第六十九話 『ストライカーの解析結果』②
「初めに言っておきますと、わたしはその量子を観測したワケではないのです」
「どういうことだ?」
「つまりは、観測すること自体が危険だと判断し、間接的なデータからその量子の特性を解析しました。よって、完全にはと行きませんが、ほぼ間違いないと判断します」
ストライカーはそう言うと、話し出す。
「この量子には波の全てに粒子が存在したのです。これは非常に危険な粒子です。迂闊に手を出せば、何が起こるか予測もつきません」
ストライカーは警鐘を鳴らす。
この超未来のAIが言うのだから、そうなのだろう。
「手を出した次の瞬間に全ての生命が悍ましい生き物に変わる可能性さえ秘めています。もしくは、過去が改変されていて、意識が再構築される可能性もあり、また、未来さえも強引に変化をさせることも可能になります。そして、それを扱った人が望んだものになるのかもわかりません」
さらに、この人型兵器はまくし立てる。
なんだか、感情的になってきた気がする。
が、それだけ厄介なのだとオレは理解する。
「それほどに危険なのです。ここで怖いのは、過去を変えた、未来を歪めたとしても、誰にもわからないのです。扱った本人ですら、分からなくなります……」
ストライカーは一気にまくし立てた。
その危険性にオレは言葉を失う……
「………」
「全ての波に粒子があるということは、過去も未来にも存在するということになるのです。よって、こんな粒子は扱ってはならないのです。こんなものを想像した、この世界の神は一体何を考えているのでしょうね。まったく、はた迷惑な存在ですね」
ストライカーのいう粒子が相当に危険だと言うことは分かった。
そんなものが存在するだけでもまずい気がする……
だけど……話を聞いてもどこかオレは危機感は薄かった。
多分、今のところ何も起こってもいないからなのだろうか?
それとも、あまりにも話が大きすぎて実感がないからだろうか?
だが、それよりも……
「な、なぁ、その粒子が存在しているということは、さっき、言ったことが起こった可能性がある? ということも考えられないだろうか?」
「了。間違いなく、何度かはある……と推測しますが……分からない、が正しいでしょうね」
「な、なら、もしあったとしたら、何故この世界は無事なんだ?」
「無事かどうかわは分かりませんよ。既に過去か未来の改変が行われた世界の可能性も考えうるのですから。今、この時もそうだとも言えなくもないのですよ。なぜなら、誰も感知出来ないのですから」
「………」
ストライカーの説明に、オレは薄ら寒い感覚に陥る。
最初は現実味がなかった。
でも、今のこの世界が「改変後」だった。
そうだとしても、それを誰も知らないのだとしたら?
すでに何かが変わっているのだとしたら?
気づけないまま、オレたちは「元の世界」ではない何かの上に立っているのかもしれない……
考えれば考えるほど、足元が揺らぐような気がした。
知らないうちに塗り替えられた世界。
それを、何の疑問も抱かずに生きているかもしれない。
それが、今この瞬間の現実だったとしても――
「……最悪だな」
「と、ここまで話ましたが、予想ですがそこまで深刻な話でもないとは思います」
突然、ストライカーの音声がフラットなトーンに戻る。
いきなりのクールダウンに、オレは思わず拍子抜けした。
「おい……なら、どうしてそんな怖いことを言ったんだ?」
「そうなる可能性があると言うことを認識して、下手に手を出して欲しくなかったからですよ」
「そんな危険なもの、こちらから願い下げだ……」
「了。それでいいのです。ですが、手を出そうとしても無理かも知れませんが」
「……どういうことだ?」
「圧倒的に、量子の個数が極小なのですよ」
「数が少ないということか?」
「了。今回、発見したのもたまたまで、相当に運が良かった……あるいは悪かった。変な量子を調査しだしてから、一回しか見つけられていません。今も安全のために調査してますが、発見はなし。ですので、発見出来たのは稀だったと判断しました」
「けど、数が少ないと言っても危険なんだろ?」
「了。ですが、もし量が少なければ被害も限定的で、世界を……ひいては、宇宙を改変することなど出来ないと推測します」
「どういうことだ?」
「例えば、反物資があり、1モル同士の接触は核にも匹敵しますが、一個の原子同士だと、影響は極めて小さく、実質的に無視できる程度ということです」
「え? なに? 一モル? 原子? なんの話?」
「つまりは、火薬がドラム缶一杯あれば大爆発する。しかし、ほんの一粒 ならパチッと弾けるだけで大したことないですよね? この粒子も、それと同じです。数が少なければ、そこまで危なくはないのです」
「はじめから、そう言ってくれ……」
「……了。ですが、もしかしたらですが、わたしがこの世界に来たのは、この量子によるものかもしれませんね」
「え……オマエのいた世界にもそんな量子があったのか?」
「いえ、このような量子の観測報告など聞いたことはありませんよ。ですが……ひとつだけ、可能性が考えられます」
「それは?」
「この量子が「閉じた紐」であれば、限りなくゼロに近い確率ですが、可能性があるのです」
少し補足。
モルとは
「原子や分子は種類ごとに重さが違うから、それを揃えて扱いやすくするための単位がモル」 って感じかな。
例えば、炭素(C)と酸素(O)は1個ずつで比べると重さが違うけど、1モル(6.02×10²³個)で揃えると「炭素は約12g」「酸素は約16g」と、扱いやすい数値になる。
だから、モルは「数えるための単位」でもあり、「重さを揃えるための基準」
うん、書いてる作者も、ある程度しか理解してないので、こんな感じです。
とかしか、いえません。
ごめんなさい。
あとは、気になるのであれば個人様でお調べください。m(_)m
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