第二十六話 『安堵』
コロッサス・オグマの巨大な体が動かないことを確認すると、オレたちは安堵の表情を浮かべ――
「……はは……あはは……あはは」
オレが笑いだしたのがきっかけとなり、皆もどこか安心したのか、おかしくなって笑い出す。
「な、なに笑っているんだ、はは、フィル、あははは」
「ア、アルトメイア様もですよ……ふふ……あはは」
「「「「あはははは」」」
しばらく、オレたちはその場に腰を下ろして笑っていた。
――数分後。
「……終わったな」
「……そうだな」
アルトメイアが呟くと、フィルに向かって話しかける。
「その……なんだ。悪かったな……それから……その……ありがとう、助かったよ、フィル」
顔を背け、バツが悪そうにフィルに謝るアルトメイア。
「この度はご助力ありがとうございました、フィル様。アルトメイア様に代わりお礼申し上げます」
チスタも深々と頭を下げた。
オレはどこか気恥ずかしくなり、話題を変えた。
「……そうだ。コイツどうしようか?」
「そうでした! というよりも……あの、わたしのこの衣服はどうしたらいいのでしょうか?」
「え、ああ……えっと、ストライカー、どうしたらいいんだ?」
「解答:返却を希望」
「おい、ここでかっ!?」
「了――何か問題でも?」
「そら……チスタは女性だし……その、場所が場所だ……」
「解答:問題無。わたしの機内で着替えれば良いのでは?」
「ま、ま、そうかもな……なら、次はオレもか?」
「解答:同」
「わかったよっ! じゃあオレもインナーもか?」
「解答:必要がないのであれば」
「……何があるかわからないし、オレは屋敷に戻るまでは着てようか」
「了――それでいいかと」
その会話を聞いたチスタとアルトメイアは何を言っているのか分からず、「キョトン」としていた。
ああ……ほんと、なんて言い訳しようか……
と考えながら、チスタに説明して機内で着替えるように教えた。
脱ぐときは、首の後ろのボタンを少し長めに押したままにしておいてとも伝える。
その次にはオレの番になる。
チスタが着替えている間、簡単に兄に一応の説明を行った。 オレの話を聞くと「へぇ!」とか「ほぉ」とか、すごい興味を持ったみたいだ。
――そして、さらに数分後。
そして、オレの着替えも終わり、これからどうしようかと考えていると、兄が口を開いた。
「その……まずは謝らせてくれ。フィル」
兄の眼には後悔と憤りが混じった顔だった。
「……もういいよ。終わったことを考えるくらいならこれからの事を考えようよ。兄さん」
「だが……これはケジメだ。その……フィル、悪かった、許してくれ」
真摯に謝る兄にオレはかける言葉が見つからなかった。
ただ……しばらく兄の姿を見つめただけだった……
そして、オレはポケットに違和感を感じ、思い出した。
それは木の根元で見つけた、兄の巾着だ。
その中身は……言わずもがな……
オレはそれを手に取り、兄に言葉をかけながら渡す。
「その……もう、なくさないでくれ……」
「これはっ!!? ……見つけてくれてたのか……ふふ……ははは……うぅ」
兄はオレから渡された、二度と戻らないかも知れないと思っていた大切なものを渡されて、大事そうに胸に抱え、声を殺しながら泣いていた……
「フィル……フィルッ!! 僕はっ!! 僕は……うあ……ううぅ……」
「兄さん……」
オレはさらに声を殺し泣いている兄を優しく抱きしめた……
「……ぐず……うっ……ずぅ」
チスタもオレたちの姿に、いつの間にか泣き出していたのだった……
――しばらく泣き続けた後。
少し落ち着いたかな。
オレも兄さんもチスタも気持ちが落ち着いたところで、これからのことを話そうとした。
「これ……どうしようか? 兄さん」
「……どうしよか? ……と言われてもなぁ。何かいい案があるか? チスタ?」
「わ、わたしに振らないでくださいっ! 分かるワケがないじゃないですか……」
「そうだよな……」
今知っているのは、この三人だけだし、何もなかったことにすればいいのだろうけど……
こんな状態だと、間違いなく何があったから調べられて、後で追求とかされたら、上手く言い逃れできるか分からないぞ……
それなら……
オレは一つの考えを兄さんに伝えてみることにした。
「ねぇ、兄さん……この魔物たちを倒したのは兄さんということにしないですか?」
「「えっ!」」
兄もチスタもオレの言葉に驚く。
「そ、それは……ダメだっ! これは全部フィルのお陰じゃないかっ! そんな功績を奪うような真似が出来るはずがないっ! 僕に取ってはひどい恥になるっ!」
「だよねぇ……」
「だよねぇ……ってフィル、おまえ、何を考えている?」
兄はオレの考えが全くわからないように聞いてきたのだった。




