第五十二話 拠点。
両親に内緒で行動するという事は、公爵家の力は借りれないということ。
小娘どころか、まだ十代にもなっていない女の子が挑戦したかったのは“商会立ち上げてみたい”ということ。
この年齢で公爵家の後ろ盾もない子が出来る事ではない。
何歳で立ち上げる事になってもいいと思って行動を起こした。
そこから、ギルドへと登録して低ランクの依頼をこなしながら行動始めた。
資金が集まるのはまだまだ遠い先だな―――なんて、思ってたのに。
ユキとスノウが狩ってくる魔物の素材は高価で。
資金はあっという間に貯まっていった。
奴隷を三人購入しても商会を立ち上げても、商品を試作しまくっても、それでも枯渇する事は恐らくない。
それは森へと行くたびにユキとスノウがたくさん素材を提供してくれるからだけど。
ギルド登録の後に出会った、オスカーさんやレグルスさんはとても優しくて親切で。
奴隷商館までレグルスさんにお世話になってしまって。
オスカーさんには街から少し外れた場所にある平屋を一件、代理で購入して貰ったのだ。
街から少し外れたからか横に長い大きな平屋は、野菜も育てられそうな広い庭付きだった。
取り敢えずは奴隷の三人にこちらに住んで貰って、商会立ち上げの草案を練りたいところだ。
「とうちゃくー」
転移魔法で移動後にスノウがそう告げると、奴隷の三人は腰を抜かしたかのようにぐったりと床に座り込んでしまった。
「ルカさん、アイヴァンさん……ええっと…貴方は」
リティシアは空間収納に手を突っ込んで書類を出してペラペラと捲った。
「…セレス? (何か女神様と名前が似てるな)」
「は、はい…セレスといいます、至らない所はすぐに直します。これから宜しくお願い致します、ご主人様」
ご、ご主人様…
リティシアはピシリと固まった。
名を呼ぶ許可を与えていない為、ご主人様と呼ばれたのだと気付く。
「ご主人様ではなく、リティシアと呼ぶ許可を三人に与えます。」
そう口にすると奴隷三人のアンクレットがキラリと光った。
何らかの制約が外れたのか加えられたのか分からないが、アンクレットに登録するには口にしなきゃダメなのかもしれない。
「「「はい、リティシア様」」」
「ああ、私の隣にいるこの子がスノウ、その隣がユキよ。私達はいつも三人で行動しているから、この二人も宜しくね。
ユキとスノウも名前で呼んであげてね。」
「「「ユキ様、スノウ様、宜しくお願いします」」」
口調や音程が完全にハモって挨拶する三人。
その完璧にハモった言葉を訊いて、こういうのも奴隷教育でされてるのだろうか? とリティシアは思った。
「この家は平屋だから二階がないの。一番最奥の三つの部屋が私達の部屋にするつもりだから、手前の三部屋をどの部屋にするか三人で決めて貰ってもイイかな?」
三人がコクリと頷いた。
三人が話し合ってるのを横目にユキに話しかける。
「取りあえず庭に植物の種を撒きたいんだけど、付き合って貰えない?」
「何でもいいぞ」
今居る場所は玄関だったので、一度外に出て庭へと回った。
この家の各部屋からも庭に出れるようになっている。
何も植えられておらず、手入れもされて無い庭に到着すると、
「何をするんだ?」と興味津々の目で見つめられた。
「んーとね、創造魔法で色々試したい事があるの。」
ティナ様から貰ったチートがどこまでなら出来るのか試してみたかった。
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