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第二十五話 『タクティカル・ストライカー』

「くっ……まだ、向かってくるとか……」


 (どうなっているんだ!? ストライカー!?)


 オレは、兄の手前声を抑えてストライカーに尋ねる!


「解答:これは常識的な生物の範疇を超えていますね。一体どのような仕組みなのでしょうか? 並の生物なら既に皮膚や肉が飛び散り絶命しているレベルの攻撃ですよ。それが、まったく意に介さないとは、ほんと感嘆の念に堪えません」


 (いや、褒めるなよっ! オレたちの命が掛かってるんだぞっ!)


 ――ピピピッ!


「なんの音だ?」


 不意に響いた電子音に、オレは反射的に身構える。


 音は外にも漏れていたらしく、兄やチスタも不安げな表情を浮かべた。


「なんだ、この音……? チスタ、わかるか?」


「さ、さぁ……申し訳ございません……私にはわかりません……!」


 その時、ストライカーがあっさりと告げる。


「解答:アーマーの稼働時間が十分切った音ですね」


「おおおいっ! なんだそれっ!」


「解答:なんだと言われましても、今まで能力を開放していたじゃないですか? 当然の結果ですね」


「時間内に仕留められるか?」


「解答:不明。判断材料が不足しています。 提案:一時撤退し、私の位置まで退避することを推奨。制限時間内に十分帰還可能と推測」


「……二人とも連れて逃げられるか?」


「解答:問題なく可能です。 両脇に抱えて全力疾走すれば、目標地点までの到達は可能と推測」


「なら決まりだ! 兄さん! チスタ! 少し我慢してくれよ!」


「え、なんだ!?」


「えっ! またですかっ!?」


 オレは二人を抱え、ストライカーが導く脱出路に従い、全速力で撤退する!


「なっ! なんだこれはっ! 速すぎるぞぅ!」


「ま、またっ! キャーーー!」


 兄は唖然とし、チスタはまたかとばかりに悲鳴を上げる。


 オレは全力で逃げる!


 しかし、後ろからはコロッサス・オグマ(伝説的な巨人)が怒りを背負い、逃すまいと猛追してくる!


 だが、そんなものはお構いなし。普通ならばこのスピードでは走れない森の中を、ジャンプなどを駆使して疾走する。


「上、上、下、下。左、右、左、右――」


 そして――


 オレたちは乱魔石がある場所まで逃げおおせていた。


「きゃーーー! もういやぁぁ!!」


「うわぁぁぁ!」


 二人とも、うるさい……


「………」


 ま、まぁ、オレも突然こんなことされたら、こうなるかもしれないけどね……


「ここまで来れば、乱魔石で……」


 チラッと後ろを向き、コロッサス・オグマ(伝説的な巨人)を確認する。


 しかし――まったく何事もなかったかのように、平然とオレたちを追いかけてきたっ!


「えええっ!!! なんで乱魔石があるのにっ!」


「きゃーーー! そ、それは……あのオーガ、我を忘れて暴走しているのかも……!」


「………」


 そんなのアリか……


 このまま森を抜けてもダメじゃないのか?


 ――ピピピピピピッ!


 また電子音が鳴った。


 そして、ヘルメットの表示時間が「残00:55」になっていた……


 おいおいおい……もう時間がないじゃないかっ……


 あとちょっとで、森を抜けるというのに……


「………」


 いや……森を抜けても、この力が切れたら、ヤツに勝てるのか……?


 これじゃあ……時間いっぱいヤツを倒すのに使ったほうが良かったんじゃないか?


「くそぉぉぉ! なんとかしろよっ! このポンコツっ!!」


「否――その言い方は心外ですね、フィル」


 そう言うと、ストライカーはスムーズな動作で腰の供給チューブにピンプラグを接続し、腕を前に突き出した。


 ――ジジジッ……!


 腕部のスリットが展開し、内部から輝く銃口が露出する。


 次の瞬間、眩い光が奔る。


「照射――開始」


 ストライカーの両腕が瞬時に変形。装甲がスライドし、内部からエネルギー供給チューブが露出。


 腰部のピンプラグと直結すると、内部機構が高速で駆動し始める。


「ミューオン誘導レーザー、出力最大――臨界点突破」


 ピピピピ……!


 発射準備の電子音が響き、腕の先端に淡い光が収束していく。

 その輝きは次第に鋭さを増し、まるで空間そのものが歪むような錯覚を覚えるほどだった。


 そして――


 ズガァァァァッッ!!!!


 蒼白いレーザーが一直線に迸り、オーガの胴を正確に捉えた――!


「グオオオオオッッ!!!」


 レーザーが命中した瞬間、オーガの巨体がビクンと痙攣し、その表皮がジュウゥゥと焦げる音を立てて黒ずんでいく。


 だが、ヤツは止まらない。


「……効いていない!?」


「否――標的にダメージ確認」


 ストライカーは冷静に機械的な声で言い放つ。


 しかし、ヤツは狂ったように前進を続ける。


 焼け焦げた皮膚の下、筋肉が膨れ上がり、傷口を押し広げながら更なる一歩を踏み出した。


「……いや、違う」


 ストライカーが静かに分析する。


「解答:表面組織は崩壊。筋繊維の断裂が進行中。神経系統への干渉も確認――あと十秒も持ちません」


 その言葉通りだった。


 オーガは数歩進んだところで、突然膝から崩れ落ちた。


「グ……ゴ……」


 呻き声を漏らしながら、巨体がズシンと地面に沈む。そして――


「――動かない……?」


 完全に、沈黙した。


 ストライカーのレーザーは、ヤツの体内で致命的なダメージを与えていたのだ。


 ストライカーの砲塔は、なおも赤熱し、砲口からは白い煙がスゥッと立ち上っている。


「……処理完了。放熱モードへ移行」


 ストライカーが静かに言葉を発すると、砲塔の排熱孔からプシューッと蒸気が噴き出し、余熱が解放される。


 その音が次第に静まると共に、装甲の隙間から漏れていた赤熱した光も徐々に消えていった。


 最後に、ストライカーが微かに腕を振ると、装甲がスライドして元の形へと戻る。


「……放熱、終了」


 まるで何事もなかったかのように。

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