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第十六話 『救出準備』

「この先ですっ! キャーー! この先の大きい木が目印です……ハァハァ」


「ここか……」


 ――ブシュゥゥゥ!


「キャーーー!」


 う、うるさい……一々うるさいな……


 オレは、チスタが指した場所にストライカーを止めた。


 けど……


「これ以上はストライカーじゃあ、入るのは厳しそうだな……」


「解答:焼き払えば問題……」


「ダメだっ! おまえ……過激だな……」


「恐縮で……」


「ほめてねぇよっ!」


「それは残念。ですが、わたしが中に入れなくはないですが武装の問題でやりすぎる可能性は否定できません」


「ちなみに、どれくらい?」


「解答:簡単に森を消滅させるくらいには」


「ダメだっ! 兄さんがいるんだっ!」


「了――では、ここでサポートします」


「そうしてくれ……」


 いま現状の装備の確認をするか。


 今はストライカーから貰ったスーツで問題はないはず。


 それに剣とナイフ……


「大丈夫そうだな。じゃあ……」


「待ってください! これをフィルに」


 ――カパッ。


 ハッチが開き、またヘルメットとなんだこれ?


 スーツ? しかもすごいゴテゴテしてるな……


「これは?」


「このヘルメットはセンサー各種にわたしとの連絡も取れます。そして、このスーツは『アマード・スーツ』対人、対兵器に開発されたものです。このスーツは人工筋肉とメカニカルギアにより、握力一トンまで出せます。その他に身体能力向上にジャンプ力が五メートル。薄い鉄板などは軽くパンチで破壊できます――ドヤッ! フフーンッ!」


「………」


 すごいドヤ顔を決めてきやがった……


 てか、一トン……オーバースペックすぎるだろ……


 チスタはオレとストライカーが日本語で話してることを理解ができず、尚且つ突然出てきたスーツに「ぽか~ん」とした表情を浮かべていた。


 まぁ、そうなるよな……ワケが分からないだろうしな。


「あ、あの……フィル様……大丈夫なのですか?」


「説明すると長くなるから、後でな。でも、大丈夫だから心配するな」


 そう言うと、チスタは「はぁ……?」と答えたのだった。


 そして、オレはストライカーに尋ねた。


「で、どうやって着ればいいんだ?」


「そのままスーツの上から着てください。あっ……」


「な、なんだよ?」


「いま着衣しているのをすべて脱衣してスーツの上に着てください」


 「うっ……」


 オレはチスタの顔を見た。


 そのオレの行動にチスタは「キョトン」としていた。


 だが、オレが理由を説明すると、チスタは顔を赤らめ、恥ずかしそうに体をそらしたのだった。


 そして……


「あ、あの……わたしくは向こうを向いていますので、お早めにお願いします」


 そら、そうなるよな……


「おまえ、わざとか……」


「思考中:なんのことでしょうか?」


「ああ、もういいっ! 早速着るよ!」


 そう言いながら、オレは来ている服を脱ぎ捨てて渡された『A(アーマード)S(スーツ)』を纏ったのだった。


「思ったよりも軽いな。それにぶかぶかだ」


「右腕にあるボタンを押して下さい」


 言われるままにボタンを押してみた。


 すると、空気が抜ける音がして体に圧着してくる。


「おおっ! すごいっ! 体がピッタリ密着して、まるで一体化したみたいだ!」


「フフ~ン」


「………」


 いちいち、いらつくなこいつ……


 けど……


 少し動かしてみたが、特に何も変わらない。


 握力がどうの、ジャンプがどうの言っていたが聞き間違えか?


 それをストライカーに尋ねると、必要な時に音声で命令してくださいと教えられる。


「なんて言えばいいんだ?」


「じょうちゃ……」


「まてっ! それ以上はいけないっ!」


「了:……ちっ」


「また、舌打ちを……ホントはなんだ?」


「能力開放でいいです……」


「なんか、どうでもいいってかんじだな……」


「なんでもいいんですよ。ですが、わかりやすい単語の方が使い勝手がいいかと」


「たしかにな」


 よし、これで整ったか?


「チスタは危険だからストライカーの中にいてくれ。ストライカーもそれでいいよな?」


「解答:邪魔さえしなければ構いません」


「じゃあ、チスタ。行ってくるよ」


 オレの言葉を聞き、チスタは何かを考えていたようだが、やがて意を決したように言い放つ。


「あ、あの……わたくしも一緒についていっても構いませんかっ!? いえ、ついていきたいのですっ!」


 勢いよくオレに言ってきた。


「それは……ダメだ。ここから先、何が起こるか分からない。それに、オレはチスタを守りきれる自信がない。大人しく待っててくれ。必ず助け出してくるから」


 強く拒否するが、チスタは引かない。


「わたしは回復魔術が使えます! きっと役に立ちますので、一緒に連れて行ってください!」


 ずいっとオレに近づき、一歩も引かない。


「ダメだ」


 オレはさらに強く拒絶する。


 するとチスタは顔を俯け、手のひらを「きゅっ」と握ると強く言い放った。


「……わかりました。なら、一人ででも行きます!」


 決然と言い放ったチスタの目を見て、オレは観念した。


 そして――


「はぁぁぁ……」


 ため息をつく。諦めるしかない。


「わかったよ……一緒に来い」


「……本当ですか?」


「ダメだって言っても聞かないんだろ? 仕方ないから……」


 そう言いかけて、ふと考えた。


 オレのインナーをチスタに渡せばいいんじゃないか?

 今のオレにはアーマーがある。一度外して渡せば、チスタの安全は確保できるはず。


「なぁ、ストライカー? オレのインナーを彼女に渡すってのはどうだ?」


「解答:ならば、これを」


 そう言って、スペアのインナーを出してきた。


「これは?」


「解答:こんなこともあろうかと……」


「わかったから! それ以上言うな!」


 オレはチスタにストライカーが出してきたインナーを手渡した。


「えっと……これは? ……私も脱ぐのですか?」


 少し恥ずかしがるチスタを横目にオレはストライカーに尋ねる。


「な、なぁ……どうなんだ? ストライカー? すべて脱がないとだめなのか?」


「了――適切に密着しないと防御性能が発揮できないため、適切に着用する必要があります」


「そ、そういうことか……」


 チスタにそのことを説明すると頬を赤らめつつも、意を決したようにインナーを受け取る。


「わ、わかりました……その、着替えてきます……!」


 そう言って慌ててストライカーの陰に隠れた。


 布の擦れる音がする……


 その生々しい音にオレは何とも言えない気持ちになる。


 なんだ……この状況……


 落ち着けオレ……無だ……いや……素数を数えるんだ、オレ!


 一、三、七、十一……


「ふぅ……」


 落ち着いた。


「あ、あの……」


 ――ドキッ!


 突然の呼びかけにオレは心臓が跳ね上がった。


「な、なにかな?」


「これでいいのでしょうか? その……だぼだぼなのですが……」


 みると、チスタは種族がら小さい為に、かなりだぼだぼになっていた。


「これは、どうなんだ?」


「解答、首の後ろにあるボタンを押してください」


 ストライカーに言われるまま、オレはチスタにそれを伝える。


 すると――


 オレがアーマーで圧着されたの同じように一気に収縮する。


「わぁ……」


 チスタは少し驚く。


 そして、圧着された体をみると体のラインがはっきりと見える……


 しかも肌の色に同化しているために一見すると裸に見えてしまう……


「「あ……」」


 オレとチスタは息を呑んだ。


 そして――


「キャーーー!」


 チスタは顔を真っ赤にし、腕で身体を隠しながらしゃがみ込んだ。


「な、なんですかこれ!」


 震える声でチスタがそう言うと、オレたちは共に赤らめて「は、はやく服をきなよ……」と、オレは着衣を促した。


「み、みました? ううぅ……」


 既に着替えが終わり、オレに尋ねてきた。


「ナ、ナニモミテナイヨ……」


 と、ドギマギしながら答えた。


「ほんとですか?」


 チスタは猜疑の目でオレを見てきたが、話題をそらすために動きにくくないかを尋ねた。


「そ、それより、どうだ? 動きにくくないか?」


 そう言うと、少し体を動かして動作をたしかめるチスタ。


「軽い……それに、なんだか心地いい」


「だ、大丈夫そうだな」


「はいっ! 問題ありません」


「よし! なら行くぞ」


「はい!」


 と、歩き出すとストライカーが呼び止めた。


「待ってください」


「な、なんだ?」


「解答:フィルに探索に関する説明をします」


 そういうと、ストライカーは説明を始めた。


「通信とセンサーでの誘導はわたしがします。フィルはそのまま探索してください。後、能力開放下の活動限界時間は三十分ですので気をつけてください。ヘルメットの右上くらいに残り時間が表示されます。それを目安にしてください。それでは、状況開始!」


「おぃ、勝手に始めるなぁ……」


 まあ、いいけど……


 オレとストライカーの会話はすべて日本語。

 

 最後までチスタはオレとストライカーのやり取りに「きょとん」としていた。


 ……後でどう言い訳するか、考えておかなきゃな。


「じゃあ、今度こそいくかっ!」


「はいっ! 待っててください、アルトメイア様。必ず見つけだします!」


 ――そして、兄の捜索を始めるのだった。

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