第四十八話 『無邪気な少女』①
オレは悲鳴が聞こえた路地に向かった。
そこには、身なりの整った二人の男が立っていた。
一見すると悪党には見えないが――
一人は少女の腕を掴み、無理やり引き寄せようとしている。
少女は必死に振り払おうとするが、力では敵わない。
男たちは冷ややかな表情で、それどころか余裕すら感じられた。
「大人しくして下さい……」
「いやよっ! 離してよっ!」
「はぁ……お手を煩わせないでください」
少女が叫び、男がさらに強く腕を引く。
物陰から見ていたオレは、一瞬迷う。
(助けるべきか?)
「いぃぃやぁぁ!!?」
――だが、少女の必死の抵抗を見た瞬間、迷いは吹き飛んだ。
オレは駆け出し、そのまま男の腕を弾く!
驚いた男が僅かによろめく間に、少女の手を引き、一気に走り出した。
「わっ……」
「おい、待てっ!」
背後で怒声が飛ぶが、振り返る暇はない。
「えっ……? きゃっ!? ちょっと――!」
足元の装甲が起動する。
人工筋肉がピンと張り、メカニカルギアが唸る。
次の瞬間、オレは壁を蹴り、一気に跳躍した。
「へ?」
少女の口がぽかんと開き、目を見開く。
そのまま体勢を変え、お姫様抱っこにしてさらに加速。
アーマーの人工筋肉が軋み、メカニカルギアが高速回転する。
一歩踏み込むたび、弾かれるように加速し、屋根を飛び越え宙を駆ける。
「わっ、すごいすごいっ! あはは!」
無邪気に笑う少女。
「……そんな状況じゃないだろ……」
背後の追っ手が小さくなっていくのを確認し、オレは速度を落とす。
人通りの少ない路地へと降り立った。
――逃げ切った後
「……ぷっ……あははっ!」
急に少女が笑い出す。
「ねぇ、なにあれ? どうやったの?」
屋根を飛び越えたことを言っているのだろう。
「秘密だ」
「えー、その鎧の力?」
「……そうだ」
適当に答えて、オレは答えるのを避ける。
「ふーん……そんな魔術具があるのねぇ」
少女はオレをじっと見つめ、にっこり笑った。
「ねぇ、それくれない?」
「……断る」
「あはは……ダメかぁ~まぁいいわ。それより、助けてくれてありがと。えへへ」
少女は笑顔でお礼を言ってきた。
その笑顔に、オレは思わずドキッとする。
青く長い髪が揺れ、整った顔が笑うと、驚くほど可愛く見える。
赤と黒のコントラストが映える服装と品のある所作――
どう見ても、貴族か商人の娘だろう。
(……一体誰だ?)
考えていると、彼女がくるりと向き直り、にっこりと笑った。
「ねえ、このあたり詳しいの? 案内してよっ!」
答える間もなく、彼女はオレの腕を軽く引っ張り、歩き出した。
「お、おい……」
――こうして、オレは聞きたいことも聞けないまま、彼女に引きずられていった。
おかしなことになった……
なんでオレはこんなことしているんだ……?
「ねぇ、あれはなに?」
そう彼女は指を指す。
指をさした方向には甘い匂いがただよってくる。
どうやら、焼き菓子を売っている店のようだ。
オレが「焼き菓子だな」というと、勝手に注文して既に手に持つ。
「……おまえ、金は?」
「そんなの持ってないわよ。いつも勝手に払ってくれてたんだから」
当然のように言い放つ少女。
オレは深々とため息をつく。
仕方なく懐からコインを取り出し、代金を払った。
その間に、少女はすでに店先の焼き菓子を頬張っている。
まるで何事もなかったかのように、楽しげに店の品々を眺めていた。
「おまえな……」
「ん? なに?」
あまりにも無邪気で悪びれる様子もない。
(……まぁ、いいか)
オレは小さく首を振り、次の出店へと向かう彼女を追いかけた。
しかし、楽しそうにする彼女を見るのもなんだか悪い気はしなかった。
そんな折、
細い路地裏で、何やら怪しい人影が、小さな子供を捕まえようとしているのが見えた。
助けようと足を踏み出そうとした瞬間――
「っ!」
横を走り抜けた彼女が、帯刀していた剣を抜き放つ。
鋭い斬撃が、闇の中を切り裂いた。
はやっ!!
その速さに、オレは驚かされてしまう。
男はそのまま腕を切りつけられ、痛みでその場に膝をついて蹲った。
その男の後ろから、六人ほどのよく似た風体の男たちが現れ、怒りの表情を浮かべながら近づいてくる。
「お~お、よくもやってくれたね、お嬢ちゃん」
冷静な口調で、一人の男が言い放つ。
「これはひどいわねぇ。どう責任取ってもらうのかしら?」
少しカマっぽい口調の男が続けて言う。
「……そんなの、あんたたちが悪いんでしょっ! こんな年端もいかない子供に、何してるのよっ!」
「おやおや、お嬢ちゃん。あなたも立派な子供よ。それに、この子達は売られてきた子たち。私たちにとっては立派な商品なのよ。わかるかしら?」
男は冷ややかな目で彼女を見て、続ける。
「そして、この子が逃げ出したから、私たちは仕方なく捕まえなければならないの。躾をしないといけないのよ、おわかり?」
男が、じり……と歩を進める。
「それとも、お嬢ちゃんも『商品』になりたいのかしら?」
すこし、書き方を変えて短文でテンポよくしてみました。
その方が携帯でも読みやすいかなと思うのですがどうでしょうか?
それに、文が単純化してわかりやすいかなと思います。
ただ、雰囲気とかが壊れる可能性もあるので、説明臭いところだけにしています。
もし、なんか違うなと思っていればお教えください。
もし、この方がいいというのであれば、前に戻って直していこうかなと思っています。




