サンスビア活性化計画?
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――えー、それでは夏祭りの予算はこちらの金額に決定致しましたので、後程、各企業様からの協力金を記載した用紙をお渡しします。確認よろしくお願い致します。
――それでは次の議題に移ります。お手元の資料、次のページに進んで下さい。
……これは想像以上に退屈だ。アンドリューが来たがらない理由がよくわかった。
会議室と書かれた表札の広い部屋、俺達三人が到着した頃にはすでに数十名ほど集まったっていた。それから程なくして始まった【サンスビア定例寄合】と銘打った会はさして盛り上がることもなく、ただ淡々と長話を聞かされるだけなのであった。
ほとんどの人は話し半分でそれぞれが好き勝手に世間話をしており、真面目に聞いているのは幹部と思われる初老の数人だけである。ただ会長と呼ばれていた老人に至っては、始まってすぐにウトウトと船を漕いでいる始末だ。
つ、つまらん……昼食の後ということもあってか、気を抜いたら俺も意識をもっていかれそうだ。
横目で隣に座るラズリを見てみると、ガックリと頭を垂れて小さな寝息を立てている。
……おい、店主代理のお前が寝てどうするんだよ?!
思わず肘で小突くと、彼女はビクリと体を揺らした。しかし、起きることは無かった。
諦めて反対を見る。妻は真剣な表情で手元の紙に目を落としては、何やら書き込んでいた。
……さ、さすがはリリィザ。こんな集まりでも真剣に聞いているとは
こっそりと彼女の手元にある紙を盗み見る、淡々と書かれた機械的な文字の横にはびっしりとメモ書きが記されていた。いくらドナーの代理だからとはいえ、ここまで真剣に聞いている人は他にいないだろうな。
……これは旦那として、半端では格好がつかん。俺も気を引き締めなければな。
真剣な表情で紙を視線を落としたのはいいが、ものの数分で俺の集中力は枯渇したのであった。それでも睡魔に抗う俺は、視線だけ動かして何かおもしろい事は無いかと室内を見渡した。
あ、アイツは【ハローズワークショップ】の子ネズミ男だ。あの男も参加していたのか……やけに背筋を伸ばして聞いているな? 隣の大きいおっさんはとっくに居眠りに入ってるのに、もしかしてあれは子ネズミ男の雇い主か?
下らない事を考えているうちに、寄合の議題は最後の項目に移ろうとしていた。町会のゴミ出し時間について、これも正直どうでもいいと欠伸を噛み殺して聞いていたのであった。
――えー、以上になりますが……あ、今日はもう一つ緊急案件があるのを忘れていました。それではこの案件は主催側代表のヴィクター・ロチルドさんに代わらせて頂きます。宜しくお願いします。
進行の男がそう言って手を叩くと、まばらな拍手が沸き起こった。中央の後方席で誰かが立ち上がると、十戒の如く人の波を割って一人の男が前に出たのである。
おや、アイツは……
◆
「本日はこのような有意義な会合にお招き頂き、誠にありがとうございます。私はこの度サンスビアの活性化活動の一貫として観光事業を委託された、ロチルド財団青年部部長のヴィクター・ロチルドです。どうぞ宜しく」
アイツは、さっきの失礼な金髪スーツ男! ロチルド財団……ん? ロチルド……どこかで聞いたことがあるような、無いような……
ヴィクター・ロチルドと名乗る男は派手な格好に負けず劣らず、いちいちキザな仕草で話を始めた。
「私が思うに、サンスビアにはまだまだ経済的な成長を望める余地があると考えております。豊かな自然環境と独自に進化した動植物達、これらは他の町には見られない貴重な財産だ。しかしながら、この町ではそれを活かそうとしていない。実にもったいない!」
やたらと芝居がかった話し方に、居眠りをしていた人達もいつの間にか彼の話に耳を傾けていた。
「このサンスビアをより豊かな、魅力的な町へと変えようではないか。そこで我々ロチルド財団はその委託を受け入れ、この町の改革をさせて頂こうとではないかと。こうして参上した次第であります」
いちいち上から目線な嫌みな言い方がしゃくに障るやつだ。
「それではまずこちらをご覧下さい。都市発展した未来予想図、これが数年後のこの町の姿です!」
ヴィクター・ロチルドが指を弾いて合図をすると、部屋の全ての照明が落ちた。一瞬の暗闇の後すぐに中央に置かれた長テーブルの上に立体的なな施設の映像が浮かび上がったのだ。
「これこそがこの町の理想的な発展の集大成! 巨大リゾート【サンスレクチュアリ】です」
――おぉぉぉ……
それまでまったく感心を示さなかった町の人々はこぞって身を乗り出しては声を上げた。つい俺も覗きこむように首を伸ばしてしまう。
何だあれは! 何もないテーブルの上に小さな建物が現れたぞ?! この時代の技術力は底知れんな……
「この【サンスレクチュアリ】には巨大スパ施設、大きなパーティーも行える披露宴会場、それに二千部屋を越える宿泊施設など、ありとあらゆる贅を尽くした設備が備わっている。さらに、かの大国ベルフリアから招き入れた最上級の調理人達による美食レストランを完備。まさに究極至極の一大テーマパークなのです」
スパ……? テーマパーク……? ベルフリアとは一体何処の国であろうか? 奴の話はよくわからないが、何かとても贅沢なモノを作ろうとしているのだけはわかる。
ヴィクターは再び指を弾く。すると今度は一斉に点いた照明が室内を照らす、身を乗り出していた人々は顔を上げて彼を見た。
「つきましては……これが建設予定地の地図になります。よぉく、ご覧下さい」
今度は各人に一枚の紙切れが配られた。すぐさま歓声とはちがう声が聞こえてくる。
「な、なにこれッ?! こんなの、ふざけてる!」
隣で居眠りをしていたはずのラズリは突然立ち上がると叫び声をあげた。彼女の手から紙切れを拝借する、そこに書かれた内容に思わず俺も声をあげたのであった。
「サンスビアの町が……ほとんどまるごと建設予定地?!」
会議室の中は一気にどよめき出した。




