第二話
優希視点。
土曜日、それが勝負の日だ――なんて思っているんだろうな。
そう思いながら、私はさわやかな笑みを浮かべる岳人を見る。まったく、なんて気負いのなさそうな顔だ。私は心臓バックバクなのに。
高校生は忙しい。それはもう、声を高らかに叫ぶくらいには忙しい。
勉強に部活、委員会、行事、友人関係、バイト。それから受験。ぶっちゃけ、私はパンクしていた。もともと同時並行で作業を進めるのとかは苦手なのだ。なぜかたくさんできた友達の間で首が回らなくなって完全に機能不全に陥ったのは記憶に新しい。どうにも価値観がバラバラな人の集まりで、その上私を中心にグループを組んでいるみたいな気配があるのが問題なのだ。
私がいないときにそれぞれがスマホを手に机に座って、会話の一つもないところを見たらもう駄目だった。あの時は岳人にそれはもう迷惑をかけた。実際、引きこもり一歩手前だったし。
私は岳人に頭が上がらない。昔から知っている相手だから、お互いに弱みを握っていて、お互いに情けない姿をさらしている。他の人には絶対にばらしてほしくない黒歴史は数知れず、でもその数は多分岳人より私の方が多い。つまり、爆発して受けるダメージは私の方が大きいということだ。
それくらいに、私はずっと岳人と一緒にいた。生まれた病院から始まり、保育園、小学校、中学校、そして今、高校とずっと同じ学校に通ってきた。別に両親が旧知の仲というわけでもない。ただそういう星のもとに生まれたのだと私は勝手に解釈している。
あ、なんか中二病が入った。今のなしで。
ま、まあそんなわけで、私の思い出の中にはいつだって岳人がいた。それが当たり前で、けれどとても尊いものだと気づいたのは果たしていつ何をきっかけにしてのことだったのか、今ではもう思い出せない。
だらだらといつまでもこの心地よい関係が続くとは思っていない。多分、岳人も。けれど私たちは、関係を変える勇気がなかった。
ただ、このままずっと一緒に居たかった。それが、ひどく難しかった。
三年の一学期中間テスト。私はこれを機に自分を変える決断をした。一歩、関係を前に進めようと思った。これまでの惰性と腐れ縁で続いた関係から、前に。隣にいることが当たり前な関係に。
その関係につけるべき名前を、私はまだ知らない。わからない。あるいは、わからないふりをしているのかもしれにない。
親友か、竹馬の友か、刎頸の交わりか、あるいは、恋人か。
答えは出せない。答えを出してしまったら、今のこの関係を否定することになるような気がするから。でも、私は変わる。変わるんだ。
テストで勝った。デートと、そう告げた私の声は多分震えていなかった。
のんきに笑う岳人は、多分このテストに臨んだ私の覚悟を理解していないだろう。
関係を進めるために、私は今の関係を壊す決断をしたのだ。どうせ、受験を機に壊れてしまうかもしれない関係だ。
覚悟を決めよう。私たちの絆は固く太い。今更、些細な波風でちぎれるほどやわじゃない。
ねぇ、そうでしょ?
その問いかけに、岳人が答えてくれることはない。