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4話「打ち明ける」

「ま、まさか、そのようなことが……」


 すべてを聞いた魔王は愕然とした。

 なぜならたった今耳にした話が信じられないほど酷い内容だったからだ。


「怨まれているのか?」

「……好かれてはいないかと」


 魔王をもってしてもそこまで理不尽な話は聞いたことがない、それゆえ彼は動揺していた。


「ええと、それは、お主だけが? それとも、家も?」

「家もです」

「し、しかし、やましいことは何もないのであろう?」

「そうです。それは言えます、神にでも誓えます。……ただ、聞いてもらえない状況ではそれも無駄なことですが」


 少し沈黙があった。


「しばらくここにいるといい。そういう事情であればすぐ国へ戻るというのは難しそうだしな。受け入れよう」


 やがてそう切り出したのは魔王。


 事情を知ってしまった以上放ってはおけないし追い出すこともできない。もっとも、元々その気はなかったのだが。ただ、速やかに帰らせる、というパターンはあったわけで。しかしその選択肢は消えた。


「……殺さないのですね」

「何を言うか、当然であろう。罪人でもない者を殺すなどあり得ないことだ」

「意外です」

「なぜゆえ?」

「魔王なのに、優しいので」


 そう言われた魔王は困ってしまった。

 どう返せば良いものか分からなくて。


「と、とにかく、部屋を用意しよう。そちらへどうぞ。そこで暮らすといい」


 そして別れしな。


「貴様は心が怪物だ、男はそう言ったとようだがそれは間違いだ――怪物がそう言うのだから間違いない」


 魔王はさりげなくそう付け加えた。


「レイビアさん! 素敵な名前、いいね!」

「ありがとうございます」


 部屋まで送る役になったのはスレオ。


「じゃあ案内するから、ついてきてね」

「はい」

「ちょっとここ構造がややこしいからしっかり頼むよ」

「はい、気をつけます」


 スレオと前後に並んで歩いている時、レイビアは「結局魔物より人間の方が悪質ではないか」というようなことを考えていた。


 石畳を歩く足音だけが空気を揺らす――。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >結局魔物より人間の方が悪質ではないか  ずしりとくるセリフですよね。  姿形ではなく。そのものの在り方。  話すことができて、レイビアの気持ちが少しでも落ち着けば、と思います…。
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