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16. 義理の息子が宿った日

 私の成績がドンケツだった話は、あっという間にアルフォンス殿下の耳にも入った。

 お腹を抱えて笑う姿から察するに、容易に想像できる事実だったのであろう。

 ありがたい話だ。


「ティナ、ビリって言ったって0点じゃないんだ。あまり気にしないほうがいい。それより、皇太子妃教育を優先するってことを理由にすれば退学もできるよ。君の場合、状況が異例だからね」


 そう、私の場合まったく喜べない程に異例だ。

『第二皇子の妃』候補から『皇太子の妃』候補になってしまったんだから——。

 一度目とは相手が変わったからいいようなものの、二度目でもまた皇后になるのだから—-本当に困ったものだ。

 まるで神様が『私しか』皇后にしたくないと言っているかのようだわ。


「とってもありがたいことですが、ここで辞めてしまったら、皇太子妃候補の席を奪い取ろうと企む令嬢たちの隠れた動きを見破ることができなくなります。このままイジメられながらでも、学園に残ることを選びますわ」


 最近、どうしても13歳の子供らしからぬ発言をしてしまう。

 皇后になる可能性が出てからというもの——緊迫感からであろうか?

 一週目の性格や態度、口調が蘇ってしまうことがあるのだ。

 殿下は私が学園での学びを経て——しっかりしてきただけだ、と思っているようだが。


「そうそう、退学を提案したのには、もう一つ理由があるんだ。皇太子任命式を今年末に行うことになってね。皇太子妃教育もまた、前倒しになる。学園の勉強と皇太子妃教育を並行して行えそうかい?」


「それを早く言ってください!!もう絶対に退学でお願いします」


 見栄を張っている場合じゃないのよ。

 そんなもんできるわけないでしょう?


 ご存知のとおり——学園成績ビリの令嬢なのだから——。




 ◇ ◇ ◇


 夕食の時間、今日もアレクシス殿下は自室で済ませるようだ。


 現皇帝陛下の側室であり第一皇子アレクシス殿下のお母様、パルディア様の巻き起こした不義密通事件(祖国の補佐官で幼馴染の男性と関係を持っていた件)が明るみに出て以降、アレクシス殿下とはお会いしていない。


 未来の夫の兄上で私の人生一度目の夫とくれば、心配する気持ちが多少は芽生えるものだ。


 アルフォンス殿下に様子を確認しようと話しかけるも、ちょうど同じタイミングで——侍従のレイに割り込まれてしまった。


 よほど重要な報告があるようだ——いつもとは表情が違う。


「アレクシス殿下のご側室、レベッカ様のご懐妊が確認されたそうです」


「……妻として同行させる気か? 兄さんは来月早々に城を出ることになってるんだ。皇位継承権を放棄したからね。ただ、今週末に血筋についての検査結果も出るだろう?その結果によっては、また違った結論もあるって話だ」


 そう——もしもアレクシス殿下が皇族の血筋ではないと確認されたりすれば、もはや皇族でもなければ貴族でもなくなってしまうのだ。


 側室とその子供が、殿下と一緒に平民になり、市井で生活を送る——。

 そんなこと、全くイメージがわかないんだけど?

 レベッカ様が逃げ出す以外——それ以外の景色を思い浮かべることが不可能。


 あれ?そういえば——アレクシスが一度目で側室に子供を産ませたのはいくつだった?

 私が16で妃になる3年前に作られていたんだから——その子ができた時の私は13だったはず。


 まさか——?


 その子が男児なら——前世で義理の息子になった第一皇子だわ。


「殿下、もしアレクシス殿下のお子が男児なら……アルフォンス殿下が皇位を継承された暁には、第一皇子として皇城で育てることになるのでしょうか?」


「ああ、それも考えられるな。全ては父上のご判断だが……」




◇ ◇ ◇



 その翌日——

 


 神殿で実施された検査により、アレクシス第一皇子は間違いなく、皇族の血筋であることが証明された。

 

 殿下が「パルディア様の不義密通による存在ではない」ことが、これで証明されたことになるのだ。


 やはり、一度目と同じ息子(義理だが)が生まれてくる。

 そこは変えられない未来ということなのね?


 それならば、覚悟を決めて見守ろうではないか。


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