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第十話 『変化する日々』

「フィル! 今日の稽古は休みだっ! ありがたく思えっ!」


「あ、はい……お、お疲れ様です。兄様……」


「………フンッ!」


 チスタはオレを睨みつけ、何か言いたげだった。


 だが、結局何も言わずにツンと顔を背け、兄の後ろに付いて去っていく。


 ……なんだったんだ?


 まあ、いい。


 それよりも――


 早くストライカーのところに行きたい!


 あれから半年が経った。


 相変わらず、オレは兄の鬱憤晴らしの相手をさせられている。


 それでも、以前のように僻んでいじけることはなくなった。


 兄に何を言われても、もう何も思わない。


 むしろ、オレの卑屈なほどの礼儀正しさに、時折兄が怯む様子すら見受けられる。


 オレが変わったことを、周囲も感じ取っているのか――最近、オレを見る目が変わってきた。


 以前のように、あからさまな侮蔑の眼差しを向けてくる者は減り、挨拶をしてくれる者まで現れ始めた。


 ――嬉しかった。


 本当に、涙が出るほどに。


 もし、ストライカーに出会わなければ、オレは今もあの頃のままだっただろう。


 周囲の冷笑と軽蔑に晒され、ただ耐えるだけの日々を送っていたかもしれない。


 あの出会いに、オレは初めて神に感謝した。


 ――だが、それとは別に、最近の兄はやたらと魔術の威力を増している。


 おかげで、オレが被弾したときの痛みも尋常じゃなくなってきた。


 もはや、「角度が悪かった」とかいうレベルじゃない。


 水や土ならまだ耐えられるが――いや、それでも十分痛い。


 水ですら、速度次第でコンクリートの衝撃に匹敵するのだから。


 だが、それでも炎や氷に比べればマシだ。


 炎は本当にヤバい。即座に対処しなければ、熱で皮膚が焼かれる。


 実際、既に何箇所か軽い熱傷を負っている……


 氷も厄介だ。直撃すれば刺さるし、裂かれるし……


「はぁ……なんとかしないとな……」


 このままでは、わざと受ける訓練が本当に致命傷になりかねない……


 オレは色々と打開策を考えながら、いつものストライカーのいる稽古場へと歩くのだった。


 ――いつもの場所。


「ふぅ~」


「操縦適正:C。中々の上達ぶりです」


「おー。お褒めいただきありがとう」


「ですが、まだまだ精進が必要」


「わかってるよっ! ったく」


 こいつ、一言多くなってきたな……


 前はもうちょっと従順な気がしたのだけどな。


「続いて、体術シミュレーター起動。どうしますか?」


「あ、やるやる。今日こそBを突破してやるっ!」


「了解――難易度Bに設定。カウントダウン開始 三……二……一……コンバット!」


 目の前に現れたのは、黒い装束のナイフ使いだった。


 細身の短剣を逆手に構え、低い姿勢でじりじりと間合いを詰めてくる。


(……間合いを詰めるのが狙いか)


 オレは剣を構え、慎重に足を運ぶ。


 相手のリーチは短い。だが、その分、手数と速度に優れる。


 不意に、ナイフの男が地を蹴った。


 速い――!


 鋭い踏み込みからの突きがオレの喉元を狙う。


「っ!」


 ギリギリで剣を傾けて受け流す。


 が、その瞬間、相手の動きが変わった。


 受け流したナイフがそのまま逆手に切り返され、腕を斬りつけられる。


「クソッ!」


 反射的に跳び退るが、相手はさらに前進しながら追撃してくる。


 左右に動きながら、オレの死角を狙うようにステップを刻む。


(距離を詰めさせるな……!)


 オレは剣を横に薙いだ。


 だが、ナイフ使いはそれを待っていたかのように屈んでかわし、再び懐へ潜り込む。


「……っ!」


 ナイフの刃がオレの脇腹を狙う――


 だが、そこは織り込み済みだ。


「はぁぁっ!!」


 オレは足を踏み込んで、剣の柄で相手の腕を弾いた。


 衝撃でナイフの軌道が狂う。


(今だ――!)


 相手が僅かに動きを止めた瞬間、全力で剣を振り下ろした。


「っ!!」


 ナイフ使いはバックステップでかわそうとする。


 だが、ギリギリで避けきれず、肩口に剣が叩き込まれた。


 ――ズンッ!


 衝撃が伝わる。


「撃破確認」


 シミュレーターの音声が響く。


 はぁ、はぁ……


 オレは大きく息を吐き、額の汗を拭った。


「……っぶねぇ……これで、B突破か」


 ナイフの速さに苦しめられたが、最後の一撃を決められたことで勝負を制した。


 きっつ……ギリギリだった!


 これでBなのに、SSSってどんだけ……?


「さすがですね。ではAランクへ……」


「まてっ!」


「無理無理! Bでもギリギリなんだから……Aなんて無理ゲーすぎるよ……」


「了解――ッ、ちっ……」


「おぃ!  なんか舌打ちしたよなっ!?」


「なんのことでしょう?  記録には残っていませんが?」


「………」


 このやろう……最近ほんと、なんか人間くさくなってきてないか?


「……ったく、もういいよ」


「理解、感謝」


「………」


 ほんとに……はは、でも、こういうのも悪くないな。

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