社長と秘書の大作戦
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サンスビア開発計画を止める為、俺はある作戦を思い付いたのであった。作戦遂行の為に俺はまず、アンドリューに手を貸して欲しいと頼んだ。彼はその役目を二つ返事で引き受けてくれた。
「……ちょっと?! お父さんにシアンさん、なにその変な格好」
「あん? 変ってなんだよ。こんなに決まってるじゃねぇか。なぁ、シアン?」
「そ、そうですね。店主は似合ってますよ」
いつもの作業服ではなく正装姿のアンドリューは、ビシッと襟を正した。
俺の考えた作戦はこうだ。まず、ヴィクター・ロチルドと施設の地盤工事の商談と称した話し合いの機会を設ける。そして上手くヴィクターに取り合う事が出来れば、次に本命のロチルド財団のボスを紹介させる。
この役はあの男と面識のない人物ではないといけない。そして何よりロチルド財団と商談を持ち掛けられるほど知識と、貫禄のある人物であることも重要だ。
アンドリューは先刻の寄合に顔を出していない。加えて土竜族モーラニュクスの彼ならば、サンスビアの地所についてかなりの説得力もある。それなりの格好をさえすれば、威圧感のある大商人に見えないこともないはずだ。
相手の懐に潜り込む事でロチルド財団の真意を確かめる。向こうの目的がなんであれ地盤屋を装ったアンドリューの助言で、あわよくば計画そのものを頓挫させればいい。
と……そこまで思い付いた、までは良かったのだ。
「ど、どうして僕はこんな格好に……」
「ガハハッ、だってお前さん顔が割れてるんだろ? だったら変装するのが常識ってんだ。その姿ならどっからどう見ても気づかれねぇよ」
鏡に映る自分の姿に絶句してしまう。女性用の貴人服に黒髪のカツラと眼鏡。顔が割れてるとはいえ、よりにもよってどうして女装なのだ。
「社長と一緒に行動する側近と言えば、そりゃあ秘書だろ」
「プブッ……シアンさん、案外似合ってるかも。少し化粧すればもっとそれっぽくなるよ、私がやってあげる!」
ラピッシュ親子は楽しんでいた。本当に大丈夫なのか、この作戦は……
◆
「ところで、どうやってヴィクター・ロチルドと商談の約束を取りつけるの?」
「ああ、それはな……」
ラズリに化粧をされながら、俺は上着から一枚の紙切れを取り出した。長方形の小さな紙には金髪男の名前と、よくわからない数字の羅列が書かれている。
「ヴィクターって奴の名刺じゃねぇか。どうやって手に入れたんだ?」
「そ、それは……」
俺がヴィクターを殴り飛ばして連行された後、妻はすぐに相手側へ謝罪に出向いていた。被害届を取り下げて欲しいと懇願する彼女に、意識を取り戻したヴィクターはあっさりとそれを承諾したらしい。いつでも連絡をよこせと、奴から妻に渡されたのがこの紙切れだ。
金髪男の見え透いた下心には腹が立つ。しかし、妻には本当に心配を掛けてしまった。俺のせいであんな嫌な野郎に、頭を下げさせてしまうなんて……
「まぁそんな感じで……なんやかんやで手に入れたんです」
説明を終えると複雑な心境になる。なんとも惨めな気分だ。
「よし、善は急げだ! 今すぐ掛けてみるか」
アンドリューはそう言って紙切れを受け取ると、見慣れない機械を取り出した。
「掛ける?」
「ちょっと、シアンさん動かないでよ! アポ取りはお父さんに任せて、もう少しで完成だから」
……ア、アポトリって何だ?
ラズリに無理やり顔を固定されると、くすぐったい感触が這いずりまわる。無抵抗の俺は、黙って化粧が終わるのを待つのであった。
「――もしもし、私どもはラピッシュ商会と申します……ヴィクター・ロチルドさんに是非とも……はい、えぇ、えぇ……はい……」
隣で聞こえるアンドリューの声は、まるで誰かと話しをしているようだ。この時代の技術は離れた人物とも会話ができるのか?
「よし、完成! うん、これならどう見ても気づかれない。シアンさん、お化粧映えするね、すっごく綺麗だよ!」
ラズリは満足そうな表情で手鏡を見せてきた。鏡に映る俺の顔は確かに凛とした女性顔に変貌を遂げていたのだ。
……さすが年頃の女子だな、器用なものだ。こんなに変わるものなのか。
感心する俺は顔の角度を変えて、何度も鏡を覗き見た。
「よしッ! こっちもバッチリ約束取りつけたぞ。しかもラッキーな事に、向こうさん今日の夕方から空いてるらしい。さぁ、シアン! こっちもさっそく準備するぞ」
アンドリューは嬉しそうに拳を握った。俺は頷いて応える。
「店主! 絶対、成功させましょう」




