第四十六話 まず最初にしようと思うこと。
ハーフバースデーの時は有り得ないくらいに緊張していて、楽しめなかった。
先日のお誕生日会は身内と仲がいい人だけに限定した小規模な誕生会だったので、気負わずとても楽しめた。
誰かと他愛もないお喋りをする楽しさを味わった。
人見知りが入っていた七歳から随分と成長したと思うのは決して気のせいではないハズ。
王子達三人や、オスカーさん達と接していくほんの少しの経験が、少しずつ積み重なって、人と目を合わせて話す事に慣れてきたのかな。
ティナ様の「ギャフン」と言わせたい勘違いヒロイン(乙女ゲーっぽい世界にしてるだけで乙女ゲーではないので、ヒロインと呼ぶのかは謎)とはまだ会った事もない。
ティナ様の様子からするに、あまりいい性格をお持ちでは無さそう。
ゲーム開始とされる年齢は15歳。
まだ七年もあるとするか、もう七年しかないとするか。
ギルドの依頼達成報酬やユキとスノウの狩りでの素材を売って、貯まったし、考えていたいくつかの計画のひとつに手が届きそう。
それは“奴隷商へ行き、奴隷を買う”こと。
それも、商売をするに当たって商才がありそうな奴隷を購入したい。
この世界には、奴隷制度がある。
犯罪を犯した人間の罰として犯罪奴隷に落とされ、男性は劣悪な鉱山労働などを強制的にさせられたり、女性だと娼館で償わされる場合もある。
他には奴隷商へと直接売られてくる場合の奴隷で、愛玩奴隷や戦闘奴隷などがいる。
愛玩は娘や息子や孫として可愛がる目的で買っていく人もいるが、性的に可愛がる目的で買っていく人もいるので、買われた先でどんな扱いをされるのかは分からない。
戦闘奴隷は、護衛として買う場合もあれば、欲しい素材を手に入れる為の戦力増強の為だったりと…まぁ基本的には戦闘を主とした奴隷だ。
犯罪奴隷でない限り、愛玩奴隷も戦闘奴隷も奴隷で在りながら奴隷法で守られており、安くないお金を出して買った奴隷だったしても、一定基準を逸脱するような酷過ぎる扱いをした場合には、購入者には重い罰が下される。
奴隷法が施行され奴隷の扱いに対する取り締まりが強化されてから、今までは他者から売られるだけだった奴隷も、生活に困窮したものが自ら奴隷になる事も増えているらしい。
何らかの形で商売に失敗して借金を清算する為に自ら奴隷になってしまったような、商売経験がある奴隷もいるかもしれない。
我が家にも、厩番と庭師と護衛に数人の奴隷が居たりする。
首の所に奴隷の印の首輪が無ければ、奴隷と気付かない程に普通の人達だった。
悲壮感もないし、良く笑うし、楽しそうに仕事をしている姿しか見た事がない。
そういう意味での普通ってことだ。
それはやっぱり奴隷法で犯罪奴隷を覗く奴隷は、法によって保護されてるからなのかもしれない。
奴隷を買おうと決めたのは、我が家に居る奴隷の人達を見たからかも。
奴隷は首にある首輪によって、買った人間を裏切ることはない。
商売をするに当たって、絶対に裏切らない相手というのは重宝する。
おまけに私が扱う商品は、この世界に無いものばかりになる筈。
チートの力も使うつもりだし…その秘密を絶対に漏らす事の出来ない人間が欲しい。
となれは、もう奴隷の人達を従業員にする方が漏れる心配が無さそうなのだ。
しかし、ユキとスノウ、そして私…子供たちだけで奴隷商館に行って購入が出来るのだろうか些か不安。
奴隷商館は王都だけでも十以上あるらしいし…
出来るなら評判がいいところの方が安心だろう。
そういう情報は一切知らないし分からない。
そして、両親には内緒で動くつもりなので、身内の大人は頼れないのだ。
身内ではないけれど、しっかりと信頼関係が築けているオスカーさんとレグルスさんに相談する事にした。
レグルスさんの知り合いが奴隷商館を営んでいるというので、レグルスさんに奴隷を買いに行く時は、是非付き添って貰う事にした。
レグルスさんの知人の奴隷商館は王都で一番の商館で、規模もかなり大きいそう。
扱う奴隷が多ければ多い程、いい奴隷に出会えそうで期待が持てる。
いつ行くかのスケジュールをレグルスさんと決めて、五日後に行くことになった。
ギルドカードが銀行のキャッシュカードみたいなものなので、お金は引きださずともギルドカードで支払いが出来るんだそう。
だから、カードさえあれば手ぶらで買いにいけるのだ。
大金を引きだすのは怖かったので、それは大変助かった。
―――そして五日後、レグルスさんの知人が営む奴隷商館の前に私とレグルスさん、ユキとスノウは居た。




