表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/199

第四十六話 『英雄祭直前』

「はい、一、二、一、二、一、二、二、三、はいっ!」


 ――ガッ!


「くっ……! わわわっ!」


 ――ドサッ!


「ちょ、ちょっとぉぉぉ!」


「……いたた……」


「……早くどいてくれないかなっ?」


「ご、ごめん……姉さん……」


「ほらっ! 早く立ちなさいっ!」


 ダンスの先生に急かされ、オレと姉さんは慌てて立ち上がる。


「フィル様、そこのステップが早すぎます!」


「くく……フィル、怒られた」


「ぐっ……」


「ケーニッヒ様は逆に遅すぎです!」


「うげっ……しゅん」


 俺も姉さんも、どうにもダンスが上手くできていなかった。


(……これ、本当に当日までに仕上がるのか?)


 不安を覚えつつも、先生の厳しい指導は容赦なく続いていく。


 ――休憩時間


 ……ゴッゴッゴッ!


「「……ぷはぁぁぁ! やってられるかぁぁ!」」


 オレと姉さんは、息を切らしながら同時に叫んだ。


「「なんでっ! あそこのステップがあんなに難しいんだっ!」」


 どうやら、オレたちは同じところでつまずいているらしい。


「「はぁぁぁ……ダンスなんてできなくてもいいのに……」」


「まったく……」


 最後まで愚痴が重なる。


「はは……そういうワケにもいかないさ」


 兄が苦笑しながら、水を飲む俺たちを見ていた。


「貴族との付き合いも増えるだろうし、ダンスは避けて通れないぞ」


 オレと姉さんは顔を見合わせ、同時に肩を落とす。


「ははは……しかし、ケーニッヒはともかく、フィルはダンスなんて軽くできると思っていたんだがな」


「何故です?」


「あれだけシミュレーターで仮想戦闘をやってるんだから、ダンスもすぐできるようになると思ったんだけどね」


「戦闘とダンスは違いますよ……」


「そうか? 結構似てるところもあると思うがな。たとえば、剣の踏み込みや、体をひねりながら交わしてからの打ち込みとか……。ステップが似てるとは思わないか?」


「……言われてみれば、たしかに……?」


 剣を振る時の重心移動やステップの使い方……確かに、似ているかもしれない。


「ま、なんにせよ。日にちもないから、頑張らないとな。二人共」


「「は~い」」


 オレと姉さんは同時に返事をする。


(……仮想戦闘か……)


 兄の言葉が妙に引っかかる。もしかして、戦闘の動きを応用すれば……?


 ――試してみよう。


 ―――英雄祭 一週間前


「「だぁぁぁぁぁぁ! で、できたぁぁぁ!!」」


 ギリギリだったが、オレと姉さんはなんとかダンスを仕上げた。


 オレは兄さんのアドバイスのおかげで、姉さんより先に踊れるようになっていた。……が、姉さんに付き合わされて、結局最後まで練習に付き合う羽目になった。


「フィル……フィルゥゥゥ! ありがどぉぉぉ! あんたが教えてくれなかったら……ボクは……ボクはぁぁ……うわぁぁん!」


「き、きたないっ! 鼻水拭いてくれっ! 姉さんっ!」


 ――ズビッ!


「オレの服で拭くなぁぁぁ!!」


 ……とまぁ、こんな感じでドタバタはあったものの、なんとかなった。



 その夜――


 ダンスの練習を終えて一息ついた俺は、前々から考えていたことを実行することにした。


 ストライカー……移動させないといけないんだよな……


「約束はなかったことに……出来ないよなぁ……」


 ……それだと本当に勝手な行動を起こしかねないしな。


「はぁぁぁ……仕方ない」


 夜空を見上げ、天候を確認する。雲は少なく、星がよく見える。


(これなら、運搬のテストにはちょうどいい)


 オレはストライカーのもとへ向かい、街の中央へどうやって運ぶか、その方法を試すことにした。


「お前、飛べればいいのにな」


 何気なくそう口にした俺に、ストライカーが即答する。


「解答:飛行は可能」


「えっ……なら」


「但し、出力不足のため、高速移動は不可」


「移動はできるんだな!? なら……」


 ストライカーの説明によると、グラビトンのペア粒子である 「グラビティーノ」 というものが存在する。それは 反物質ではなく、グラビトンとは対極にある粒子 なのだそうだ。


 グラビティーノは重力と逆の特性を持ち、飛行が可能。


 また、負のエネルギー場に干渉して取り出した量子が、必ずしも反物質化するわけではない とのこと。

 仮に反物質が発生したとしても、クァンタムコンバーターで即座に変換できるため、安全性に問題はない。


 ……が、現在の出力では、わずかに浮く程度が限界 だった。


 そこで、イオンクラフトを併用することで、最大六メートル程度の浮遊が可能 になり、エアスラスターを使えば滑空もできる という。


「まあ、それでも移動の選択肢は増えたか……よし、試してみるか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ