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第七十二話 『試される、兄への課題』

 兄がオレとヒュリエに「仲がいい」と言われた。

 その言葉にヒュリエはどことなく嬉しそうだった。


 だが――


「……そう見えますか?」


「見えるが……違うのか?」


「毎回、無理やり、引き釣り込まれてるのを仲がいいと言われるなら、そうかもしれませ……」


 オレが最後まで言う前にヒュリエは怒鳴る。


「なによっ、それっ! わたしが無理に誘ってるみたいに思われるじゃないっ!?」


「違うのか? 毎回、腕を掴んでここまで連れてこられているのだが……」


 

 そう言われて、ヒュリエは顔を伏せて、寂しそうに喋りだす。


「……フィルはわたしのこと……きらいなの?」


「うっ……」


 ヒュリエは切なそうな顔で尋ねる。


 そんな顔で言われたら、「うん」なんて答えられる訳無いだろう……


「そ、そんなことはない……」


 そう言った瞬間、ヒュリエの顔は「パァ」と明るくなる。


「じゃ、じゃあ、好きなのねっ!」


「えっ……あ、いや……」


 尋ね方が極端すぎるだろっ!

 どう返答すればいいんだ?


 オレの返答も待たず、ヒュリエはオレに抱きついてきた。


「わたしは大好きだよ」


 突然のことで、頭が真っ白になった。


 その行為に兄もチスタも気恥ずかしく唖然とする。

 そして、横からラサラさんが口を挟む。


「ああ、羨ましい……お嬢様の匂いのど真ん中っ! くぅ~けしからんっ!」


「お、おいぃぃ! ちょ、ちょっと待て。というか、離れろぉぉ!」


「え~、私のこと嫌いなの?」


「そ、そういうワケじゃないけど……恥ずかしいだろぉぉぉ!」


 と、オレはヒュリエを引き剥がす。


「やあぁん……」


 ああ……びっくりした……

 いきなり、なんてことするんだこの子。

 しかも、大好きとか……


「………」


 オレは冷静になって思い出し、恥ずかしくて顔を赤らめる。


 えっと……つまり、あれだよな?

 「お兄ちゃん大好き」的なやつ。

 LOVEじゃなくて、LIKEの方だよな……?


「………」


 うん、そう思っておこう……


「な、なぁ、フィル……その、そういうことはみんながいないところで……」


 ナニヲイッテルンデスカネ、ニイサンハ……


「そ、その……フィル様……わたしも、同じ意見です……っ」


 チスタまで……


「ち、違うからっ! 初めてだからっ! コイツ、今日いきなりだからっ! そ、それより、どうしたんですか? 兄さん? オレに何か用があるんですか?」


 オレは、オレは、なんとか話題をそらそうとした。


「あ、そうだ……」


 そういうと、兄はオレの耳元で囁く。


「……なぁ、フィル、あとでストライカーのところに来てくれないか?」


 そう、耳打ちしてきた。

 その声には、どこか真剣さが滲んでいた。


「え……いいですよ。今日はもう終わりですし、このあとに行きましょう」


「たのむな」

 

 そういうと、「じゃあな、邪魔した」と言うとこの場から去っていく。

 チスタは一礼して兄の後を追った。


 ヒュリエもラサラも一礼して後を見届ける。

 そして、ヒュリエもラサラさんと一緒に屋敷に戻ったのだった。


「また、一緒に特訓しようね」


 ヒュリエは手を振りながら、笑顔で去った。


 気づけば、オレは一人になっていた。


 ……なんだろうか?

 操縦の訓練で何かあったのだろうか?


 兄は祭りが終わって二日後から訓練に入った。

 初めは、腕を動かすのにも苦労したらしい。

 今は、少し慣れ始めて、歩くくらいはできるようになったと言っていた。


 ……兄が言っていたのは、その訓練のことなのか?


「………」


 ……そろそろ、行ってみるか。


 ――いつものストライカーのいる場所で。


「よぅ。フィル。待ってたぞ」


 そういう傍らにはチスタが恐縮した感じで控えていた。

 

 う~ん……やはり、まだ距離感を掴めていない感じだな。


 そんな様子を他所にオレは兄さんに挨拶を返す。


「話って何かな? 兄さん」


「ああ……実はな――」


 兄さんの話はこうだ。

 それほどの話じゃないが、父のやり方にオレは不満になる。


 昨日のことだ。

 兄は父から、ラース地方。

 つまり、グリムヘッドの模擬戦地のインフラ整備の話だった。


 父が兄に「お前ならどのように始める?」と、尋ねられたらしい。

 とても、向こうの世界なら到底中学生にもなっていない子供に尋ねることじゃない。


 けど、兄さんは答えた。

 「屋敷の方向から整備していけばいいのでは?」と。

 それを聞いた、父は「そうか……」とだけ言うと。


「もう少し、考えてみろ。後日、また尋ねる」


 そう言われたらしい。


 どう見ても、答えありきの質問だ。

 兄がどう答えるかで兄を図っているのだろう。

 そうやって、人を図る。

 最近の父を見ていると、なんだかそう思えてくる。

 昔からだったのかもしれない。

 接点のなかったオレには分からなかった。

 そういう事なのかもしれないな。


 やろうとしていることは理解出来るが……

 兄を思うと、不憫でならない……

 

 そこで、オレならどうするか意見を聞きたいらしい。

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