表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レッド・ヘッド・ドレッド・ドラゴン ~希代の暴君は蘇る~ [※尚、転生先は中途で新婚です]  作者: 夏野ツバメ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/36

現世の戦いは熾烈を極めて……

 一日の労働時間はだいたい9時間。それを五日間繰り返すと二日の労働休暇が与えられる。この時代の人々はこうした日々を繰り返しながら、一月そして一年と暮らしているのだ。


……しかしなんだな。平和な時代と云うものは退屈なばかりだと思っていたが、これはこれで日々充実したものだ。いや、逆に言えば忙しさに追われているのか?


 俺は閉店の片付けをする傍らぼんやりと考え事をしていた。


「お疲れさん、それが済んだら今日はもうあがっていいぞ。週末は奥さんも楽しみに待ってるだろうしよ」


 奥の部屋から出てきた店主(アンドリュー)はそう言って店の戸締まりを始めていた。


「ありがとう店主(マスター)そうさせて貰うよ」


 俺は並べられていた鉢植え下げると腰巻き(エプロン)を脱いだ。


「そうだ、この間はあいつ(ラズリ)の件ありがとな。ベルフリアに行くのを随分楽しみにしてるみたいだったぜ」


「いやいや、僕は何もしていないよ。ラズリには普通に進めただけだし」


 ベルフリアへ学校見学に出向く提案、ラズリは予想外に乗り気だった。


……ラズリの奴も、父親にはなかなか本心は伝えにくいのであろう


「礼に今度また『エル・メルラルド』に連れてってやるからよ。今度は女装しなくてもいいから、もっと楽しめるぜ? ガハハハッ」


 俺の頭にあの時の嫌な思い出が甦る。そういえば今日は(リリィザ)と何処かへ向かう約束をしていたような。


……そうだ、今日はその場所(エル・メルラルド)に出向かなければ行けない約束の日であった


「いや、遠慮しておくよ。……と言うかこれから向かわなきゃ行けないし」


「おや? お前も随分気に入ったんだな」


 アンドリューの問いかけを、暗い顔の俺は首を横に振って答える。(リリィザ)とのいざこざを簡単に説明するとアンドリューはまた大笑いで口を開いた。


「キャバレーに行ってみたいなんて、あの奥さんもなかなか物好きだな」


「ああ、僕もそう思うよ……」



小さく畳んだ 腰巻き(エプロン)を店主に手渡し、俺は店を後にした。




「繁華街の方は夜でも結構明るいのですね」


 帰宅した俺は(リリィザ)と共にキャバレー『エル・メルラルド』を目指すのであった。居住区域とから少し離れたサンスビアの繁華街は、以前来た時と変わらずの賑わいを見せている。


「酔っ払いも多いし、あまり治安も良くなさそうだから気をつけないと……」


 俺はそう言って彼女の手を掴んだ。自然な動きとは裏腹に心拍数は上がっている。この頃は無意識にこうゆう動きが取れるようになってきた。シアンとして馴染み始めたのだろうか?


「大丈夫ですよ。もしも何かあれば、シアンさんが私を守ってくれるんでしょう?」


 (リリィザ)は上目遣いにそう言うと、俺の手を反対に引き寄せてしがみついた。


「う、う、うん、もも、もちろんだとも?!」


 ……近い、近いッ、モロに当たってる! それどころか押し付けられてるってッ!?


 歩く度に押し当てられるリリィザの柔らかな二つの膨らみに、俺の心臓は限界を超えて高鳴った。


……は、早く、一刻も早く『エル・メラルド』に着いてくれッ! このままでは俺の心臓が持たない……い、いや、もっとこのまま? むしろずっとこうしていても良いのではないか?!


 かつて無い程の激しい戦いに、俺の葛藤は複雑を極める。ぎこちなく進む歩幅に合わせて、俺の右側で至福と緊張が揺れ動くのであった。


◆◆


 きらびやかな繁華街の中でも一際極彩色を放つその建物は、屋外からでも中の騒音が聞こえてきそうだ。おそらく今日も満席に近い人数が訪れているのだろう。


 入り口で迎えてくれた給仕人の案内により、俺と(リリィザ)の二人は運良く小さなテーブル席へと通されたのであった。


「すごい活気ですね、この町にもまだまだこんなに沢山の人が生活しているのですね。知らなかった」


「ああ、でもここに来る客は皆アンドリューみたいな連中が多いけどね」


 二人はそれとなく周りのテーブルを見渡す。確かに飲んだくれた男達が肩を組ながら歌っていたり。豪傑といえば聞こえは良いが、赤い顔の酔っ払い達はそんなに格好の良いものではないだろう。俺はリリィザは顔を見合せて静かに笑った。


「そういえばシアンさん、この間の話なんだけど……」


 リリィザは急に真面目な顔で俺を見つめた。俺は咄嗟に視線を逃がしてしまう。さっきまでの道中を思い出してしまったのだ。


……ぐっ、直視できない。さっきの柔らかな膨らみが思い出されてしまう


 挙動不審な俺を見て彼女は、溜め息まじりの笑みを浮かべる。


「シアンさん聞いてます? まったく……この話は後でいいわ。先に何か飲み物でも頼みましょうか?」


 そう言ってリリィザは立ち上がると、給仕人に声を掛けるのであった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ