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第十四話 『語られた真相』①

「まったくっ! それならそうと初めから言ってくれよなっ! あのバカ兄貴がっ!」


 チスタに助けを求められた……いや、頼まれなくても、どうせ助けに行っただろう。


 今はチスタも一緒に兄を探索中だ。


 ストライカーの中で……


「キャーーー!! なんですかっ、これ! なんですかっ、これ!!?」


 チスタはストライカーの中で悲鳴をあげっぱなしだ……


「頼むから、もうちょっと静かにしてくれ……」


 けど、まぁ仕方ないかもな……


 ――ヒュンッ!


 エアスラスターでリニア移動してるしな……


「で、どのあたりだ? チスタ?」


 ――数十分前――


 血相を変えたチスタがすべてを話し、兄さんの助けを求めてきた。


 兵士にも告げたらしいが、何分「ジャヴォーダンの森」と言われる魔物の巣食う森として有名な場所で準備に時間が掛かり、すぐには捜索出来ないらしい。


 それを聞いて、いてもたってもいられないチスタが、オレにも助けを求めた。


 兄との模擬戦をみていたチスタがもしかしたらと思ったのかもしれない。


 あれだけオレのことを見下した態度を取っていたにも関わらず、チスタがオレに助けを求めた。


 それが、どれだけの勇気が必要だっただろうか。


 だが、それを押しのけてでも兄さんを助けて欲しいという彼女の思いが痛いほど分かってしまう。


 それは、オレにたいして真摯に向き合い、痛いほどの真っ直ぐな瞳で語りかけてくる。


 そんな娘に対して断れるほど、オレは薄情ではいられない。


「………」


 はは……オレは甘いのかな?


 けど……それでも、兄さんが危険だと言うのであれば、オレは助けたいっ!


 後でどんなことになったとしても!


 今は兄さんとの関係は悪いけど、オレは昔の兄さんを知っている。


 いつも一緒に悪ふざけして、同じことで怒られて、また繰り返して――


 洗濯した服の中にカエルを入れて脅かしたり、気づかれないようにポケットに虫を忍ばせて、驚いた顔を遠くから見て楽しんだり。ロクでもないことばかりしていたけど、それが楽しかったんだ。


 一人でやっても楽しかったかどうかは分からない。


 でも、兄さんと一緒に何かをするのが楽しかったんだ。


 いつも兄さんが率先して、オレはただ後を追っていた。


 楽しかった、ほんとうに――


 そんな兄さんを知っているからこそ、オレは……


 オレは、自分の選択を間違いたくないっ!



 そしてフィルの前で、チスタがひときわ静かな声で口を開いた。


「実は……アルトメイア様は、あなたがこの家にいられるように手を尽くしていたんです」


「……え?」


 フィルは驚いてチスタを見た。

 彼女は目を伏せたまま、さらに言葉を続ける。


「……あの日、フィル様とはじめて行われる模擬戦の前に――」


 チスタは語る。


 オレの知らないところで、父がオレを切り捨てようとしていた話を……


 強大な魔力を持つ兄が家を継ぐことは、すでに決まっていた。

 だからこそ、オレの処遇をどうするか、父は思案していたらしい。


 模擬戦の結果次第で、オレを北方の前線へ送るかどうかを決めるつもりだった。


 もし戦場で功績を上げれば、それはそれで良し。

 上げられなくても、体よく処分できると踏んでのことだった。


 それを偶然耳にした兄は、どうにかオレを家に繋ぎとめようとしていた。


 ――だから、あの時、あんなに模擬戦を嫌がったのか。


 父の言葉を聞いた時、兄はどう思ったのだろう?


 考えるまでもない。


 あの優しい兄さんが、何も思わなかったはずがない。


 きっと、ひどく悩み、苦しんだに違いない……


 そう思うと、そこまで追い詰めた元凶である父に、どうしようもなく腹が立った。


 兄は、父を説得する方法を必死に考えたのだろう。

 その結果として出した答えが、オレを「実力は兄より下だが、良い練習相手」と思わせることだった。


 けれど――もし、オレの実力が兄を遥かに超えてしまえば?


 その時は、兄の立場がなくなり、家の体裁も悪くなる……


 それが、兄の一番恐れていたことだったのかもしれない。


 そして、その場合は北方へ送り込むことが決定していた――


「――それを止めるために、わたしにも協力を求められました。けれども……アルトメイア様の予想を超えて、あなたはあまりにも強くなりすぎてしまったんです」


「強く……なりすぎた?」


 フィルは、自分が何を言われているのか、まだうまく理解できなかった。

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