ロチルド財宝伝説
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「なになに……『最果ての当地国サンルゥレィビア。この町を統べるロチルド卿は町人から住居の責務と称して過酷な課税を行っていた。人々から搾取した金品、財宝を一人占めするロチルド卿に町人達は日々不満を募らせていたのであった。』……サンルゥレィビアってずっと昔のサンスビアの事だよね。こんな酷い奴がこの町にいたの?!」
年季の入ったボロボロの本を開いて、ラズリは独り言のような文句を垂れている。
瓶底眼鏡の男もとい、カザックという名の雑貨屋店主の話から俺は過去の【ゴマすりロチルド】について思い出していた。
意外にも話に興味を持ったラズリが【希代の暴君レッド・ドラグーン伝説】なる本についてカザックに尋ねると、彼はすぐに自分の店から古い本を持ってきた。嬉しそうに、なぜか少し得意気にそれをラズリに手渡したのであった。
「懐かしいなぁ、俺達がガキの頃もああやって食い入るように読んでたもんだよ」
カザックの言葉に同年代と思える男達が頷いている。皆それぞれ思い出すように本の内容について口にしていた。
あんな本が書かれていたのか。自分の事を書かれるなんて、なんだかむず痒いな……
「あの……今は工事を撤回させる術を考えた方が良いのではないでしょうか?」
昔話を懐かしむ声が飛び交う事務所の中で、リリィザの透き通る声が駆け巡った。我に返るように口を閉じた商店街の人達は、ひとつ頷くとまた怪訝そうに皺を寄せた。
「それなら、懇願書はどうだろうか?」
「おお、それだ! ここにいる全員で血判でも押して渡せば、向こうもそう無下にはできないよな」
「たしかに!」
一人の提案に賛同する声が重なる。確かにここにいる数十人の血判書を出されたら、普通なら再度、審議に掛けられるのが当然だろう。
「いや、無理だな。そんなことしたってむこうさんは取り合う事すらしないだろう。土地の権利はすでにロチルド財団が握ってるんだし」
アンドリューは静かに唸って呟いた。
「それじゃあ、いったいどうしたらいいんだ……」
カザックが頭を抱えて呟いた。誰もそれに答える事ができない。しばしの間沈黙が部屋に広がる、誰もが考え込むように唸っていた。
「『私利私欲の為に過剰な搾取を繰り返すロチルド卿に対し、サンルゥレィビアの人々は偶然町に訪れた一人の人物に助けを求めた。町人達の懇願に立ち上がる男はこう言ったのだ。「我に思う正義アリ、この拳に誓い民を救おう」暴君は颯爽とロチルド卿の所へと向かったのである』」
拍子抜けするようなラズリの独り言が、また聞こえた。
「それから……『暴君は見事に小悪党ロチルド卿をその拳にて討ち果たしたのだ。命からがら慈悲を懇願するロチルド卿に対し、暴君は情けをかける。これに改心したロチルド卿はこれまで隠していた財宝を全て献上すると言うのだが、暴君はこれを受け取らないと答えた。レッド・ドラグーンの生きざまに深く感銘を受けたロチルド卿はサンルゥレィビアの平和を誓うと彼に頭を垂れて忠誠を尽くしたいと願った。「我が宝はかの地に隠します。いつかドラグーン将軍様のお役に立てますように」そうしてサンルゥレィビアに眠る財宝伝説が生まれたのである。一説にはロチルド卿が残したとされる宝は、小国の財源を遥かに凌駕する額になるそうな』……ふんふん、ロチルド卿は暴君の寛大さに心引かれたんだね。たしかに、カッコいいかも……」
しばしの間、皆がラズリの独り言に耳を傾けていた。
……だ、だいぶ、話が盛られすぎてないか? 誰だよあんな適当な本書いたヤツ、俺は確かあの時……
「これだよっ――!」
ラズリは本を閉じると突然大きな声を上げて立ち上がった。
「きっとロチルド財団はこの財宝を探すためにサンスビアを乗っ取ろうとしているんじゃない?!」
鼻息荒く騒ぎ出した彼女の言葉に、皆は苦笑いで顔を見合わせていた。
「まさかぁ? そんなおとぎ話を信じて、埋蔵金探しなんて……」
カザックが笑いながら否定すると、彼女はムキになって騒いだ。
「いや、待てよ。もしかしたら、あり得るんじゃねぇか……現にその話の中でロチルド卿の城があった場所って、確か町を流れる川の最西端……シアンやドナーの家がある方じゃなかったか?」
アンドリューの話に、皆はラズリが手に持っていた本に群がった。そこには確かにロチルド城の場所が最西端の上流と記されている。
「それにロチルド財団はもともと、ロチルド卿の血族から立ち上げられはず。財宝伝説をいまだに信じてる奴が一人くらいいても、おかしくはないだろう」
「それなら、私達が先に財宝を見つけしまえば……計画自体無くなるんじゃないかな?!」
ラピッシュ親子は「それだ!」と唸った。初めは半信半疑の商店街の皆も、少しずつ賛同を見せはじめるのであった。
……おいおい、正気か?! そんななんの確信もない話、信じるつもりかよ? それに俺の記憶によると、【ゴマすりロチルド】の残した財宝ってのは確か……
突飛な財宝伝説の話題に、皆は異様な盛り上がりを見せるのである。
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