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第五十七話 『ダンスパーティ』

 式典が終わり、オレたちは屋敷に戻った。


 しかし、戻ったところで休む暇などない。

 なぜなら、屋敷の大ホールでこれからダンスパーティが開かれるからだ……


 そこには、ブラックバード家を筆頭に招待された貴族たちが一同に介する……

 オレも姉さんも、これには辟易としていた……


「「ああ……気が重い……」」


 姉さんと同じセリフをオレも吐いていた。


「はは……姉さんもですか……」


「そりゃ、そうでしょ……なんで、望んでもないことをしなきゃならないのよ……まったく……はぁぁぁ」


 ほとほとうんざりしている姉さんは深い溜め息を吐く。


「さぁさぁ、何をしているんです。お二方! 早くお召し物を着替えてくださいっ! でなければ、わたしどもが叱られますっ!」


「………」


 なんだろうか?

 この屋敷の使用人たちは、使命感より保身的な考え方の人が多くない?

 そう思わずにはいられなかった……


 でも、たしかに他の人に迷惑をかけるわけにはいかない。


 そう思うと、自然と使用人達に素直に従おうと思えたのだった。


「はやくっ! ケーニッヒ様。ふふ。今回はどのドレスがいいか、何着か試しましょうね」


 ――ゾクッ!


「ヒッ……ま、また……? どれだけ、着替えればいいのよ……」


 前の着替えの時に何があったんだ……

 なにか、姉さんが怯えているのだが……


「衣装部屋で、なにかあったんですか? ねえさん?」


 オレは少し気になり聞いてみた。


「え……う、うん……ボクは何がいいかなんて分からないから、適当に選んでもらっていたらね……『これも着てみましょう』とか、『やっぱりこれもいいかも、着替えましょう』とか……最終的には下着まで履き替えさせられて……言われるがままだったの……それを思い出したんだ……」


「うへへ……これがいいかも、じゅるり……」


「………」


 うん、絶対に着せ替え人形になっているな……


「では、いきましょうか、ケーニッヒ様、うへうへ、うへへ」


「ひっ! フィ、フィルゥゥゥ! 助けてっ!」


「………そ、それでは、わたしも着替えがありますので、が、がんばってっ!」


 使用人に引きずられていく姉さんをオレは切り捨てた。


「フィルのはくじょうものぉぉぉ!」


 衣装部屋に続く長い廊下に姉さんの絶叫が響いたのだった。


 いつまでも、お健やかに……


 ――ブッシュボーン家、大ホールで。


 大ホールの天井は高い。

 重厚なシャンデリアが煌めいていた。

 それは、歴史を感じさせる精緻な装飾が施されていた。


 床には磨かれた大理石が敷き詰められている。

 足音一つひとつが響く。

 壁には長い歴史を物語る絵画や古い盾が飾られている。

 貴族たちは格式を守りながら談笑していた。

 華やかなドレスやきらびやかな衣装をまとっていた。

 各々、優雅に立ち振る舞っている。


 だが、どこか緊張感を漂わせる者たちの視線も感じられる。


 会場には100人ほどの貴族が集ている。

 執事なども含めると総勢150人ほどになるだろう。

 

 華やかな衣装に身を包んだ貴族たちは談笑していた。

 しかし、どこか緊張感を漂わせていた。


 その中心に、今回の主賓であるアルトメイアの姿があった。


 彼が伯爵となることで、取り入ろうとする貴族たちが群がっていた。


 しかし、まだ十歳ほどの子供にへつらうことに躊躇する者もおり、どこかギクシャクしている。


 父・グランバドルはブラックバード家の面々と談義をしており、この場はアルトメイアに任せられていた。


 遠くから兄を眺める。

 すると、兄さんは明らかに辟易としていた。


 その姿を見て、兄に功績を押しつけたオレは、少しばかり罪悪感を覚えた。


 そんなオレにも、貴族たちが多少話しかけてくる。

 兄ほどではないが、それでも正直うんざりする。

 だが、さすがに本気で子供の関心を引こうとする者がいないのが救いだった。


 姉さんにも貴族たちが群がっていた。

 だが、その目的はまた別のようだった。


「……どうです? 一度、我が息子とお会いになられませぬか?」


 婚姻の話を持ちかける者まで現れる。


 オレにも同じような話が舞い込んできた。

 だが、丁重に「時期尚早ですよ」と断っている。

 本当に勘弁してほしい……


 そこに、使用人におもしろ……いや、厳正に選ばれたであろう衣装を纏った姉さんがいた。


 薄い黄色を基調に白とのコントラストが可愛らしいドレスだった。

 髪もきっちり結われ、ツインテールにされていた。

 

 似合っている……なんて言ったら、ぶっ飛ばされそうだから黙っておこう。


 そんな姉さんも全く慣れていない様子で、


「え……ボ……じゃない、わたしにはまだ早いです!」


 と必死に断っていた。

 しかし、そう簡単に逃がしてはもらえない。


 その様子を見ていた、姉さん大好き……であろう使用人(先ほど、お色直しに引きずっていた者)が見かねたのか、姉さんに代わり丁重にお断りしていた。


「わたくしの……いえ、ケーニッヒ様はまだ修学中であり、そのようなお話は時期尚早かと。ですので、早くわたしのものに……失礼、お引き取りを」


「………」


 ……たまに、本心が漏れている気がするのだが……

 気のせいだろうか?


 まぁ、そんな調子で時間は過ぎていった。

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