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第二十三話 『アルトメイアの想い』

「フィル……僕のかわいい弟……」


 生まれた時、君は僕の手を握ってきた……


 母はフィルを嫌っていたけれど、僕はフィルが好きだった……


 いつも、僕の後ろをついてきて「待って」と言ってくるフィルが、僕は好きだった。


 この石……


「ああ……どこかに落としたのか……」


 ……でも、いいさ。


 どうせ僕は嫌われた。


 フィルに……拒絶されたんだ……


 でも……できるなら、昔のように「兄さん」と呼んで欲しかったな。


 最後に呼ばれたのが別れの時だなんて、皮肉なものだ……


 ……それでも、僕は諦めきれず、こんな場所まで来て強さを求めようとしている。


 でも……それも無駄だろう。


 僕はここで死んでしまうのだろうから……


 残されたフィルやチスタに申し訳ないな……

 

 特にフィルには、迷惑ばかりかけてきた……


 ほんと……情けない兄でごめんな……フィル。


 もし、あの模擬戦からやり直せるなら……


 今度こそ、もっと上手くやってみせるから……


 あの時、オレたちがもっとまともに向き合えていたら、こんな風にならずに済んだかもしれない。


 ここを……切り抜けられたなら……


グルーム・ストーカー(死を追いかける者)」を一掃出来たのは良かったが……


 まさか「コロッサス・オグマ(伝説的な巨人)」と呼ばれるオーガに襲われるなんてな……


 運が悪かったかな……


「はは……」


 もう、僕には立ち上がる力も魔力も残っていない……


 あとは、死を待つだけか……


 あの勝ち誇り、にやにやと弱者をいたぶることに喜びを覚えているような顔に一矢報いたいが……


 そんな力も残ってないや……


 ……やるなら早くやってくれ。


 ――ゴスッ!!


 地面に倒れているアルトメイアを「コロッサス・オグマ(伝説的な巨人)」が力を抜いて蹴り上げる。


 そして、痛々しく転がるアルトメイアを見て、歓喜に打ち震えるオーガの顔が浮かぶ。


「ゴォォォ! グホッグホッ」


「……ぐはっ……ごふっ……はぁはぁ」


 はぁ……痛いなぁ……


 ……フィル……フィル……僕は……


 ――死にたくないっ!!


 その時、信じられない音が響いた。


「……スラッシュ! キィィィックゥゥッ!!」


 ――ズガガァァァン!!


 轟音が響き渡り、「コロッサス・オグマ(伝説的な巨人)」の巨大な体が空中に浮き、猛烈な勢いで吹き飛んだ!


 ――シュゥゥゥゥ。


 アルトメイアはその光景に呆気に取られた。


 目の前で信じられないことが起きた――巨人のようなオーガが、まるで紙くずのように吹き飛ばされていった。


 そして、その直後に飛び込んできた人物をアルトメイアは見ることになる。


 すでに降りてきて、アルトメイアの元へと走り出していたチスタも、その光景に呆然としていた。


「……すごい……ハッ! それより、アルトメイア様を!」


 一体、何が起こっている?  何が起こった?


 アルトメイアの目には、見たこともないフルアーマーを着込んだ騎士が飛び込んできて、キックを放ったとしか見えなかった。


 そして、そのキックが放つ威力は、常識を逸脱していた。


「アルトメイア様! ご無事ですかっ!?」


 チスタがアルトメイアを呼ぶが、アルトメイアは未だ呆然と立ち上がる体力もなく倒れ込んでいた。


「アルトメイア様! アルトメイア様!」


 何度も呼びかけるチスタの声に、ようやく「はっ」と我に返ったアルトメイアは、倒れたままチスタに顔を向けて答える。


「チスタ……?」


「はい、チスタです。アルトメイ……アさま……う……うぅ」


 アルトメイアの無事を確認し、チスタはその喜びと安堵からか、思わず涙を流してしまう。


「心配しました……アルトメイア様……今、回復します……う……ずっ……」


 チスタは涙をぬぐい、うつ伏せのアルトメイアを仰向けにして太ももに頭を乗せてに回復を施す。


「今この者が傷つきし――『キュア・ウーンズ』」


 チスタの手から青白い暖かな光がアルトメイアに注がれ、先程まで土色だった顔色に赤みが差してくる。


「すまない……チスタ。それより、あれはなんだ?」


 と、まだおぼつかない腕でフルアーマーを着込んだ者を指さした。


「あれは……フィル様でございます、アルトメイア様」


「えっ……!?  あれが……フィル?」


「そうです……フィル様がアルトメイア様を探すのを協力してくれたのですよ……」


 信じられない。


 だが、チスタの言葉に嘘はない。


 ――本当に、あれが……フィル?

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