魅了
こんにちは。
逢哉初の連載小説です。
是非読んでください。
---人間は死んだらどこに行くのか、と思った事はないだろうか?
「行くところなんでねぇよ。無になるだけ。」
少女は言った。
頬を上げ“笑った”。
少女は死を運ぶ。
不気味な鎌を持って、人間の肉体と精神を切り離す。
ただ黙々と。
人間は死にぎわに走馬灯を見ると言う。
それは、彼女達が最後の晩餐として魅せるもの。
人生と言う名の罪に終止符を打つために。
「まだやり残した事があるんだ!!」
「知らねぇよ。」
少女達には、殺すという行為に対する罪悪感、死ぬ事への恐怖と哀しみがない。
最初から与えられてなどいない。
ついさっき振った鎌を見ながら、少女は呟く。
「枯れてきたなぁ…。」
少女は彼岸花が好き。
妖艶で美しく、暗闇のような不気味さが。
ただ凛と咲き誇る花に魅せられている。
少女の鎌は彼岸花から出来ている。
神様が許した力で、少女達は魂を運び、狂った魂から身を守る。
殺すため、
守るため、
鎌を振るう。
見上げた空は灰色で、少女は不思議な気持ちになる。
ココロの何かが、動いた気がした。
「おい。そこの死神。」
振り向くと、雲の隙間から溢れた光が眩しくて目を隠した。
「…誰!?」
顔上部を覆う手をずらせば、男が二人いた。
「君の感情、奪いに来たんだ。」
少女は鎌を握り、目の前の男達に斬り掛かった。
全ての感情が無くなれば、ただ人形のように動くだけ。彼岸花に魅せられることはない。
少女にとっては、絶対に失いたくない感情だった。
死神の少女はこの日初めて神をみた。