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元悪役令嬢、悪女皇后を経て良妻賢母を目指す 〜二度目の人生、息子に殺させない〜  作者: 白猫


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33. 史上初の双子で皇女

 私のお腹に十月十日宿った命——。

 昨日ようやく、二人の娘がこの世界にやってきてくれた。


 ——『ルヴェルディ帝国史上初、双子の皇女誕生は災いの前触れか?』


 そんなくだらない迷信に踊らされた大衆紙の見出し。

 おとなしく祝っていれば良いものを——。

 不届き者には心で舌打ちを。


 こんな時、一度目の私ならすぐさま『関わった者すべてに極刑を!』と指示したことだろう。だがしかし二度目の私は、怒りを上回る幸福感に包まれていて。


 この二人のどちらも、決して『影』や『代わり』になどしない。

 どんなことがあろうと彼女たちの幸せを一番に考える、そう誓うだけだった。


 ——人というのは、変われば変わるものだろう?


 実はここルヴェルディ帝国の血は、徹底した男系で。

 正妃が産もうが側室が産もうが、なぜか生まれてくる子は全て男だった。


 ——だからそもそも、皇女の誕生じたいが初めて。


 思い返せば一度目の私は、子どもについての『初めて』——夫の初めての子、皇帝陛下の初めての孫、全ての『初めて』を側室に奪われた。そのことが怒りと苦しみの一端を担い、消せない炎となって心に燻り続けたのだった。


 ずいぶんと気の毒な女だったな。

 我がことながら、心からそう思っている。


 けれども今世、二度目の私は、夫が異なるから当然とも言えるが——。

 有難いことに、子どもについての『初めて』を既に四つも手にしている。


 一つ、夫の初めての子を出産

 二つ、ルヴェルディ家初のぽっちゃりを出産(第二皇子ウィルフレッド)

 三つ、ルヴェルディ家初の皇女を出産

 四つ、ルヴェルディ家初の双子を出産

 

 おかしな話だな——。

 それなのに今、私には一つの大きな悩みができてしまったのだから。


 それは皇女として生まれた彼女たちの将来についてだ。

 どの大陸においても、国同士による政略的な婚姻が普通とされていて。

 皇族や王族に生まれた少女たちの運命は、ほとんど初めから決められている。


 一定の教育を終えると時間をおかず、成人前であっても他国へ嫁がされてしまうのだ。—— 後継者を産むために。


 もちろん我が娘たちについても例外ではなく。

 そしてこれは、私の意志だけで阻止できるものではない。


 ——意外と役に立たないものなんだな、悪役ってものは。


 元悪役らしく暴れてみるも一興だが、それはもう少し後に考えればいい。

 

 まだ生まれて一日しか経たない我が娘たち。

 その二人の寝顔を見ながら私は、途方もない不安に襲われた。


 ちょうど5年前に迎えた専属仕立て師のアンナとその息子アンドレ(エル)。

 彼らもそれぞれに頑張っていて。


 アンナは仕立て師業の傍ら、商業ギルドと契約して知名度を上げつつあるし、息子のエルも毒草研究で頭角を表しそうな雰囲気を漂わせている。


 ——毒草をテラスいっぱいに繁らせた時には、謀反の一種かと思ったが。


 また未来の女性騎士ダリア。

 彼女は剣術学校で男子生徒に勝る成長を見せた。

 最近では我が家の一番星、第一皇子マリシスの好敵手として鍛錬に余念がない。


 ——この二人には恋仲を期待したのだが『互いに預けるは“背中”のみ』ということになりそうだ。


 こうして少しずつ回収してきた伏線が、ようやく輝き始めたというのに。

 まさか自分の事情で悩みを抱えることになろうとは——。


 ◇


「ティナ、おはよう。よく眠れなかったみたいだね」


「ふふふ、気付いていらしたのね」


「愛する妻が自分の隣でどんな状態なのか、気付かない夫はいないと思うよ」


 なんだかアルが言うと破廉恥に聞こえるのは、普段の行いのせいだろう。

 我が夫は、妻に対して非常に活発な男である。


「ティナ、おいで」


 両手を広げるこの誘いが、何を意味するのか。

 なんとなく察しがつくからこそ、私は話を逸らすのである。


「アル……あなた相変わらずね。今朝はアンナを呼んだではありませんか」


 早くも初めての娘にメロメロのアルのこと、ベビー服の追加発注を試みるに違いない。きっとそんなことだろうと、当てずっぽうに言ってみたら——。


「……あれ?……ティナに話したっけ?驚かせるつもりだったのに」


 こうして当たってしまうとは!?

 なんだか気の毒になってきたわね。


「ふふふ、当てずっぽうですよ」


「……君ってそういうとこあるよね」


 ◇


 アンナが汗を拭いながらやってきたのは、それから少しして。

 どうやら前の予定が押したようだ。


 たしか商業ギルド長のセルゲイと面会を許してあったはずで。


「両陛下にご挨拶申し上げます……」


「もうそんな挨拶は飛ばすように言ってあるでしょう?本当にやめてほしいのよ。命に従わずして私の傍らを占めようなど、数百年早いわ」


「申し訳ございません……これからは仰せのままに」


「アンナも災難だな、するべきことをして脅されるとは……」


 こんなふうに親しい人との関係を信じて、家族的に過ごす時間を二度目の私は楽しんでいて。アンナに求めているのは、そのための変化だ。


 そこらの皇族、王族などと同じことをやっていたら、将来まで似たような結果になってしまう。そんなの絶対に嫌だもの。


 戦の可能性、限りなくゼロ。

 子どもの望まぬ犠牲、限りなくゼロ。

 皇族の財産にしがみつく人生、限りなくお断り。


 私はちょっと独特な皇后人生を望むようになった。

 以前に目指していたものは『一度目よりも善良な二度目』だったが、今はそこから少し変わって。


 ——『大陸が平和なうちに平和を維持する方法を探す』


 ずいぶんと大志を抱くようになったものだな。

 これを成長と言って良いものか?


 せっかく大陸の大帝国で、上から二番目の地位を得たのだ。

 帝国民、家族の幸せと安全を願わずして何を願おう。


 そのために日頃から撒き散らしてきた伏線を、まさに今、少しず回収しているところなのである。


「それでアンナ!あなたは何をそんなに焦っているの?汗までかいて」


「陛下、申し遅れました。ギルド長が承諾するとのことです!」


「よかった。これでようやく帝国の魔道具管理にもルールを作れるわね」


 今はまだ、マリシスのセルゲイに対する傾倒は深まっていないはず。

 ルールの制定は、こちらが主導権を握りたい。

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