第三十話 『ストライカーの憂鬱』
兄さんの魔術を反映したシミュレーターが完成し、早速試してみる。
ランクがEXステージだとか、どうしてこうなったんだ?
「解答:対比するものがないため、ランク付けは不可能」
とのことだ。
だが……『Perdurabo~Magus Rift:The Awakening~』などと……なんともゲームのタイトルみたいなのを付けやがった……
元々実写映像だったからまさに洋ゲーチックになっていて、少し笑った……
だが……中身はなんともしっかりと模擬戦になっていた。
フィルがヘルメットをかぶると、瞬時に広がる仮想空間。
目の前に広がるのは、草木もない荒れ地だった。
灰色の空に不規則に流れる雲、そこに舞う風は重く、冷たい。
その景色が目に飛び込むと、まるで現実のように感じられた。
「Open the World!」
その掛け声が響くと同時に、仮想空間内に重低音が鳴り響き、荒れ地の景色が広がり始める。
そして、目の前に現れるのは――
出てきた相手は、髭を生やし、手には魔術用の杖を握った老年の魔術士。白髪と皺だらけの顔に、鋭い目つきが印象的だ。
いかにもベテランの魔術士らしい風格が漂っていた。
しかし……意外にも強い……
避けるので一杯一杯だ……
これが兄の魔術を元にしていたというのならば、どれだけオレは手加減をされていたのかが分かる。
「兄さん……こんなに強かったんですね」
と、改めてその実力に驚き、感動が胸に込み上げる。
兄の魔術を体験し、今まで知らなかった一面を垣間見たような気がした。
オレは本気の兄さんを知らなかった。
このシミュレーターには感情の一切がない。
それだけに本当の実力が現れている。
すごいなぁ。
そんな短い感想しか出なかったが、オレはどこか誇らしげでもあった。
そして――オレは負けた。
だが、その敗北は無駄ではなかった。
兄の魔術の力強さを実感し、自分もまた一歩成長したような気がした。
「はぁ……これはすごい。いい練習になりそうだよ。ストライカー」
「了――恐縮です。ところで、フィル。」
ストライカーは少し間を置いて、どこか慎重な様子で続けた。
「問:シミュレーターを試した感想として、何か違和感や不具合を感じませんでしたか? 威力の調整や影響範囲の異常など、何でも構いません」
「い、いや、一回やっただけじゃ、判断はつかないかな……何度か試してみて、もし変だと感じたら教えるよ。それでいいか?」
「了――それで構いません」
フィルは少し戸惑ったような気もしたが、ストライカーがこうして事細かに確認してくるのは珍しいことだと感じた。
たしかに、このシミュレーターのプログラムを初めて作ったんだろうし、完成度が気になるというのは分かるが……それにしても、シミュレーターよりストライカーの方に違和感を感じるよ。
「なぁ、お前、少し変じゃないか? どこがどうと言う訳じゃないが、今はおまえに違和感を感じるよ……」
「……そうですね。さすが人というものはこういう時にはするどいですね」
「えっ……?」
フィルは思わず目を細め、ストライカーを見つめた。
普段は冷静で無駄のない言動をするストライカーが、今日は少し気になる様子を見せている。
普段とは違う慎重さに、フィルはなんとなく不安を覚えた。
「いい機会です。わたしはフィルに少し話しておくべきだと判断します」
ストライカーの言葉には、普段の冷徹さに加えて、何かしらの深刻さが感じられる。
その真剣な顔を見たフィルは、胸の中で何かが引っかかるのを感じた。
「以前から、少々違和感を感じていたのですが、わたしのエエネルギー変換機構に不具合があり、現在の状態では出力が最大でも四割弱までしか上がらない状態です」
「……どういうことだ?」
「少々長くなりますが、いいでしょうか?」
「構わない……」
その言葉に、フィルは一瞬の間をおいて答えた。
ストライカーがこうして重要な話をするのは珍しい。
何か大きな問題があるのだろうか。
フィルは不安を覚えながらも、うなずいてその話を聞く決心をした。
Perdurabo
これが、誰のソウルフルネームかわかる人がいれば、かなりなマニアですね(*´∀`*)




