第四十九話 奴隷商館へ③
しばらくしてレイフェさんが戻ってきた。
私の要望に合わせて選ばれた奴隷達―――五人?
レイフェさんの後ろから室内に入ってくる。
商売経験のある人と話したので、奴隷の方達は全員レイフェさんのような大人の男の人だった。
レイフェさんに五人の奴隷の人の身上書というものを渡された。
一枚一枚じっくり読みたいけれど、目の前にその五人が黙っている中で、書類を読む時間を掛けるのも気まずい。
取り敢えず商売の経験値の高い人をまずは選ぶ事にした。
経営手腕が無くて潰したとかでも、実際の商会の立ち上げとかなどのノウハウとかを訊くだけだから問題ないし…
経営を一任する訳でもないから、商売に失敗して借金奴隷でってなってる人でも指示された事をするだけなんだから、多分問題ないよね…?
押しが強そうな人は嫌だなー…アドバイスじゃなくて口出ししてくる気がするしなぁ。次々と書類を捲りながら思案する。
あー、一番大事な事をしないとか。
「初めまして、私はリティシアと言います。本日、奴隷を買いに来ました」
と挨拶する。
左から二番目と五番目の奴隷の人が少し顔を歪めた。
こんな子供が…? と語るように歪んだ顔だ。
(二番目と五番目の人はいらないな。始めから子供だと侮る人とは奴隷でも上手くやれる気がしないし、首輪付けていても何処か信用出来ないもん)
「左から二番目の人と、五番目の人は購入対象から外します、レイフェさん連れていってもらって大丈夫ですよ。」
レイフェさんは何と鳴く気付いていたのか、戸惑う事なく「レディの仰せのままに」と、奴隷の二人を連れていってくれた。
奴隷の二人は「えっ…」「何で・・・」と漏らしていたが、教えるつもりもない。
さて…残りは三人か。
購入金額は三人買っても全然足りるんだけど…もう少し振るいにかけようかな。
「左から一番目のルカさん、経営経験がお有りだと書いてありますが、どのようなご商売をされていたのですか?」
黒髪に翡翠色の瞳をした青年が「レストラン経営です」と口にした。
手元の書類には奴隷歴半年と書いてある。
まだ誰にも購入されてはいないようで、返品履歴はない。
(レストランか…作る方はしてたのかな?)
「レストラン経営では、経営だけでしたか?」
私の問いに「いえ、自分がシェフの役もこなしていました。」と答えた。
「なるほど、では料理はお手の物ですね。わかりました有り難うございます。」
異世界料理も作れるかしら。
そこら辺作れるなら、かなり重宝出来る人材になる。
チラリと目線をルカさんに合わせると、しっかりと見つめ返してきた。
穏やかで理知的な人そうな雰囲気がある。
よし、この人は購入しようと決めた。
次に左から二番目の……アイヴァンさんか。
経営歴はなくて、経営補佐だったようだ。秘書的な役割を担っていたのかな、それとも、時には経営代理もさせられたのだろうか。
「左から二番目のアイヴァンさんは、経営補佐と書いてありますが、どのようなお仕事をされていたのですか?」
薄い金髪に群青色の目をしたアイヴァンさん。
よく笑う人なのか、口角がキュッと常に上がってる口元が印象的だ。
「はい、私の仕事は秘書の仕事が主でした。時には経営者が不在時の代理も務めておりましたので、商売の知識と経験はあります。」
なるほど、秘書欲しいからこの人も採用だな。
よく笑う人が隣にいれは気まずさも感じにくそうだし、悪くない。
「わかりました、ありがとうございます。」
残る1人は……
銀髪に銀目……? 珍しい色だな。
銀髪なんて、うちの聖獣達以外に見かけた事ないけどなぁ?
そんな時こそ念話だ!
ユキ、スノウ、レグルスさんに念話の糸を繋げてっと…
『ユキ、スノウ、レグルスさん聞こえますか?』
『ん? どうしたリティシア、聴こえているぞ』
『念話なんてどうしたのー?』
『リティシアちゃん、何か心配な事でも?』
三人とも即座に反応してくれた。
チラリと三人を見たが、三人とも表情は一切動いていない。
『左から一番目、二番目は購入するつもりなんだけど、三番目の事でユキたちにちょっと訊きたいことあって。』
『なあにー?』
スノウが即座に反応する。
『銀髪ってこの世界で聖獣達以外にいるの? 三番目の人が銀髪に銀目だよね?』
『ああ、人間じゃないよ、三番目』
スノウがあっさりと答える。
『そうだな、聖なるものに属してはいるが、聖獣ではない』
ユキもそう答えた。
『確かに、私も世界各国周ってきたけど、銀髪というのはユキくんとスノウくん以外に見た事はないかもしれない。とても珍しい色だよ』
えええー…何で奴隷に聖なるものが居るの……厄介事の匂いがプンプンします。




