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第七十五話 『勝手きまま……』

 先日の父との会話で、少しだけ父への考えを改めることになった。

 案外、オレたちのことを考えていたのだ。


 だが……

 そう思おうとしても、今までの父の影がちらついてしまう。

 払拭しようとしているのに、どうしても……


 というか……

 この家の人間は言葉が足らなすぎるって……

 父さんにしても兄さんにしても……

 

 それで、いらない誤解が生じている。

 そのことをもっと自覚するべきだよ……

 ほんとに……はぁぁぁ。

 

 もう少し、話してくれればなぁ。


 そう思わずにはいられなかった。


「まぁ、いい。少しずつでもオレの認識を改めていけばいい」


 最終的には、そう思うことにした。


 そんな中、兄さんは今日も訓練に励んでいる。


 毎回オレを付き合わせるのも悪いと思ったのか、


「三回に一度は休めばいい」


 と、兄さんは言ってくれた。


 そんなわけで、今日は見学なしの日だ。



 だが、姉だけは毎日付き合っている。

 まぁ、別の理由だろうけど……


 しかし……特に今はやることがない。

 

 やはり、オレも付き合うべきだったか?

 そう考えてしまう。


「いつもの場所にでも行くか……」


 そう思い、オレは歩き出した。


 しかし……


 今日はなんだか静かだ。

 まるで、ヒュリエが来る前の普段のような静けさだ。


「………」


 ……何か、物足りない。

 おかしい。

 前と同じ日々のはずなのにな……


 それだけ、ヒュリエが気になっているのだろうか?


 毎日あれだけ、賑やかにしていた。

 それに慣れてしまって、物足りないと感じているのだろうか?


 ……いや、いればいたで煩わしく思えるのだが……


 あああっ! もうっ!


 なんだ、このもやもやした感覚はっ!


 いたらいたで、いないならいないでっ!

 なんで、こんなに頭を悩まさせられるんだっ!


「……たくっ、はぁぁぁ」


 オレは妙な気持ちのまま、ため息をついた。


「ん……?」


 あれはなんだ?


 顔を上げた瞬間、庭の木に誰かが居るのが見えた。


「ん~~」


 目を細め、じっと見つめた。

 あの、よく目立つ赤いワンピースは……


 ……ヒュリエか?


 少し気になり、はっきりと見える場所まで近づくことにした。


 近づくと何やら、木の陰に隠れるようにしてしゃがんでいた。

 そして、キョロキョロと周りを気にしてるみたいだった。


 何やっているんだ?

 あんなところで?


 ……ん~~

 声かけてみるか?

 でもなぁ……


 うん、きっと何かの訓練に違いない。

 それなら、邪魔しちゃ悪いしな。

 放っておくか。うんうん。


 そう思い踵を返すが……


「………」


 ああ~もうっ!


 それでも気になったオレは声をかけることにした。


「なぁ、何してるんだ?」


「……っ!」


 ――ドキッ!


 そんな音が聞こえてきそうなくらいにヒュリエの顔は驚いていたようだった。


「……フィ……ル?」


 それだけ言うと、「ほっ」と息をつきながら、こちらに向いた。


「はぁぁぁ……ちょっと、脅かさないでよっ!」


「いや、そんなつもりはないが、誰かに見つかると驚くようなことをしたのか?」


「そそ、そんなワケないじゃないっ!」


 そう言っている彼女だが、明らかに動揺が見て取れる。


「「………」」


 しばらく、お互いの顔を見合っていたが。


「ねぇ、フィル。今、暇?」


「まぁ、特にやることもないから暇と言えば暇なのか?」


「………」


 しばらく、彼女は考え込んだ後に口を開いた。


「じゃあさ。街にいかないっ!?」


 元気よく言う彼女は、今までとは打って変わりいつもの陽気な雰囲気になっていた。


「いやいや、街にいくなら誰かに言わないと」


「イイのよ。そんなのはっ! 家じゃ、勝手に抜け出してたんだから」


「………」


 ほんとにこの子は……

 自分の屋敷と同じに考えてもらっては困る。

 ちょっと、その辺を誰か教える人がいないものだろうか?


「ねぇ、いいでしょ! いいよね! じゃあ、いくわよ!」


「おおおおぃ! 待て待て待て……」


 オレはそう言っているが、力強くヒュリエに引きづられてしまうのだった……


 ――テクテク。


 はぁぁぁ……


 オレ、何やってんだ?

 また、ヒュリエの気まぐれに付き合わされているのだが……


 勝手気ままに、街を練り歩く。

 勝手気ままに露天の食品を手に取る。

 勝手気ままに……


 お金は払うとは言ってはいないっ!(キリッ 

 払うのはオレの役目だっ!


「………」


 おい……なんでオレが払わなくちゃならないんだ……


 そんなオレの思いも知らず、さらに新たなチャレンジを貪る。


「………」


 おまえ……いい加減にしろよ……

 そう思い、声をかけると。


「なに? ほら、フィルも食べよ。おいしいよ。へへ」


 と、にこやかに屈託のない笑顔で笑いかける。

 そして、オレにもおこぼれを勧めてくる。


「……たしかに、うまいな」


「でしょう? おいしいよねっ」


「え? あ……ああ……」


 ……って、ちっが~うっ!


「次はどこ見ようかなぁ~ん~ふふ♪」


 鼻歌交じりに移動するヒュリエに翻弄されっぱなしのオレだった……

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