第五十四話 『演説』①
広場に集まった民衆の間で、アルトメイアの名前が囁かれていた。
「やっぱり、あれが次期領主さまか……ほんとにまだ子供じゃねぇか。」
「でも、あんなに小さいのにお強いよね。しかも、かわいいっ!」
「ほんとだ、あ~ん、アルトメイア様ぁ~」
とショタのお姉さまたちが色めき立っていた……
「でも、あんな子供で大丈夫なのか?」
「なにいってやがる。あの子のお陰で街がさらに平和になったっていうじゃねぇか。それを喜ぼうぜ」
ざわめきの中、アルトメイアは少しだけ照れる。
そんな顔を浮かべていた。
それでも、民衆の期待と愛情が感じられる。
魔物討伐の功績がなければ目立つことが少ないはずだった。
その彼が、こんなにも注目を浴びる。
そのことが不思議で、少しだけ肩をすくめて歩き続ける。
その先に、父、グランバドル・ブッシュボーンが立つ壇上が見えた。
アルトメイアの顔が自然と引き締まる。
「次期領主に向けた、父の演説か……」
アルトメイアの静かな声が耳に入る。
すぐに、その緊張感が広場全体に広がる。
民衆の期待が高まっていった。
アルトメイアが壇上に立つ。
すると、ひときわ大きな歓声が上がる。
その声は、ただの賑やかなものではなかった。
確かな希望と信頼を感じさせるものだ。
だが、その歓声を静めるように、グランバドルが手を挙げる。
「静かにっ!」
その一言に、広場は一瞬にして静まり返る。
息を呑むように静けさが広がった。
そして、グランバドルは威厳を持って、ゆっくりと口を開いた。
「民よ、今ここに集いし者たちよ。今、我が子が次期領主となり、この街の未来を切り開く時が来た」
彼が手に持った魔道具から、静かな音が響き渡る。
彼が手に持った魔道具から静かな音が響き渡る。
増幅された音は、遠くの民衆にも届く。
そのように調整されていた。
いわゆるマイクの役割を果たしている。
まるで魔法のように、広場に声が響き渡り、演説の始まりを告げる。
「聞け、我が街の未来を!」
その言葉に、民衆は一層静まり、期待を込めてその後の言葉を待った。
父の演説は、こう語り始めた。
その昔、この辺りにはかつて大型魔獣が生息しており、人々は到底住むことができなかった。 それを忌避した皇帝陛下は、我が先祖「バルバトール・ブッシュボーン」に命じ、このグリムヘッド・M――ブロッサム1/12(ワン・トゥエルブ)を貸し与えた。 こうして、この地の開拓が始まった。
そして、大型魔獣の討伐が終わると、開拓と安全確保が進み、今の平和な街が成り立ったと語った。
そして――
「今、まさにその先祖の名を受け継ぎし英雄が、この場所に立っている!」
グランバドルが声を張り上げる。
すると、広場の中でざわめきが広がる。
民衆の間からは、期待と誇りに満ちた視線が集まる。
「皆も耳にしたことだろう。数多の凶悪な魔物を、わずか十歳の子供が一人で倒したという噂をっ!」
彼の言葉に、歓声と驚きの声が交わる。
人々はその勇敢な子供、「アルトメイア・ブッシュボーン」。
その名前を再確認し、その英雄的な行いに心を打たれている。
「そう、それが我が息子、アルトメイア・ブッシュボーンだ!」
グランバドルが壇上を指差す。
そこにアルトメイアの姿が明確に視界に入った。
周囲の民はその若き英雄に目を奪われ、感嘆の声を漏らす。
「わたしはこの功績を、このグリムヘッド・M、そして家の継承を持って報いたいと思うのだが、皆の者はいかがだろうかっ!?」
その問いかけに、民衆の歓声が再び巻き起こる。
「アルトメイア!」という叫び声が一段と大きくなり、広場に響き渡る。
「さすがに今すぐ家の継承というのは時期少々であるため、これより十分な教育を終えた後になる」
グランバドルは少し間を取り、慎重に続けた。
民衆は息を呑んで次の言葉を待つ。
「グリムヘッド・Mに関しても、実際は十五歳を超えてでなければ、運用を認められない……がっ!」
ここで、グランバドルは一気に力強く言葉を放った。
民衆の視線が一斉に集まり、静けさが広がる。
「皇帝陛下の許しを得て、これから行う予定であるっ!」
その宣言に、広場中から歓喜の声が沸き上がる。
「さすが皇帝陛下!」と賛同の声が飛び交う。
さらにその信頼を強めていった。
「それに伴い、我が子爵家は伯爵家へと陞爵が決まったっ!」
グランバドルの言葉に、再び祝福の歓声が上がる。
アルトメイアの栄光が、今や確固たるものとして広がっていく。
「我が領地はこれからも益々繁栄をしていくであろうっ!」
その一言が落ちると、会場は熱気に包まれた。歓声が湧き上がり、民衆は口々に喜びの声を上げる。誰もが未来への希望と誇りを抱き、互いに顔を見合わせていた。
グランバドルはその様子を満足げに見渡し、さらに声を張り上げる。
「さらにっ! 喜ばしい発表がある! これは、ここにいるアルトメイアも知らぬことだが――」
一瞬、場が静まる。
「――あのブラックバード家の長女との婚約を、今、ここで発表することを宣言する!」
「えっ……」
兄さんの顔が一気に凍りついた。
オレも、姉さんも、言葉を失った。
呆然としているオレたちを他所に父の演説が続く。
「我が家も伯爵家となり、同じ伯爵同士として手を取り合い、これからの発展を共に期待する所存である!」
言い終えると同時に、民衆からの歓声がより一層強くなるのだった。




