17話「結末」
「世論を味方につけて奪還する!」
「させん」
何を言われようともアドラストの意思は揺らぎはしない。
「もし返す時が来るとすれば、それは――レイビア殿がそれを望んだ時だけだ」
するとガットソーは急に激昂。
「いい加減にしろよ! 魔王の分際で偉そうに! かっこつけやがって! ここで、ここで――殺してやる!」
懐からナイフを取り出し、それを手にアドラストに襲いかかる。
しかしその扱いは素人のそれで。
目の前の人間の男を殺さないよう力を加減しつつ対処するアドラストでもその手を止めることができるくらいだった。
つまり、弱かったのだ。
「陛下に武器を向けるとは!」
「何という野蛮人!」
「今すぐ降伏せよ!」
周囲の警備兵たちが一斉にガットソーへ敵意を向ける。
「待て、落ち着けお主ら」
そんな中でもアドラストは冷静そのもので。
「こやつを捕らえよ」
あくまで冷静に。
「「「はっ!」」」
目の前の男ガットソーを拘束するよう命じた。
◆
魔王アドラストに刃を向けた罪で拘束された人間の王子ガットソーは、鞭打ち千回の刑に処され、最後まで耐えきることはできず絶命した。
彼は途中からずっと情けなく泣いていた。
偉そうなことを言っていた彼だが数十回の鞭打ちに耐えることすらままならなかったのだ――結局最後まで強そうなのは態度だけであった。
ちょうどその頃、ガットソーの母国は隣国に攻め込まれる。
一般国民はその多くが国外へ退避。というより、勝手に逃げ出したのだが。西の塔付近にも難民は少数ながら流れてきて、アドラストはそれらの条件つき受け入れを決めた。
――そしてレイビアは思わぬ形で両親と再会することとなった。
受け入れた者の中に両親がいたのである。
両親はレイビアが健康に生き延びていたことを喜んだ。レイビアもまた親との再会を純粋に喜んでいた。
ただ、その一方で、戦火に巻き込まれ死亡した者も多くいた。
主に城に出入りしていた者たち。
彼ら彼女らは「ここは自分たちの国だ」と激しく主張していたために逃げ遅れ、敵国の軍によって蹂躙された。
◆
その後、レイビアは晴れて、アドラストと結婚。
魔王の妻として魔物たちのためそして国のために生きてゆくことを決めたのだった。
◆終わり◆