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レッド・ヘッド・ドレッド・ドラゴン ~希代の暴君は蘇る~ [※尚、転生先は中途で新婚です]  作者: 夏野ツバメ


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静かな花屋の毎日

週に2~3話更新の予定です!

是非ブックマークよろしくお願いします!

 いつも通りの時間に目を覚ます、今日も清々しい朝だ。妻が起こしに来る前に早々と着替えを済ませ部屋を出る。


「おはようございます。今日も早いですね」


「おはよう、リリィザ。君の方がいつも早いじゃないか。ありがとう」


 妻のリリィザはいつも僕より先に起きて朝食の用意をしてくれる。疲れた顔も見せず、家事をこなす彼女には本当に頭が下がる。


「今日も帰りは同じくらい?」


「ああ、夕方には帰るよ」


 朝食を済ませると身支度をして家を出る。


「あ、シアンさん待って。あの、ううん。……いってらっしゃい」


 見送り際リリィザはいつも抱きつくと耳元で囁く。ほぼ毎朝、仕事に出る前はこうして見送りをしてくれる。この時が一番ニヤけているかもしれないな。


「いってきます」


 後ろ髪を引かれながらも家を後にする。さてと、切り替えて今日も仕事に打ち込まねばな。


 町の大通りを抜けていつもの道を足早に進むのであった。




 裏通りにある小さな生花店に着くと、これまたいつものように騒がしい声が聞こえてくる。


「お父さん! 朝ごはん食べたらちゃんと食器洗っておいてね。あ、シアンさんおはようございます。いってきます!」


「ああ、いってらっしゃい」


 慌ただしく走り抜けて行った少女は、これから学校と云うところへ向かうらしい。なんでも学問を学べる場所だとか。この時代は身分の差もなく、誰でも知識を得ることが出きるようだ。良い時代だな。


「ったく、ラズリのヤツ、ほんと最近口うるさくなりやがって。よお、おはようさん。シアンも一緒に朝飯食べてくか?」


「おはようございますアンドリューさん。いや、今日も家で食べてきたので」


 土竜のような顔をした大男は「そうか!」といって豪快に飯を掻き込んだ。ほぼ毎朝この光景を見ているが、あの太い手であんなに細い箸を扱えるのはいつ見ても不思議だ。


「それよかお前さん、いい加減その堅苦しい話し方止めろよな? もう二週間も一緒に働いてるんだ、俺の事も店主(マスター)で良いからよ」


「わかり、いや、わかったよ。店主(マスター)……」


 ラピッシュ親子はとても仲の良い親子だ。血の繋がり、いや、種族の壁を越えて本当の家族なんだと思う。娘のラズリも早くに実の母を亡くしたというのに、あんなに屈託なく笑えている。それもひとえに父アンドリューの育て方が良かったのであろう。


「ようし。それじゃあ今日も店番よろしく頼むわ!」


 そそくさと片付けを済ますと店主(マスター)はいつものように農場へと出掛けていった。


「よし、俺も仕事はじめるか」


 大きく伸びると壁に掛けられた腰巻(エプロン)を取る。この行為も馴れたもんだ。色褪せた藍色の生地の真ん中には【ラピッシュ生花店】と大きく書かれている。


「……まずは、今日の品出しからはじめるか」


 働き初めて二週間。シアン・ウイークの記憶のせいもあってか、俺はすっかり花屋従業員(フローリスト)が板についてきていたのであった。



◆◆


「どうも、ありがとうございました。またお待ちしてます」


 ふう、今日はまあまあの客足だな。昼前に五人も来れば上出来だろう。しかし、わざわざこんな路地裏に店を構えなくても大通りに出店した方がよっぽど売れるのではないか?


 ……まぁ、あまり忙しくても、それはそれで大変になるから俺はいいけどな。


 太陽が真上にあがり日差しが強くなってきたな。店先の花を奥へとしまわなければ。


「シアンさん、ただいま!」


 店先を掃いているとラズリが帰ってきた。


「あぁ、お帰り。今日はやけに早いんだな」


「今日は午前で学校終わりなんです。お昼食べました? 私学食で食べてきたので。店番変わるから、シアンさんお昼休憩してて大丈夫ですよ」


 ラズリは元気だ。初対面の時は目も合わせられないほど緊張していたのに、見知った相手には普通に会話できるらしい。ほとんど一見の客しか来ないこの店ではかなり厄介だが、その他の仕事は丁寧で細かな気遣いもできる。


「ありがとう。じゃあ、お願いするよ」


 腰布を外すと彼女に手渡した。いつもなら夕方まで一人で店番しながらの昼食だが、今日はゆっくり休憩が取れるな。


「ゆっくり休んできて下さいね」


 ラピッシュ親子の住居兼、事務所に入ると椅子に腰を落とす。ずっと立ちっぱなしのこの仕事もなかなか楽ではない。特にこの身体(シアン)の足はすぐに疲れてしまう。


 さぁ、今日の昼飯はなにかな? 俺はこの時間が楽しみで仕方ないのだ。なんたって妻が作る弁当を持参しているのだから。満を持して俺は竹で出来た弁当箱に手を掛けた。


『シアンさーんっ、お客さんが来てますっ』


 ……せっかくの楽しみなのに、邪魔するとは何奴だ? 


 店の方で誰かと話すラズリの声が聞こえてきた。その口調がまた、しどろもどろになっている。話している相手が、顔見知りではない事はすぐにわかった。


『シ、シアンさんにお客さんですよぉっ、早く来てくださーい』


「聞こえてるよ、今行くから……」


 応えた声が聞こえていないのか、それから何度もラズリの呼ぶ声が響いた。


 


 




 


 





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