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壊れかけの断章

朧火

作者: 石見の人
掲載日:2022/06/17

一つ二つ三つ。


今日も私は階段を下っていく。

父様は今日もお忙しくて。

先生は今日も厳しくて。

いろんな思いを抱えた心を落ち着かせたくて。

階段を下りきった先に腰を下ろす。


薄暗い大きな部屋の中。

じっと見つめるその先に、少しずつ目が慣れてくる。

細長く、綺麗な模様が刻まれた石が並ぶ部屋の中。

仄かに光る玉が浮かびはじめ

部屋の中を舞うように踊り始める。


そんな光の群舞を見つめている。

ただただ無心に見つめ続ける。

大丈夫。

まだ私は頑張れる。

この歳で兄さまが知っていたことを知らなくても。

この歳で姉さまが出来ていたことが出来なくても。



あれほど私の中で渦巻いていた劣等心も。

叫びだしてしまいたかった激情も。

今は信じられないほど穏やかで。

まだ私は大丈夫だと。

明日も頑張れると思えるほどに。


まるで私を抱きとめてくれるようなこの場所は、

私にとって、とてもとても大事な場所。

名前も知らぬ女官は墓所と言っていたけれど、

何を思ってそんなことを言ったのだろう。


部屋の中を踊っていた光は、

静かに石の中へ戻っていく。

私もそろそろ戻る時間だ。


大丈夫。

私は大丈夫。

私には心を安らげられる

私を受け入れてくれる

この場所があるのだから。

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