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第四十一話 『ストライカーとケーニッヒ』

 ストライカーのいる場所までは、屋敷の中庭を通る。

 屋敷の横をすり抜け、坂になっている林の道を抜けると開けた場所に出る。


 そこには、一際大きな木が根を張り、静かに風を受けていた。


 この場所は誰にも知られないようにしていた。

 オレの唯一の逃げ場だった。

 屋敷の者でも滅多に訪れずれない。

 何もない、こんな場所にわざわざ来る人はほとんどいない。


 この場所のことを知っているのは、兄さんとチスタだけだ。

 二人とも秘密にしてくれているし、信頼できる。


 だが……姉さんは違う。

 オレは姉さんのことを何も知らない……


 小さい頃もほとんど顔を合わせなかった。

 夕飯の時くらいしか会う機会はない。

 しかし、それもすぐに一人で食べるようになり、次第に全く顔を合わせなくなった。


 姉さんは自分から誰かと仲良くしようとする気がないように見えたし、接点もなかった。


 だから、この後の展開が怖い……

 もし姉さんが誰かに喋れば、もうどうすることもできなくなる。


 最悪、オレはこの家をストライカーと出ようと思っていた。


「んふふ~ん♪ ふふふ~ん♪ ……ふんんふ~ん♪」


 そんなオレの思いをよそに、姉さんは鼻歌を歌いながらご機嫌な様子だった。


 すごく機嫌が良さそうだな……

 ストライカーのことがそんなに気になっていたのか?


 よくわからないな……姉さんは……


「警告:止まってくださいフィル!」


 姉さんをストライカーがいる場所まで案内する。

 その時、突然ストライカーが警告してきた!


 どういうことだ?


「おい、どうしたんだ?」


 ストライカーの視線が――ケーニッヒ姉さんに向いている。


 まるで警戒するように、赤い警告灯が僅かに点滅しているようだった。


「警告:識別不能の対象を確認……危険因子の可能性を検討……!」


 ストライカーの機械的な声が、どこか動揺しているように聞こえた。

 今まで、オレ以外の誰が近づいても、ストライカーは冷静だったはずだ。

 兄さんも、チスタも、この距離まで連れてきたことがある。


 なのに、なぜ姉さんだけが引っかかる?


「おい、ケーニッヒはオレの姉さんだ。脅威じゃない!」


 ストライカーの光学センサーが、姉さんを何度もスキャンするように点滅している。


「否:識別……不能……」


「何よ、ボクそんなに珍しい?」


 ケーニッヒが腕を組んで、ふふんと鼻を鳴らした。


 姉さんは、ストライカーの警戒を気にしてはいない。

 まるで宝物を見つけた子供のような目をしていた。

 瞳が輝き、頬がわずかに紅潮している。


 その顔は完全に何か面白いものを見つけて、ワクワクが抑えきれないように見えた……


「ねぇ、これ、魔道具? それとも……もっとすごい何か?」


 姉さんは興奮を抑えきれないように、ストライカーをじっと見つめる。


 まるで――メカオタクが、未知の機械を前にした時のような反応だった。


「警告:識別不能の対象を確認……行動制限がない場合、敵対勢力と判定し、排除対象として対応する」


 ストライカーの声が、一層鋭く響いた。


「――なっ!?」


 思わず息を呑む。


 排除対象? どういうことだ!?


「……っ、おい、待て! 姉さんは敵じゃない!!」


 オレは慌ててストライカーの前に立ち、両手を広げた。


 ストライカーのセンサーが不安定に点滅している。今にも判断を下しそうな様子だった。


「おー、物騒だねぇ」


 そんな中、ケーニッヒは相変わらずワクワクした様子で、ストライカーを観察していた。


「警告! 警告! 排除体勢にモード移行。これより……」


「まてっ!! オレの姉さんだから、落ち着けっ! 別に何もしないからっ!」


「あはは……これ、すごいなぁ。どうなってるんだろ?」


「姉さんは、もうちょっと「じっ」としててっ!」


「排除……」


「だから、待てってっ!」


 ストライカーは危うく攻撃態勢に入るところで、姉さんはそんなの気にもせず目を輝かせている。


 ああ、もうむちゃくちゃだよっ!


 ――しばらく、二人をなだめた後。


「……脅威ではないと判定。平常モードに移行します」


「はぁぁぁ……良かった」


 あれから、ストライカーはなかなか警戒を解いてくれないし、姉さんは好き勝手動くし……ほんっとにっ!


 いい加減にしてほしいぃぃぃっ!


「で、フィル、これはなんなの?」


 いきなり、その質問がきますか。


 そりゃそうだよな。


 こいつ自体が異質すぎるんだよな……


 オレだって全部を説明できない……


 けど……オレの運命を間違いなく変えてくれた相棒だ。


 それだけは、はっきりと自信を持って言える。


「こいつは「タクティカル・ストライカー」えーと……以上っ!」


「え……? それだけ?」


 これ以上なんて言うんだ?


 別の世界から来た、他文明の超技術で作られた強力な人型兵器とかしかないがっ!?


 そんなの分かるのか?


「問:それより、なぜわたしのセンサーに探知されなかったのか? この者は何をしているのか? それがわたしは気になります」


 え……探知されない?


 どういうことだ?


 オレはストライカーの言葉に唖然とするのだった。

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