7話「城内は混乱気味」
その頃レイビアを失った国は――否、城内には、ぎすぎすとした空気が広がりつつあった。
「ちょっとあんた! 貴族になりたいからって他人の男に無理矢理近づいてんじゃないわよ!」
「はぁ? あなただってべつにまだ婚約していないんだし、何でもアリでしょ? 何威張ってるの? イミフメ~」
「彼はあたしのものなのよ! 他人の男に手を出すな!」
「だ、か、ら、まだ全然あんたのものじゃないんだってば。ただちょっと仲良いだけでしょ? あなただって」
これまでは皆でレイビアを悪く言えた。
共通の敵がいれば仲よくなるというのが人間の性であり、また、女性などは特にその特徴が顕著。
そういう意味では、これまで城内の平穏を保っていたのはレイビアの存在だったのだ。
彼女が悪者の役を引き受ける形となっていて、それゆえ、周囲の女性たちはそれなりに良い関係を築けていたのである。
「ふっざけんじゃねえ! ゴラァ!」
「きゃっ!」
「何甘い声出してんだテメェ、調子乗りやがってよぉ、ふざけてんじゃねえぞくそぼけぶりぶり女!」
「酷い、ビンタするなんてっ……」
しかしレイビアは城から追い出され消えた。
それにより、皆の絆を作っていた存在が欠け、バランスが崩れ始めてしまったのだ。
今や城内な地獄と化している。
毎日あちこちで喧嘩が発生しているような状態で、治安は非常に悪い。
「なぁーに泣いて弱いふりしてんだよ! くっだらねえ女! そんなことやってりゃ男受けするって思ってんのか? 明らかに演技だろぉが!」
「ううっ……叩くなんて……」
「そーんなくだらねえ演技で釣れるのなんかよぉ、貰い手のねえ低級貴族の年増くらいだろ。テメェそんなとこ嫁にいくつもりか? ぎゃははは! じゃあどうぞいけや! 貰ってもらえや! 低級でいいならなぁ、ぐきゃははは!」
口喧嘩など可愛いもので中には殴り合いにまで発展することもある。
そういった時には男性がつい割って入ってしまうのだが――暴力を伴う女同士の喧嘩を止めようとして逆に女性二人から攻撃され負傷する、というパターンもここのところ急激に増加している。
「そ、そんな言い方ッ……っ、もう、こうしてやる!!」
「おい! 髪引っ張んな! くそが!」
「やられっぱなしで黙っているなんて……できないわ! 髪奪ってやる! 全部抜いてやるわ! それから顔も引っ掻き傷だらけにしてやる!」
「ぐおええええ! おいやめろまじで!」
「舐めてたら痛い目に遭うのよ! おりゃりゃりゃりゃ! 引っ掻いてやる! もっと、もっと、痛めつけてやるわあああああああ!」
「テメェやりやがったな!? ぜってぇ許さん! ぼこぼこにしてやるぅ! 覚悟しろや素人女!!」




