


「……くくく、何してんのそれ、くくく、あははは ひぃひぃ……ぷっ、あははは、かわ、かわ、くぁい いひひひ ひぃぃ、く、くるしひぃぃぃ」


「くぅぅう……」


 あああ~もうっ!


「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 オレは激しく慟哭するのだった……

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