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14. 学園生活の始まり

 アレクシス第一皇子殿下のお母様、パルディア様が保護されてから一週間。皇室はそれなりに大変な判断を迫られたようだ。


 パルディア様にかけられた嫌疑は——『陛下以外の男性との不義密通』なわけだが、その事実がほぼ確定したという。極秘扱いで結果も限られた関係者にしか共有されないから、あくまでも噂に過ぎないけれど。


 それでも既にパルディア様が城を後にされたと聞いて、もう二度と戻られないだろうことは容易に想像できるのだ。


「クリスティナ、ちょっといいかい?」

「どうなさいました?」


「パルディアのことで話があってね。ここまでの話は理解しているよね? 結果から言うと、彼女は不義密通を認めた。相手は幼馴染で、祖国の補佐官なんだって。使節団として我が国へやって来るたびに通じていたらしいよ」


「そんな……アレクシス殿下のご様子は?」


「落ち込んではいるが、彼は第一皇子だからね。そう簡単に弱いところは見せないよ。それよりもっと重要なことがあるんだ。兄さんは王位継承権を放棄した」


「……それはどういうことでしょう?アルフォンス殿下のお立場にも影響がありますわよね?」


「クリスティナ・リーズ・クレメント公爵令嬢、どうか皇太子となる私に力を貸してほしい。貴女が学園を卒業したら、皇太子妃になっていただけませんか?」


 殿下が跪いて、本人からの予期せぬプロポーズだ。

 どうしよう——また皇后になっちゃうの?


「ありがとうございます。謹んでお受けいたします」


 ——お父様もお兄様も驚くわね。


「殿下、家族にも報告したいのですが、私からお伝えしても?」

「いや、先ほど宰相が公爵家へ手紙を送った。明日にでも駆け付けて来るだろう?」


 仰るとおりだ——。

 きっと明日の朝一番で駆けつけてきて、私の意思を確認するはず。

 お父様もお兄様も、お母様が亡くなって継母を迎えてから——まるで別人のようだった。

 一度目はその変化に敏感になって、私はいつもイライラしていたし、そのイライラをどこかにぶつけたいと思っていた。


 結局のところ、家庭内の変化についていけなかった私が——それをうまく利用した継母の策略にまんまと引っかかって、勝手に「悪役令嬢』に仕上がってしまったのだと思う。——浅はかだった。


 今は二度目、なぜか私が遡った時には既に、お父様もお兄様も継母との間に距離を置いていて。おかげさまで軌道修正ができたわけだけれど。——腑に落ちない。


 なんだか少ーしずつ一度目とずれているのよね。

 そのズレが二度目の私を助けてくれるのは間違いないとしても、この気持ちの悪さ。

 一度目にはなかった馬車の事故、魔力中毒症、そんな経験が影響しているのかしら? それとも——本当に神様がいて絶妙に調整してくださっているとか?

 

 私が考え事にハマってしまうと必ず、アルフォンス殿下は待ってくださる。テーブルに肘をついて顎を手の甲に乗せるポーズ、だいたいこのポーズで私を見つめている。そしてお決まりのセリフがこれ。


「考え事は終わった?」 


 転んでも、ボーッとしても、太っても、勉強ができなくても——いつも変わらず大切にしてくださる殿下。こんな人のプロポーズを断る女なんて、世界中どこ探しても見つかるわけがない。


 ◇


 ——それから4年後が経ち、私は13歳。


 殿下の14回目の誕生日に婚約発表を行ってから4年、いよいよ私も『メラヴィオ学園』に入学した。


 入学式ではアルフォンス殿下がエスコートしてくださって、学園生活一日目を良き日にすることができた。——だが問題はその後のお話。


 どうやら私はいじめられているようで。

 ちなみに今——紛失した鞄を探しているところだ。


 アレクシス第一皇子殿下が王位継承権を放棄なさってからというもの、第二皇子のアルフォンス殿下は注目を集め続けた。自分の娘と婚約させたいと切望する貴族も続々と湧いて出たそうで。

 その中には、アレクシス殿下の元婚約者——スタイナー公爵家のセシリア様も含まれたというから驚きだ。


 そのセシリア様からの嫌がらせが群を抜いて酷いことは——ここだけの話にしておく。唯一婚約適齢期の皇族——アルフォンス殿下を巡る『婚約権』獲得競争において既に優勝している私には、妬み僻みを受け入れる義務がある。そう思うから。


 まぁそんなわけで——今日は鞄を持って帰れない。


「殿下!お待たせしました!!」

「お疲れ様。そんなに走っちゃ危ないよ」


 こうして学園まで迎えに来てくださる殿下に、無駄な愚痴は聞かせられない。

 どんなにいじめられても、私は幸せなのだから。


「ねぇティナ、なんで今日は手ぶらなの?」


 やっぱり気になりますわよね——。

 殿下!!スタイナー嬢にお尋ねくださいませ。

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